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ポイ捨て・不法投棄問題解決のためのデジタル戦略:住民と行政の負担を軽減し、美しい街を実現するには?

作成者: 佐々木健|2025/09/28 23:44:12
私たちが住む日本の美しい景観は、ポイ捨てや不法投棄といった身近なごみ問題により、今や世界規模の危機に直面しています。特に、プラスチックごみの自然界への流出は生態系、産業、そして住民の健康にまで深刻な影響を及ぼしており、これを「海外の問題」として見過ごすことはできません。
 
8月に開催された「官民協創勉強会」は、まさにこの根深い社会課題に焦点を当て、地域の生活環境を守るため、職員のマンパワーと住民の善意に頼り続けてきた従来の限界を突破し、いかにデジタル技術(DX)を活用して美しい街を実現していくのか、その具体的な戦略と事例をまとめさせていただきました。
 
当日の講演、自治体事例、そして活発な質疑応答の内容をまとめ、地方政治家としての皆様の政策立案に役立つ実践的な情報を提供します。限られた予算と人員の中で最大の成果を出し、住民の不満を解消し、誇れる美しい街を次世代に引き継ぐために、このデジタル戦略は不可欠です。
 
今回の講師のご紹介
 

小嶌 不二夫 氏

富山生まれ、神戸育ち。京都大学大学院を半年で休学し、世界を放浪。 道中全ての国で問題となりつつあったごみの自然界流出問題の解決を目指し、 2011年に株式会社ピリカを創業。

 
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1. 地方自治体が直面する「ごみ問題」の深刻な現実
 
 
本日焦点を当てたポイ捨て・不法投棄ごみ問題は、世界規模で深刻化しているプラスチックの自然界への流出と密接に関係しています。日本各地でもポイ捨てや不法投棄が日常的に発生しており、身近な問題として対策が求められています。
ごみの流出は、野生動物の誤飲による死亡など生態系への影響に加え、漁獲量の減少や船舶の航行阻害といった産業への実害、さらには観光地としての魅力の低下や観光客の減少といった地域経済への悪影響も懸念されています。
 
特に住民の皆様の間で強い関心が寄せられているのが、直径5mm未満のマイクロプラスチックです。サイズが小さいため、食事や飲料を通じて人体に取り込まれやすいとされており、最新の研究では、心臓発作や脳卒中との相関関係が指摘されています。
 
また、日本の水域におけるマイクロプラスチックの主要な発生源は、人工芝(約25%)やコーティング肥料(約16%)など、私たちの身近な生活や産業活動に起因していることが明らかになっています。施設管理や農業支援策において、流出防止は自治体の重要な課題です。
 
 
2. 「特効薬」なき課題への挑戦と職員の疲弊
 
ポイ捨て・不法投棄対策は、パトロール、清掃促進、たばこ対策、環境学習など多岐にわたる業務を含んでいますが、解決が非常に難しい問題です。その理由の一つは、「ごみ箱を増やせば全て解決」といった特効薬が存在しない点にあります。対策は多様な取り組みを少しずつ積み重ねるしかなく、結果として限られた予算と人員の中で、業務量とエリアの広さに対応しきれない状況が生まれています。
 
現状、多くの自治体は職員の「気合とマンパワー」および地域住民の協力によって清浄な環境をかろうじて維持していますが、これはすでに限界を迎えつつあります。不満や怒りが行政や政治に向けられ、現場職員が疲弊する状況も少なくありません。
 
この状況を打開し、持続可能で質の高い対策を可能にするには、デジタル技術の活用、すなわちDXが不可欠です。目指すべき方向性は以下の3点です。
 
1. 職員の負担軽減: デジタル化により、清掃イベントの運営や通報受付などの業務負担を削減すること。
 
2. 住民の主体的な行動支援: SNSやAIを活用し、住民が活動に参加する心理的ハードルを下げること。
 
3. データに基づく意思決定: 収集したデータに基づき、限られたリソースを最適に配分し、賢い施策の取捨選択を進めること。
 
 
3. 住民参加を促進するデジタル施策
 
 
株式会社ピリカ様は、ポイ捨て・不法投棄対策の専門家として、これらの課題を解決するためのデジタル施策を提供しています。ゴミ拾いSNS「ピリカ」は、ゴミ拾い活動を可視化・促進するSNSプラットフォームであり、世界130カ国以上で利用され、累計4億個以上のゴミが回収されています。
 
