南海トラフ地震への準備、出来ていますか?四国地方の先進的な取組事例

issuesの高松です。

2024年8月8日、日向灘を震源として発生したマグニチュード7.1の地震で、宮崎県日南市で震度6弱の揺れを観測しました。その後、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発令、8月15日に解除されるまで緊張感の高い状態が続きました。
南海トラフ地震は今後30年以内に70〜80%の確率で発生すると言われており、東海、東南海、南海地域を中心に甚大な被害をもたらすと予測されています。
この記事では南海トラフ地震の被害予測と四国地方の自治体の対策事例をご紹介します。お住まいの自治体での政策のお役に立ちますと幸いです。

南海トラフ地震で被害予測の概要

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震度

震度7の自治体は127市町村。四国では58市町村で約6割の市町村が震度7と見込まれています。

津波

最大津波高10m以上の見込みがあるのが79市町村。特に大きな被害が予測される四国の最大津波高は、徳島県24m、香川県5m、愛媛県21m、高知県34m となっています。また、津波高1mの最短到達時間(想定)は、徳島県海陽町が6分、香川県東かがわ市が 81 分、愛媛県愛南町が 19 分、高知県室戸市等が3分とされています。

死者数、住宅への影響

死者・行方不明者数は最大約32.3 万人(冬・深夜に発生した場合)。大きな被害が予測される四国4県で死者は約9万 6,000 人で、8割が津波によるものと言われています。しかし防災対策を行った場合、津波による死者数を8割減少させることができる見込みです。 

全壊焼失棟数は最大約238.6万棟(冬・夕方に発生した場合)というシュミレーション結果がでています。四国全体では約61万棟、うち60強%が揺れによる倒壊です。

ライフライン、インフラ被害

• 電力:停電件数 最大約2,710万軒
• 通信:不通回線数 最大約930万回線 

生活への影響

• 避難者数:最大約950万人
• 食糧不足:最大約3,200万食(3日間) 

経済被害

• 資産等の被害: 約169.5兆円
• 経済活動への影響: 約44.7兆円

 

【徳島県美波町】応接仮設住宅の土地の確保

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美波町日和佐地区は災害時の活動拠点となる役場や国・県の施設、こども園といった施設が集中している地域です。この地域に南海トラフ地震では最短16分で津波が到達する見込みです。

今まで、
・緊急指定避難場所の確保
・津波避難タワーの建設
・避難路の整備
・病院の移転
など様々な防災対策を進めてきました。

迅速な復旧・復興への備えに向けて、今は高台整備を進めています。津波到達が地震発生後16分と見込まれているこども園の移転、応急仮設住宅の建設候補地となる防災公園になります。

平時は公園や運動場として、災害時には一定期間の滞在が可能な避難場所や応急仮設住宅の建設候補地として活用します。

 

【高知県黒潮町】犠牲者ゼロをめざす津波避難タワーの整備

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南海トラフ巨大地震では34mという日本最大級の津波が想定されている黒潮町。「あきらめない 揺れたら逃げる より早く、より安全なところへ」という合言葉を掲げ、犠牲者ゼロをめざし防災の取組をしています。

その一つが津波避難タワーの整備。避難困難区域に津波避難タワーが計6基があります。

その中でも特に国内最大級の高さを誇るのが「佐賀地区津波避難タワー」です。高さ25mで想定浸水深は18m。230人が収容できます。屋上には緊急用救護スペース(ヘリホバリング)、食料備蓄、居室スペースもあり雨風をしのいで一時的に過ごせるようになっています。階段とスロープを併設したバリアフリー設計です。

さらに津波避難タワーで定期的に避難訓練を行い、住民の防災意識を高めています。

 

【高知県黒潮町】災害時の食料備蓄を町内で確保する取組み

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防災基本計画で定められていることの1つが「備蓄」です。黒潮町であh町内で長期間保管ができる缶詰を生産し、災害時の非常食を確保するため、食品加工工場を立ち上げました(町が75%出資)。

製造でこだわっていることは8大アレルゲン不使用であること。過去の災害では、自治体が備蓄していた非常食や避難所に届けられた支援物資の缶詰に原材料表示がないものがあり、食物アレルギーが怖くて食べられなかったという声が多くあり、その意見を参考に開発しています。

備蓄以外の側面として、町内の雇用創出にも役立っています。

 

【高知県高知市】浦戸湾の三重防護対策

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高知市は、高知県全体の人口の約47%の人口を占めます。浦戸湾周辺は海抜0m地帯が多く、その中に行政機関や学校、病院などの公共施設が集中しています。

・建設後40年以上経過した海岸保全施設の老朽化
・南海トラフ地震で高知市内は2m程度の広域地盤沈下が発生見込み
・液状化により防潮堤等の倒壊・沈下の想定
という問題を抱え、南海トラフ地震での津波被害を最小限に食い止めるため、3つのラインに分けて防波堤を整備しています。

第1ライン(第一線防波堤):浦戸湾の一番外側
防波堤を延伸して、津波の外力にも動じない粘り強い構造への補強。整備することで津波エネルギーの減衰、高知新港の港湾機能の確保が見込めます。

第2ライン(津波防波堤・外縁部堤防等):海岸沿いと湾の入口
第3ライン(内部護岸等):湾内沿岸
地盤沈降に対応した嵩上げや液状化対策。整備することで、津波の浸入や北上の防止・低減が期待できます。


それぞれの自治体の実情に合わせた対策を

この記事では南海トラフ地震対策で四国3市町の取組みをご紹介しました。
南海トラフ地震への備えとして、各自治体がインフラ整備や防災訓練など、様々な側面から対策を講じています。さらにその効果を最大限発揮するためには、住民一人ひとりの防災意識と行動が不可欠です。本記事が議員活動の参考になりますと幸いです。

地震災害 : 防災情報のページ │内閣府
南海トラフ巨大地震対策検討ワーキング グループにおける検討状況について
南海トラフ巨大地震対策に関する実態調査│四国行政評価支局 2015年
高台整備事業の概要│美波町
人と自然のつきあい方を考える│黒潮町防災ツーリズム
佐賀地区津波避難タワーの概要 │ 幡多郡
南海トラフ地震で想定される震度や津波の高さ│気象庁