地域のごみ議論の中でも、ペットボトルは特に目立つ存在です。理由はシンプルで、量が圧倒的に多いからです。
環境省の最新集計では、令和5年度の分別収集量は約33.9万トン、再商品化事業者等への引渡量は約33.3万トン。分別収集は全国のほぼ全て(実施率99.7%)で行われています。つまり毎日、大量のペットボトルが自治体の一般財源で動いています。
ごみの収集・運搬・選別・処理といった清掃事業は、原則として自治体の一般財源でまかなわれます。したがって、量が増えるほど回収・選別にかかる費用のベースも増えるのが基本構造です。ペットボトルは母数が大きい分、少しの増減でも年単位では響いてくる——ここが地方財政の視点で見たときの重要ポイントです。
全国の基礎コストは右肩上がり
一般廃棄物のごみ処理事業経費は2兆2,912億円(令和5年度)、1人あたり約1万8,300円。費目別では委託費(収集運搬25.5%/中間処理28.1%)の比重が大きく、量が増えるとこの部分が大きくなってきます。環境省
自治体単位では“差額を一般財源で”
実例では、札幌市の清掃事業で差引108億円(R4決算)/129億円(R5予算)を市税等の一般財源で賄う旨が明記されています。資源売却や交付金で相殺されても、ベースは一般財源という構造です。札幌市
頻度・保管・動線の再設計が必須
量が多いと、収集頻度の設定/ストックヤード容量/積替え動線に余裕がなくなります。特に、ピーク時(イベント・観光・繁華街等)に詰まりやすくなるリスクがあります。
品質と手戻り(異物・汚れ)が作業を逼迫
異物混入や汚れは人手と時間を奪います。ペットボトルに典型的なのは、①内容物の残り(飲料・油脂など)、②ラベル・キャップの付いたまま、③他素材の混入(塩ビやPP/PEのボトル、金属・ガラス・紙片など)です。環境省の手引きは、汚れや異物混入は選別費用や“リサイクルできないものの処理費用”を押し上げると明記しています。つまり、余計な分別・洗浄が確実に増えます。環境省
ここまで見てきたように、ペットボトルごみは量のインパクトが大きい(=回収・選別の自治体の一般財源に影響する)性質をもちます。対策の打ち手は大きく三つに分かれます。
① そもそも出さない(最上流)/② 出たものを正しく分けて集める(中流)/③ 集めたものをより良く活かす(下流)。
この流れの中で、マイボトルは①「最上流」の対策にあたります。したがって、次の3点で有効です。
量を直接減らせる
最上流でボトルそのものの発生を減らせば、回収・選別にかかる自治体の一般財源のベースが軽くなります。母数が大きい分、小さな行動の積み重ねが効きやすい領域です。
現場の"詰まり”を防げる
イベント日や繁華街など、季節や場所によって一時的にボリュームが膨らむ瞬間があります。マイボトルはその膨らみを抑える働きがあり、収集・保管・選別の混雑を和らげます。
ペットボトルごみは、日々大量に処理されるごみです。だからこそ、わずかな増減でも財源負担や現場の詰まりに直結します。
見立てとしてはシンプルで、「量が多い=費用も手間もかさむ」ということ。処方箋を急がずとも、まずは最上流で"出さない"を進めるだけで、回収・選別コストのベースとピーク時の混雑を同時に軽くできます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
10月に脱プラ問題とマイボトルをテーマにした無料ウェビナーの開催を予定しておりますので、よろしければ是非お申込ください(アーカイブ視聴も可能です)。
環境省|令和5年度 容器包装リサイクル法に基づく市町村の分別収集等の実績(ペットボトル:分別収集量・引渡量・実施率)
https://www.env.go.jp/press/press_04638.html 環境省
環境省(Plastic Smart)|ペットボトルの回収率の考え方(未回収の多くは一般ごみ)
https://plastics-smart.env.go.jp/plasmaction/petbottle/1/ プラスチックスマート Plastics Smart
環境省|一般廃棄物の排出及び処理状況(令和5年度)(ごみ総排出量の推移)
https://www.env.go.jp/recycle/waste_tech/ippan/r5/data/env_press.pdf 環境省