参加の容易さ: 従来の清掃イベントと異なり、「1分、ゴミ1個から」気軽にオンラインで参加できます。
 
運営効率の向上: 参加者の集計や運営管理がオンラインで完結するため、清掃イベントの企画・運営にかかる職員の業務負担を大幅に軽減できます。
 
事例:豊島区 コロナ禍で集団清掃が中止になりがちだった際、ピリカを導入することで、いつでもどこでもできる活動へと移行させ、これまで関心のなかった層にも参加を促すことに成功しました。また、活動が活発な地域が地図上で把握できるようになり、今後の広報戦略のきっかけとなっています。
 
事例:横浜市 2016年から導入されており、これまでにウェブサイトへのアクセス数5.4万件、のべ参加者数8.4万人に達しています。
さらにピリカには、不法投棄の現場の写真と正確な位置情報(GPS)を簡単に通報できる機能があり、電話通報に比べて情報整理の煩雑な手間を大幅に削減します。
 
 
4. パトロールと監視のDX
 
AIゴミ調査システム「タカノメ」は、車両に搭載したスマートフォンで走行中に周囲のゴミを撮影し、AIが自動でゴミの量や位置を可視化する「ごみ専用ドライブレコーダー」です。
 
効率化とコスト削減: 従来、職員が人手で行っていたパトロールや監視業務を効率化でき、費用を25%、場合によっては50%以上削減する可能性があります。調査用スマホは、民間企業や自治体の他の業務車両に搭載できるため、追加の人員や専用車両が不要です。
 
高い抑止効果: 複数車両が移動しながら広範囲を撮影するため、固定カメラの死角という課題を解消します。「どこで誰に見られているか分からない」という状況を生み出し、高い抑止効果が期待できます。
 
データ活用: タカノメで得られたゴミの分布データを企業や住民に共有し、ゴミの多いエリアを狙って清
掃活動を実施することで、従来の3倍のゴミを回収するという効率化の成果が得られた事例(山口県の実証実験)もあります。
 
タカノメには、車で通れない狭い路地や歩道でのゴミを詳細に調査できる「徒歩版」もあり、喫煙所の設置前後に周辺のポイ捨て状況を測定するなど、施策の効果を定量的に確認し、データに基づいて住民の懸念に対し説明責任を果たすために活用できます。
 
 
5. 質疑応答から学ぶ重点的な対策
 
 
ウェビナーの質疑応答では、議員の皆様が抱える具体的な課題への対応策が議論されました。
 
喫煙マナー・ポイ捨て対策:ポイ捨て問題の中でも特に多いタバコの吸い殻対策について、エビデンスに基づく有効な打ち手として、十分なスペースを確保した喫煙所の設置が挙げられました。設置により、周囲のポイ捨てを約**20%**削減できるという実証結果(横浜市)があります。ただし、単に灰皿を置くだけでは逆効果になる可能性があるため、清掃や条例と合わせたパトロールの実施が重要です。
 
パトロール業務の委託とDX:既に不法投棄パトロールを外部委託している場合でも、DX導入の動機は、委託費の削減(25%または50%以上の削減可能性)や、調査品質のバラつきや報告の遅延といった「品質の改善」にあります。タカノメのようなAI調査システムは、人によるバラつきを解消し、チェックを容易にします。
 
民地への不法投棄:法律上は民地の所有者が対応すべきですが、議員の役割として、看板設置の支援、警察への通報サポート、あるいは技術導入による監視強化など、行政と市民の間の歩み寄りを実現することが求められます。
 
「見えなかったヒーロー」の発見:ピリカ導入の副次的な効果として、これまで行政の目が届かなかった「地域を地道に綺麗にしてくれている市民(ヒーロー)」の存在が明らかになる点が挙げられました。行政がこれらの活動と繋がり、感謝を伝える機会を得ることで、コミュニティの強靭化に貢献します。
 
 
6. データに基づく政策立案へ:次の具体的な一歩
 
議員の皆様には、この問題解決を加速させるため、議会での一般質問を通じて、環境分野のDX推進、データに基づく意思決定、マイクロプラスチック対策の実態把握などを積極的に取り上げていただくことが推奨されます。
そして、貴自治体の持続可能な環境対策を実現するため、最も効果的な次の一歩として、 協力企業である株式会社ピリカ様との「個別面談」を、ご準備しております。
 
導入費用についても、ローカル・ブルー・オーシャン・ビジョン推進事業(上限150万円の100%補助)やデジタル田園都市国家構想交付金(上限1億円の50%補助)といった補助金活用の可能性も含め、専門家から直接、詳細な情報を得るのが解決への最短ルートです。
この機会にぜひ個別面談をご活用いただき、貴自治体の環境課題解決に向けた具体的な道筋を、専門家と共に描いてください。
 
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