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こどもを社会全体で育てるための共通認識「はじめの100か月の育ちビジョン」

作成者: 高松陽子|2024/07/22 9:23:02

issuesの高松です!

こどもの健やかな成長は多くの方が願うことです。こども基本法(2023年4月1日施行)に基づき、こどもや子育て中の人を応援するための社会全体の意識改革(こどもまんなか社会)が進められています。

社会全体でこどもを育てるためには、皆がこどもの健やかな成長にどのように関われば良いか、共通認識を持つことが必要です。そこで、2023年12月に「はじめの100か月の育ちビジョン」が閣議決定されました。

この記事では、「はじめの100か月の育ちビジョン」の概要をご紹介します。

 

「はじめの100か月」のスタートはお腹の中から

100か月は母親が妊娠してから小学校1年生までの時期を指します。

・お母さんのお腹にいるとき: 約10か月
・誕生から6歳(年長)まで: 84か月
・7歳(小学校1年生): 12か月

このビジョンで「100か月」と明記した理由は、この期間が長い人生を幸せな状態(ウェルビーイング)で過ごすための土台となる大切な時期だからです。

こどもの育ちで目指す「ウェルビーイング」とは?

「ウェルビーイング」とは、身体的・精神的・社会的(バイオサイコソーシャル)に幸せな状態にあることを指します。これには、短期的な幸福だけでなく、生きがいや人生の意義など、生涯にわたる持続的な幸福も含まれます。

ウェルビーイングの3つの側面:
・身体的(バイオ)
・精神的(サイコ)
・社会的(ソーシャル)

これら3つの側面を見ることで、今、こどもがどのような状態にあるかを総合的に把握することができます。

 

こどもの育ちの5つのビジョン

「はじめの100か月の育ちビジョン」には5つのビジョンがあります。

1.こどもの権利と尊厳を守る
2.「安心と挑戦の循環」を通してこどものウェルビーイングを高める
3.「こどもの誕生前」から切れ目なく育ちを支える
4. 保護者・養育者のウェルビーイングと成長の支援・応援をする
5.こどもの育ちを支える環境や社会の厚みを増す

次の記事から詳細を見ていきましょう。

1.こどもの権利と尊厳を守る

こども基本法を踏まえて、こどもの権利や尊厳を守ることが大切です。

例えば、
・どの乳幼児も生まれながらに大切に育てられる権利があること
・すべての乳幼児が、どんな環境や状況にあっても、生命・健康・衣食住などが守られ、大切に育てられる権利があること
・乳幼児1人ひとりが様々な形で表現した思いや願いを尊重されること

これらの前提があって初めて、こどもの育ちの支援を進めていくことができるのです。

 

2.「安心と挑戦の循環」を通してこどものウェルビーイングを高める

乳幼児に必要なことは2つあります。

①アタッチメント(愛着)
こどもが不安なときなどに身近な大人が寄り添うことや、安心感をもたらす経験を繰り返すことで「安心」という土台を築きます。

②豊かな遊びと体験
様々な人や自然・絵本などの環境と出会い、興味・関心に応じた「遊びと体験」をすることで、外の世界へ「挑戦」することにつながります。

これらが生涯にわたるウェルビーイング向上の土台をつくると共に、こどもの将来の自立に向けても重要な経験になります。

 

3.「こどもの誕生前」から切れ目なく育ちを支える

はじめの100か月は、継続した支援を要する時期であるにも関わらず、「環境が大きく変わる節目が多い」という特徴があります。

例えば、
・生まれた時
・保育園や幼稚園に入る時
・学校に入る時
など。

こどもに関わる大人が「こどもの育ち」に関する共通認識を持っていないと、「節目」をきっかけに必要なサポートが中断されてしまうという課題があります。

そのため、身体的・精神的・社会的な観点を踏まえながら、母子保健分野とこども家庭福祉分野が連携し、「こどもの誕生前」から切れ目なく支えることが重要です。

 

4. 保護者・養育者のウェルビーイングと成長の支援・応援をする

幼児期までは、こどもにとって人生の最初の時期であり、保護者にとっても子育ての最初の時期です。「こどもを育てる」そして「保護者や養育者を支える」。両方で支援していきます。

例えば、
・支援・応援を受けることを当たり前に
保護者自身が幸せ(ウェルビーイング)で、親として成長できるよう、支援・応援します。

・すべての保護者やこどもとつながること
すべての保護者やこどもが必要な支援につながるよう、接点づくりを行います。

・保護者・養育者がこどもと「共育ち」
保護者や養育者自身も、「こどもとともに育っていく」視点が大切です。

 

5.こどもの育ちを支える環境や社会の厚みを増す

こどもは保護者や保育者だけでなく、友人や地域住民と関わりを持ち様々な空間で日々を過ごしています。だからすべての人が子育てに関わり、 皆でこどもの育ちを支えることが必要です。

これからは保護者だけでなく、地域社会全体でこどもを育てる時代。みんながそれぞれの立場で、子育ての主役になれるのです。


「はじめの100か月の育ちビジョン」がみんなの共通認識に

この記事では「はじめの100か月の育ちビジョン」の概要についてご紹介しました。

こどもの健やかな成長は私たち全員に関わることです。こどもたちがすくすくと育つと、社会全体が明るくなり、地域全体の活力にもつながります。

ぜひお住まいの自治体での参考になさってみてください。

<参考文献>
はじめの100か月の育ちビジョン│こども家庭庁 2023