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「聞いて終わり」にしない!こどもの意見を確実に政策へつなげる仕組みとは

作成者: 佐々木健|2025/09/28 23:01:13
〜「こども基本法」時代の行政と次世代との新しい協働のかたち〜
 
この度、ご多忙の中、官民協働勉強会「子供の声で社会を変える 若者の意見を政策に反映させる方法とは」にご関心をお寄せいただき、誠にありがとうございます。本レポートは、勉強会に参加できなかった地方議員の皆様へ、次世代育成と地域活性化に直結する重要な論点をまとめたものです。
協力企業である株式会社笑下村塾は、「若者の政治参加に特化した国内唯一の企業」であり、これまでに8万人以上の子供たちに出張授業を届けてきた専門性の高い団体です。
 
今回の講師
たかまつなな氏
 
 
1993年生まれ。株式会社笑下村塾代表
若者の政治参加に特化した国内唯一の株式会社、笑下村塾の代表。「社会は変えられる」と考え、社会問題に取り組む若者を増やすために活動している。お笑いによる主権者教育の出張授業や高校生の考えを政治に反映させる高校生リバースメンターを展開。スウェーデン、イギリス、フランス、ドイツ、台湾など若者の政治参加が進む国で数百人に取材
 
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1. 「こども基本法」が定める、地方自治体の新たな責務
 
2023年に施行された「こども基本法」は、地方自治体にとって、若者の意見を政策に反映させるインフラ整備を義務付けた重要な転換点となりました。
 
法律の第11条では、「国及び地方公共団体は、こども施策を策定し、実施し、及び評価するに当たっては、当該こども施策の対象となるこども…の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする」と明記されています。これは、単に「意見を聞く場」を設けるだけでなく、意見を政策に反映させる構造を構築することが自治体に求められていることを示しています。
しかし、現在、多くの自治体がこの「子供の意見表明権」をどのように担保し、政策に結びつけるかについて、ノウハウがなく対応に苦慮しているのが現状です。
 
2. 危機的な若者の意識と、地域が抱える社会課題
 
若者の政治参加への無気力感は、単なる意識の問題ではなく、地域社会の持続可能性に直結する深刻な社会課題です。
 
「自分が社会を変えられる」と考える若者は6カ国でワースト1位
    日本財団の調査によると、「自分の力で社会を変えられる」と回答した日本の若者は45.8%と半数以下であり、調査対象の先進国の中で最も低い数字となっています。
 
意見表明権の不担保
     1万人の子供たちへの調査で、最も守られていないと感じる権利は、「こどもは自分に関することについて、自由に意見をいうことができ、おとなはそれを尊重する」ことでした。
 
社会貢献への意欲は高いが、影響力は感じていない
     10代の約9割、20代の約8割が「社会に役立ちたい」と考えているにもかかわらず、約7割の10〜20代が「自分には政府を左右する力はない」と回答しています
 
  • 生きづらさの増大と政策への反映不足
    小中高生の自殺者数は年々増加しており、2024年には529人の子供が自ら命を絶っています。また、中学生の約1割が不登校傾向にあると推計されています。これらの当事者の声、すなわち「SOS」を政策に反映するための仕組みが、依然として不十分です
若者の声を聞き、自己肯定感を高め、地域への愛着を育む取り組みは、魅力的な街づくり民主主義の担い手の育成に不可欠です
 
 
3. 実感を伴う政策提言を実現する3つの柱
 
笑下村塾は、若者に「社会は変えられる」という実感を積み重ねてもらうための独自の仕組みを提供しています。目指すのは、若者世代の**4%を、社会を変える「ソーシャルイノベーター」**に育成することです
 
1. お笑い出張授業(社会を変えられる子を増やす)
    ◦ お笑い芸人が講師となり、政治や社会課題をコミカルかつ身近なものとして教えることで、政治に関心が薄い層にもアプローチします
    ◦ 事例: 群馬県内の高校を対象に実施したところ、授業後のアンケートでは「自分の行動で社会を変えられる」と思うと回答した人が86%超に上りました(日本平均45%)。また、2022年参議院選挙における群馬県内の18歳の投票率は8%上昇しました
 
2. 政策-1グランプリ(こどもの声を自治体が聴く仕組み)
    ◦ 若者が自ら設定した地域課題の解決策を政策として提言し、首長や議員などが審査員として参加します
 
