issues|イシューズ ブログ

こども家庭センターとはなにか?設立背景から役割まで徹底解説

作成者: にしのやすひろ|2024/07/30 2:12:18

issuesのにしのです。
子育ては喜びに満ちた経験である一方、多くの不安や課題も伴います。これからの地域社会を支える上では、子育て世帯へのサポートが不可欠であり、自治体にとって重要な施策の一つと言えるでしょう。

こうした状況の中、2024年4月から全国の自治体に設置が進められている「こども家庭センター」が、子育て世帯を支える新たな拠点として注目を集めています。本記事では、こども家庭センターが設立された背景から、具体的な役割まで詳しく解説していきます。

「こども家庭センター」とは何か?基本の解説

こども家庭センターの設立背景と目的

こども家庭センターは、すべてのこどもとその家庭、そして妊産婦に対して、切れ目のない支援を提供する新しい公的機関です。

少子化や核家族化が進み、子育て世帯を取り巻く環境が大きく変化する中、児童虐待の増加など、深刻な問題も顕在化しています。このような状況に対応するため、従来の支援体制を見直し、より包括的なサポート体制を構築することが求められてきました。

こども家庭センターは、こうした社会的要請に応え、2022年に改正された児童福祉法に基づき、2024年から設置されました。妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を行うとともに、支援を必要とするこどもや妊産婦に対して、きめ細やかなサポートプランを作成し、地域資源と連携しながら、子育て世帯を包括的に支援することを目的としています。

従来の支援センターとの違い

これまでの自治体には、「子育て世代包括支援センター」と「こども家庭総合支援拠点」という二つの機関が存在していました。前者は主に母子保健を担当し、後者は児童福祉を担当していました。しかし、これらの機関が別々に存在していたため、情報共有が不十分であったり、支援が途切れてしまうケースがありました。

こども家庭センターは、これら二つの機能を統合し、一体的な支援を行うことができる新しい拠点です。これにより、母子保健と児童福祉の両面から、より包括的で継続的な支援が可能になりました。例えば、妊娠期の健康相談から始まり、出産後の育児相談、さらには学齢期のこどもの福祉に関する相談まで、一貫したサポートを受けられるようになったのです。

こども家庭センターの全国設置状況

2024年5月1日時点の調査結果によると、全国1,741自治体のうち、876自治体(50.3%)がこども家庭センターを設置済みです。設置カ所数は全国で1,015カ所に上ります。特に設置が進んでいるのは福岡県(98.3%)、富山県(80.0%)、石川県(78.9%)、島根県(78.9%)などです。

ただし、まだ半数近くの自治体では設置が完了していません。今後、さらなる設置の推進が期待されますが、人材確保や予算の問題など、課題も残されています。

こども家庭センターの役割と機能

母子保健と児童福祉の一体的支援

こども家庭センターの最大の特徴は、母子保健と児童福祉の機能を一体的に運営していることです。これにより、妊産婦や乳幼児の健康管理から、児童虐待の予防や対応まで、幅広い支援を切れ目なく提供できます。

例えば、妊婦健診で気になる点があった場合、すぐに児童福祉の専門家にも相談し、出産後の支援計画を立てることができます。また、こどもの発達に関する相談から、経済的な支援の必要性が判明した場合も、速やかに適切な福祉サービスにつなげることが可能になりました。

包括的なサポートプランの作成

こども家庭センターでは、支援が必要なこどもや妊産婦に対して、個別のサポートプランを作成します。このプランは、母子保健と児童福祉の両面から、その家庭の状況やニーズを丁寧に把握し、必要な支援を組み合わせて作られます。

サポートプランの作成にあたっては、当事者との対話を重視し、その声に耳を傾けることが大切にされています。単に行政側の判断だけでなく、支援を受ける側の意向も十分に反映させることで、より効果的で実行力のある計画が立てられるのです。

地域資源の開拓と活用

こども家庭センターは、地域の子育て支援の中核的な役割も担っています。地域全体のニーズを把握し、既存の支援サービスや団体との連携を強化するとともに、新たな支援の担い手を発掘・育成することも重要な役割です。

例えば、こども食堂や学習支援、一時預かりサービスなど、地域の多様な資源を把握し、必要に応じて支援を受ける家庭につなげていきます。また、支援の担い手が不足している分野があれば、NPO法人や社会福祉法人などに働きかけ、新たなサービスの立ち上げを支援することも考えられています。

具体的な支援内容と利用方法

妊産婦・子育て世帯への具体的な支援事例

こども家庭センターでは、さまざまな状況に応じた支援が行われています。例えば、若年の妊婦に対しては、妊婦健診の受診支援から始まり、出産後の育児指導、経済的支援の案内まで、包括的なサポートを提供します。また、発達に課題のあるこどもを持つ家庭には、専門機関との連携のもと、適切な療育サービスの紹介や保護者のメンタルケアなども行います。

