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埼玉県横瀬町は、人口約8,000人の小さな町です。この町にとって最大の課題は人口減少であり、40年後に2,600人を下回るという予測も出ています。
この危機感から、町は人口減少対策に向けた組織作りを進め、外部からの流入を促進するため、官民連携プラットフォーム「よこらぼ」を立ち上げました。よこらぼは一定の成果を上げ、全国から注目を集めています。
本記事では、「よこらぼ」の取り組みと成功の要因を紹介し、皆様の地域でも役立てられるアイデアを提供します。
2016年に設立された横瀬町官民連携プラットフォーム「よこらぼ」は、町のスローガン「日本一チャレンジする町、日本一チャレンジを応援する町」を体現し、企業、個人、団体が横瀬町で新たな事業やプロジェクトを展開できる場を提供しています。
この取り組みは、町に活力を与え、内外から様々なプロジェクトを誘致する仕組みとして機能しています。
設立以来、よこらぼは数々の成果を上げ、栄誉ある賞を受賞してきました。2023年1月には総務省ふるさとづくり大賞優秀賞、同年10月に行われた国内最大規模の政策づくりコンテスト「第18回マニフェスト大賞」ではコミュニケーション戦略賞優秀賞を受賞しました。
これらの受賞は、よこらぼの取り組みが地域活性化に大きく貢献していることを示しています。
よこらぼの最大の特徴は、その「間口の広さ」にあります。地方でプロジェクトを展開したい企業や団体にとって、対応する場所や自治体との連携が不足することは大きな課題です。
しかし、よこらぼは提案内容に特定のテーマや課題を設けず、住民に利益をもたらすものであれば何でも受け入れるオープンな姿勢を貫いています。
この姿勢により、2023年10月時点で234件の提案が寄せられ、そのうち141件が採択されています。
このプロジェクトのもう一つの特徴は「速さ」です。官民連携プロジェクトの場合、通常は官のペースに民が合わせることになりますが、よこらぼではこれを逆転させ、民間のスピードに官が対応する仕組みを構築しました。
具体的には、提案を毎月25日までに締め切り、翌月には審査会を開催しています。審査会には、町職員、町議会議員、住民代表、観光・産業振興協会の代表などが参加し、評価点数と意見をまとめ、町長が最終判断を行います。
採択されたプロジェクトは最短で1カ月強で始動するため、提案者のモチベーションを維持しつつ、迅速な実行が可能となっています。
「よこらぼ」の成功の要因は以下の3点にあります。
富田町長は、「みんなでチャレンジしていこう!チャレンジを応援していこう!」と力強く呼びかけ、自らの率先垂範で職員や住民のチャレンジ精神を引き出しています。
町長自ら率先してチャレンジを推奨する姿勢は、町内外からの提案を積極的に受け入れる環境を生み出し、職員一人ひとりが自由にアイデアを発揮できる土壌を育んできました。
よこらぼの成功には、「人のつながり」が大きな役割を果たしています。町役場、企業、大学などが連携を深め、信頼関係を築くことで、次々と新しいチャレンジが生まれています。
提案者と町役場の職員が共同でプロジェクトを進めることで、双方のモチベーションを高め、成功への道筋を築いています。
横瀬町のような小規模な町は、小回りが利き、コミュニティの結束力が強いという利点があります。この強みを活かすことで、プロジェクトの迅速な実行が可能となっています。
提案者は、町内の各種団体や住民から容易に協力を得ることができ、町全体が一体となってプロジェクトを進めています。
横瀬町のユニークな取り組みは、全国メディアの注目を集め、多くの報道がされています。
このことは、横瀬町の知名度向上と「チャレンジする町」としてのイメージ強化に繋がり、都市部からのヒト・モノ・カネ・情報の流入促進に大きく貢献しています。
株式会社Kids Publicとのプロジェクトでは、診療時間外の平日18時から22時まで、LINEなどのテレビ電話機能を通じて、専門医に直接相談できる「小児科オンライン」を導入しました。
横瀬町には小児科の専門医療機関がなく、子育てに不安を感じる保護者が多かったことから、このサービスの導入が決定しました。このサービスの利用により、不要不急の受診控えや子育ての不安解消といった効果が確認できました。
横瀬町のサポート
「ユニバーサル野球」のプロジェクトは、障害者支援に携わる企業が提案し、町内で障害のある人もない人も一緒に楽しめる野球場を作る試みです。
コロナウイルスの影響で身近にあったスポーツが規制を受ける中、町内で23名のボランティアが集まり、町立横瀬小学校で体験試合を行うなど、地域住民の参加と協力によって実現しました。提案者と町の住民が一体となってプロジェクトを進めることで、町全体の活気につながりました。
横瀬町のサポート
参考:誰でも野球が楽しめるユニバーサル野球が 「よこらぼ」に採択されました
「よこらぼ」にはいくつかの課題も存在します。例えば、事務の増加や町民への浸透不足などです。
提案を多く受け入れることで、必然的に職員の事務作業が増加し、マンパワー不足が顕著化してきています。この課題に対しては、職員の業務効率化を図るためのシステム導入や業務の外部委託などの対策を検討しています。
よこらぼの取り組みが町民に十分に浸透していないという課題もあります。この問題を解決するために、町の広報紙やSNSを通じた情報発信を強化し、町民向けの説明会や懇談会を開催しています。
これにより、よこらぼの趣旨や効果を町民に伝え、理解と協力を得る努力を続けています。
横瀬町の「よこらぼ」は、人口減少という大きな課題を抱えながらも、外部からの提案を積極的に取り入れることで、町の活性化に取り組んでいます。
全国の地方自治体の皆様も、ぜひこの事例を参考に、お住まいの地域で同様の取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。地方の未来を切り開くためには、新たな挑戦が不可欠です。
横瀬町の成功事例から多くのことを学び、お住まいの地域にお役立ていただければ幸いです。
【参考資料】
よこらぼ -横瀬町とコラボする研究所-.2024
町の活性化に向けた挑戦 横瀬町の進める官民連携プラットフォーム「よこらぼ」
官民連携プラットフォーム「よこらぼ」.さいたま人づくり広域連合.2024