3. 高校生リバースメンター(自治体と一緒に社会を変える「場」を作る)
    ◦ 高校生が知事や市長の「メンター(助言者)」となり、政策を提言し、行政の担当部署とともに社会実装を目指すプロジェクトです。政策提言が実現に至ることで、若者は政策プロセスへの影響力を実感できます
 
 
4. 若者の声による具体的な政策実現事例
政策提言が「聞いて終わり」にならず、実際に行政を動かすことが、若者の意識を劇的に変える鍵となります
 
事例1:群馬県(高校生リバースメンター)
群馬県は知事のリーダーシップのもと、高校生リバースメンターを今年で3年目として実施しており、その成果は多岐にわたります。
 
子宮頸がん(HPV)ワクチン接種率向上:高校生からの「接種率を高めたい」という提言を受け、県はイオンモールにワクチン接種会場を設置しました。また、県と共同で制作した啓発TikTok動画は39万回再生を記録し、「2024年日本民間放送連盟賞」優秀賞を受賞しました
 
LGBTQ+への配慮:当事者の高校生が、自身の経験や校則の問題について、生徒指導担当の先生約200人の前で研修を実施しました。その結果、一部の先生からは「これまで無自覚に差別をしてきた」と涙ぐむほどの意識変化が見られました
 
地域定着:地元企業を知りたいという高校生の声に基づき、県は初めて高校生と企業との交流イベントを企画・実施しました
 
この取り組みの参加者からは、「自分の行動で社会は変えられると思う」という回答が100%得られています
 
 
事例2:福岡県古賀市
古賀市長は、若者の提言を受け取ることは、「子ども達の**『この町がこうありたい』**を実現する責任が我々にはある」と述べており、行政一体となって子供たちの声を政策に反映させる取り組みを模索しています
 
 
5. 質疑応答から学ぶ「政策反映」の課題と実践のヒント
 
 
地方議員の皆様から寄せられた具体的な質問から、取り組みを成功させるための実践的な視点が得られました。
 
「聞いて終わり」にしないために:政策への反映度を高めるためには、最初から予算の提案権など、若者の声によって政策が具体的に変わる仕組みを設計しておくことが重要です。また、提案が難しい場合でも、単に拒否するのではなく、予算面や法的なハードルなど、できない理由を丁寧に伝えることが、信頼関係の構築に不可欠です
 
若者への効果的なアプローチ:政治に関心がない若者には、お笑い芸人の起用(お笑い出張授業)やデジタル民主主義の仕組み(例:台湾での政策提案)など、ハードルの低い入り口を用意することが有効です
 
行政内の意識統一:若者の提案は、時に「拙い」と感じられることもありますが、行政職員や首長は、その「思い」を尊重し、対等なパートナーとして、ともに知恵を出し合って政策を作り上げていく姿勢が求められます
 
 
6. 次世代の主体性を育み、持続可能な地域を創るために
 
子供たちの声を政策に反映させる取り組みは、短期的な投票率向上や政策の質の向上だけでなく、若者の自己肯定感の向上地域への愛着の醸成という長期的な効果をもたらします
リバースメンターに参加した若者からは、行政からのサポートを通じて「自分たちの可能性を広げることができた」「地域に恩返しをしたい」「医師として群馬県で活躍したい」といった前向きな声が寄せられています
若者が生き生きと社会を変える姿は、大人や地域全体にもプラスの影響を与え、活気ある街づくりへとつながります
 
 
導入を検討する自治体へ:パートナーシップ構築の機会
 
笑下村塾は、若者の政治参加に特化した知見と、世界各国の先進事例の研究実績に基づき、各自治体の状況に応じた最適な仕組みづくりをサポートしています。
また、事業費の確保については、群馬県が活用した地方創生臨時交付金 など、自治体の費用負担を抑えるための補助金・制度の活用も可能です
「こども基本法」の施行により、子供の意見表明権の確保は待ったなしの課題です。
貴自治体の次世代育成と政策への革新的な視点導入を実現するため、ぜひ専門の知見を持つ笑下村塾との個別面談をご検討ください。
 
具体的な地域の課題や予算、導入プロセスについて、専門家から直接、実践的なアドバイスを受けていただくことが可能です。
 
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