児童虐待のリスクが懸念される家庭に対しては、定期的な家庭訪問や保育所などとの連携による見守り、家事援助サービスの導入など、きめ細かな支援を実施します。このように、家庭それぞれの状況に合わせた多様な支援を、一つの窓口で包括的に提供できることがこども家庭センターの強みです。

相談・支援の流れと利用手続き

こども家庭センターの利用は非常に簡単です。妊娠が分かった時点や子育てに関する悩みが生じた時点で、直接センターに相談できます。また、母子手帳の交付時や乳幼児健診の際にも、センターの職員が対応し、必要に応じて支援につなげていきます。

相談を受けた後は、専門の職員がアセスメントを行い、必要に応じてサポートプランを作成します。このプランに基づいて、さまざまな支援サービスの利用や関係機関との連携が図られます。利用者の同意を得ながら支援を進めていくため、無理なく必要な支援を受けられる仕組みになっています。

支援の実施とモニタリング

サポートプランに基づいて支援が開始されると、定期的なモニタリングが行われます。支援の効果を確認し、状況の変化に応じてプランの見直しを行います。例えば、当初は育児不安への対応が中心だった支援が、こどもの成長に伴い就学準備への支援に変更されるなど、柔軟な対応が可能です。

また、支援の過程で新たな課題が見つかった場合も、速やかに対応策を検討し、必要に応じて他の専門機関と連携します。このように、継続的かつ柔軟な支援体制を構築することで、子育て世帯の安心感を高めることができるのです。

こども家庭センターの今後の展望と課題

地域との連携強化

こども家庭センターの機能を最大限に発揮するためには、地域のさまざまな機関や団体との連携が不可欠です。保育所や学校、医療機関、民間の支援団体など、こどもに関わる全ての機関がスムーズに情報を共有し、協力して支援を行える体制づくりが求められています。

例えば、地域のこども食堂や学習支援団体との定期的な情報交換会の開催や、医療機関との連携による妊産婦のメンタルヘルスケアの強化など、具体的な連携策を模索していく必要があります。こうした取り組みを通じて、地域全体で子育てを支える環境を整えていくことが期待されています。

支援体制の改善点と課題

一方で、こども家庭センターの運営には課題も残されています。最も大きな課題は人材の確保と育成です。母子保健と児童福祉の両方に精通した専門職の確保は容易ではなく、既存の職員のスキルアップも急務となっています。

また、プライバシーに配慮しつつ必要な情報を共有する仕組みづくりや、増加する外国籍の子育て世帯への対応など、新たな課題にも直面しています。これらの課題に対し、研修体制の充実や ICT の活用、多言語対応の強化などの取り組みが進められていますが、さらなる改善が求められています。

今後の目標と期待される役割

こども家庭センターには、子育て世帯を包括的に支援する中核的な存在としての役割が期待されています。今後は、全ての市区町村での設置完了を目指すとともに、支援の質の向上にも注力していく必要があります。

特に、児童虐待やこどもの貧困など、深刻化する社会問題に対する予防的な取り組みの強化が求められます。早期発見・早期対応の体制を整えるとともに、支援を必要とする家庭がちゅうちょなく相談できる雰囲気づくりも重要です。こども家庭センターが地域に根差した親しみやすい存在となり、全てのこどもたちが健やかに成長できる社会の実現に貢献することが期待されているのです。

地域全体で子育てを支える仕組みづくりを

こども家庭センターは、子育て世帯を包括的に支援する新しい拠点として、大きな期待が寄せられています。母子保健と児童福祉の機能を一体化し、妊娠期から子育て期まで切れ目のない支援を提供することで、子育ての不安や負担を軽減し、こどもたちの健やかな成長を支えることができます。

もちろん、人材確保や関係機関との連携など、課題も残されています。しかし、これらの課題に取り組みながら、地域全体で子育てを支える仕組みづくりを進めていくことで、より良い支援体制が構築されていくでしょう。

こども家庭センターの存在が広く知られ、気軽に利用される存在となることで、子育て世帯の孤立を防ぎ、全てのこどもたちが笑顔で成長できる社会の実現に近づくことができるはずです。お住まいの地域でも、こども家庭センターの取り組みに注力し、地域全体で子育てを支える意識を高めていくことが大切ではないでしょうか。

【参考資料】
こども家庭センターの設置状況等について|こども家庭庁|2024
【独自】全市区町村に「こども家庭センター」設置…子育て世帯支援を一元化、政府が法改正案|読売新聞|2022
こども家庭センターガイドラインのポイント|こども家庭庁|2024