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学校が長期休業期間中の学童施設における昼食提供の実現は、共働き世帯にとって切なる願い。全国的にその要望が高まる中、各自治体も適切な解決策を模索する必要に迫られています。この記事では、学童施設における昼食提供の現状や、昼食提供を実現した自治体の事例、抱える課題に焦点を当て、増加する昼食提供ニーズにどのように応えるべきかを探ります。ぜひ最後までお読みいただき、学童施設での昼食提供に関する課題解決の一助としてご活用ください。
学童保育は共働き世帯などへの重要な支援手段であり、その利用者は年々増加傾向にあります。しかしながら、多くの学童施設は昼食を提供する環境を整えていないため、保護者は長期休業期間中の弁当作りに大きな負担を感じています。
長期休業期間が近づくと、SNS上では「学童弁当」という言葉が注目され、保護者から朝の弁当作りの大変さや、食中毒への不安が多く聞かれます。
現在、昼食を提供している学童施設は全体の約22.8%程度と限られています。家庭の事情は多様化しており、子供の昼食を心配せずに学童を利用できる環境整備が強く求められています。
一部の自治体では、保護者からの切実な要望に応えて、土曜日や長期休業期間に昼食を提供する取り組みが広がっています。これにより、子供たちが学童施設で安心して過ごし、保護者も仕事や生活に集中できる環境が整えられています。以下では、茨城県の境町、東京都の港区、沖縄県の浦添市の事例を紹介します。
■自治体負担:保護者負担分を除く食材費、水道光熱費、運搬費
■保護者負担:1食あたり250円
茨城県境町では、2021年度の長期休業期間中から、学校給食センターで調理された昼食を町内の全ての放課後児童クラブに提供する取り組みを開始しました。この取り組みには多くの世帯が参加しており、児童クラブに通う子どもの9割以上が申込みをしています。
利用の流れは、まず給食センターの管理栄養士が作成した献立表を確認し、申込書を提出します。そして、放課後児童クラブ担当課が申込みを受け付け、給食センターへ依頼します。給食センターでは通常の給食同様に食材の調達から配送までを行います。
利用者からは提供される昼食に対する好意的なコメントが寄せられています。特に、食中毒の心配がないことや、温かい食事を提供してもらえること、朝の弁当準備の負担が軽減されたことに対する喜びが多く聞かれます。
茨城県境町のこの取り組みは、ほかの自治体から問い合わせを受けるなど、効果が認められた成功事例として示唆を与えるものとなりました。
■自治体負担:配送費
■保護者負担:1食あたり520円
東京都港区では、学童施設の昼食提供へむけて自治体主導の新しい取り組みが行われています。区内38カ所の学童施設全てにおいて、2023年度の夏季休業から弁当配送事業が導入されました。
区は弁当の配送を行う事業者と一括して契約を結び、配送費を負担します。保護者は事業者提供の注文システムを利用し、前日正午までにスマートフォンで弁当の申し込みと支払いを行います。注文情報は事業者と放課後児童クラブで共有され、事業者が各クラブへの配送を担当します。
これまで一部の学童施設では、保護者自らが弁当の注文をとりまとめていたケースがありましたが、一施設あたりでまとまった注文数が確保できない日は発注できない課題がありました。しかしこの新たな事業では、区内の学童保育施設38カ所全てに対し区が一括で発注することで、一施設あたりの注文数が少なくても発注が可能に。これまで利用が難しかった施設でも安定的かつ継続的に弁当配送を利用できるようになりました。
東京都港区は「区が主体的に取り組むことで、夏休みなどの長期休業中の保護者の負担を軽減し、保護者と子どもが安定的かつ継続的に利用できるようにしたい」と述べ、保護者からはニーズに寄り添った施策だとして支持を集めています。
■保護者負担:1食あたり350円
学童施設の昼食提供方法の一例として、民設民営の取り組みも見てみましょう。沖縄県浦添市内で学童クラブ12カ所を運営する一般社団法人沖縄県学童保育運営サポート協会は、2015年度から児童に手作りの食事を提供する取り組みを開始しました。浦添市内の各児童クラブでおやつと昼食を提供し、児童の健康と食育に貢献しています。
協会は2021年に市内に調理場を設置し、セントラルキッチン方式を導入しました。これにより業務の効率化や品質管理が向上しました。月曜から土曜までの多忙な日々でも、専属職員と支援員が協力して、500食の調理を行います。
食物アレルギーのある子どもには別の調理が行われ、40食分の特別な食事も用意されています。他の自治体ではアレルギーを持つ子供への昼食提供を行わないケースも多いですが、沖縄県学童保育運営サポート協会ではきめ細かい配慮で食材の管理にも細心の注意を払い、安全性を確保しています。
登録児童のうち約3割がこのサービスを利用しており、児童や保護者からも喜びの声が聞かれます。経費は保護者負担のみで賄えており、協会では栄養士の配置も検討し、より充実した食事提供を目指しています。
学童施設での昼食提供は、保護者にも児童にも歓迎される取り組みですが、その実現には多くの問題があります。
業者側からは事業の持続性の難しさが指摘されています。その主な理由は、給食費程度の範囲内で料金を抑えねばならないため収益性が低いこと、提供期間が長期休業期間に限られているため人員確保が難しいこと、そして弁当の利用の有無を直前まで把握できないことが挙げられます。
学童施設側も、児童1人ひとりの細かなニーズに対応することが大きな課題です。食事アレルギーの対応や直前の利用状況による昼食の追加・キャンセルなど、個々の状況に柔軟に対応することが求められますが、人員数や作業量を考えると現実的ではないと考える施設も少なくありません。
しかし、学童保育での昼食提供は保護者の期待が非常に大きく、実現すべき課題のひとつと言えます。乗り越える壁は多いものの、各自治体では補助金(放課後児童健全育成事業など)の活用やICTの導入などにより、課題解決に向けた前向きな検討が進められています。
この記事では、茨城県境町、東京都港区、沖縄県浦添市の先行事例を参考に、学童施設における昼食提供について解説してきました。学童施設での昼食提供は共働き世帯にとって重要な支援手段であり、今後も需要が高まっていくことが予想されます。地域社会全体で協力し、子どもたちの健やかな成長を支えるための取り組みを進めていきましょう。ぜひこの記事を参考にしていただき、地域の発展と子どもたちの未来を支える一助としていただければ幸いです。
【参考資料】
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https://minna-tunagaru.jp/wp-content/uploads/2023/07/2023.7.11%E3%80%90%E4%BA%8B%E5%8B%99%E9%80%A3%E7%B5%A1%E3%80%91%E5%B0%8F%E4%B8%AD%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%AD%89%E3%81%AE%E5%A4%8F%E5%AD%A3%E7%AD%89%E3%81%AE%E9%95%B7%E6%9C%9F%E4%BC%91%E6%A5%AD%E4%B8%AD%E3%81%AE%E5%AD%90%E8%82%B2%E3%81%A6%E4%B8%96%E5%B8%AF%E3%81%B8%E3%81%AE%E5%AF%BE%E5%BF%9C%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6-1.pdf
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000056181.html
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https://www.gakusapo.okinawa/