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子どもの朝の居場所不足問題|解決に取り組む自治体の先進事例

作成者: にしのやすひろ|2024/04/22 12:31:47

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子どもが小学校入学を迎えた共働き世帯にとって、子どもの朝の居場所不足が深刻な課題として近年顕著になっています。この記事では、地方自治体が取り組むべき子どもの朝の居場所づくりについて解説していきます。"朝の小1の壁"の原因や、その解消に取り組む他自治体の先行事例を参考に、問題の解決策を探りましょう。ぜひ最後までお読みいただき、お住まいの自治体が子どもの朝の居場所づくりに取り組む際の参考としてご活用ください。

“朝の小1の壁”とは?その原因と背景

小学校入学に際し、共働き世帯が直面するのが「朝の小1の壁」です。この問題は、小学校の開校時間と共働き世帯が出勤しなければならない時間のギャップによって引き起こされています。ではなぜこのような問題が生じるのでしょうか?その原因と背景について探ってみましょう。

“朝の小1の壁”が立ちはだかる原因

保育園には朝7時から子どもを預けられた一方で、小学校の登校時間は7時30〜45分の間に集中しています。そのため家を出る時刻を子どもの登校時間に合わせると勤務開始時間に間に合わない場合が多く、共働き世帯の大きな負担となっています。

この問題の背景には「保活」の影響があります。保育園に入園するためには、両親が週40時間以上働いている方が就労点数で優遇されるため、共働きのフルタイムで働くことを選択する世帯も少なくありません。しかし子どもが小学校に入学すると、その働き方が合わないという現実が待ち受けています。

共働き世帯が抱える心苦しい現状

2023年に発表された厚生労働白書によると、共働きの世帯数は専業主婦世帯の2倍以上に達しています。子どもより先に出勤するほかなく、小学1年生になったばかりの子に1人で戸締まりをさせて登校してもらっている世帯や、登校する娘を見送るために「夫婦どちらかが転職するしかない」という結論に至る世帯が後を絶ちません。

子供だけの戸締まりでは、玄関の鍵がかかっていなかったりストーブがつけっぱなしになっていたりなど防犯防災の面でも不安があります。そして、これまで築いたキャリアを手放す場合も、今後増えてくる教育費に対する不安との葛藤があります。

「家に一人でいたくない」と校門の解錠前に登校を希望する児童も多く、地域からも「校門前の道路に何十人も児童がたまっているのは危ない」と指摘されてきました。全員が解決したい問題にもかかわらず、八方塞がりの心苦しい現状が明らかになっています。

“朝の小1の壁”が顕著化してきた背景

以前は朝早い時間に校門が開けられ、児童が運動場などで遊んでいる光景がよく見られましたが、それは教員が勤務時間外で対応していたためでした。もちろん教員だけの犠牲で解決するべきではなく、時間外労働は見直される必要があります。

教員の長時間労働が問題視されるなか、文部科学省は各都道府県知事や教育委員会教育長らに通知を出しました。そのなかで朝の時間帯の学校業務の負担軽減策のひとつとして「開門は登校時間の直前とすること」が例に挙げられました。これを受け、登校時間そのものを遅らせる通達を小学校に出した自治体もあり、その影響が子どもの朝の居場所不足につながっているのです。

朝の子どもの居場所づくりに取り組む自治体

親側、あるいは教員側のどちらか一方の負担によってごまかされてきた「朝の小1の壁」問題。そのような状況の中で、自治体による朝の子どもの居場所づくりも活発化してきています。事例を参考にしながら、自治体が朝の子どもの居場所をどのようにつくるべきかを考えてみましょう。

神奈川県大磯町の事例

神奈川県大磯町は、朝の子どもたちの居場所づくりに積極的に取り組んでおり、2016年1月から町立の2つの小学校で「朝の子どもの居場所づくり事業」を全国に先駆けて展開しています。この取り組みでは、学校がある日の午前7時15分から登校開始時間まで、学童保育所で子どもを預かります。親の就労状況にかかわらず、対象小学校に通う全児童が利用できます。

国府学童保育所は社会福祉法人が運営を委託されており、朝の子どもの居場所づくり事業も同法人が担当しています。県のモデル事業として試験的にスタートしましたが、保護者からの好評を受けて町の事業として継続されています。町は年約300万円の予算をつけ、2022年度の利用者の延べ人数は、この5年で2倍となっています。

保護者からは「仕事の出勤が早く、子どもが自宅で1人にならずにすむので安心」という声が寄せられています。また、預ける際に見守りスタッフと言葉を交わせるなど、保護者にとっては地域とのつながりが得られる場でもあります。

大磯町の取り組みは、子どもと保護者の安心・安全を確保するとともに、地域コミュニティの強化にもつながっている好事例と言えるでしょう。

東京都三鷹市の事例

東京都三鷹市は2023年11月以降、市内の全小学校の校庭を教員の始業時間より1時間前に開放しています。この取り組みは、子どもたちに朝の居場所を提供するとともに、保護者の負担を軽減することを目的としています。2023年6月の市議会で「朝の時間に校庭は使えないのでしょうか」と3名の議員から質問を受け、わずか5ヵ月で実施に移されたこの取り組みは、市民のニーズに迅速に応える姿勢を示しています。

校庭の開放時間は平日の午前7時半から8時半までであり、運営や子どもの見守りはシルバー人材センターに委託されています。1校あたり2人のスタッフが配置され、約770万円の予算が計上されています。

朝の校庭開放によって、子どもたちの体力向上や生活リズムの整備が図られたといい、子ども・保護者・教員の三者が満足する取り組みとして評価されています。

自治体が子どもたちの健やかな成長を支えるこの取り組みは、地域社会の連帯を促進する取り組みとして注目を集めています。

東京都八王子市の事例

八王子市では、2023年4月から市内の一部の学校で朝の校庭開放を試験的に行っています。各学校の事情や地域からの協力が必要なため、一律に実施されていませんが、保護者からの関心は高く、市としても積極的に支援することを表明しています。

八王子市の朝の校門開放は、もともと下校後の児童に対して校内の居場所や遊び場を提供する「放課後子ども教室」事業から派生したものです。安全管理員と呼ばれるボランティアが当番制で校門の解錠を行い、子どもたちの安全を見守ります。

この取り組みは、以前から校門で待つ子どもたちの危険を指摘する地域の声に応えるものでした。朝の校庭開放により、子どもたちの安全確保や遊び場の提供が行われたとともに、遅刻が減り、不登校気味の子どもたちも登校するようになったと、保護者や地域から好評を得ています。

地域の大人たちの支援があることで、子どもたちは安心して登校し、学習への意欲も高まりました。地域と学校が信頼関係を築くことで、子どもたちの成長がより促されるのではと期待されています。

子どもの朝の居場所づくりは自治体として取り組むべき課題

この記事では、神奈川県大磯町、東京都三鷹市、東京都八王子市の自治体が取り組んだ子どもの朝の居場所づくりについて解説してきました。校門前での待機や居場所不足は、子ども・保護者・教員それぞれにとって深刻な問題ですが、先進自治体ではさまざまな取り組みによって対策が行われています。朝の子どもたちに安心感を提供し、地域の魅力を高めるためには、教員や保護者の意見を踏まえた支援員の確保など、地域の課題に合わせた施策が求められます。ぜひ先行事例を参考にし、お住まいの地域でも子どもの朝の居場所づくりに取り組む際のヒントとしてご活用ください。

【参考資料】
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/22/dl/zentai.pdf
https://www.nhk.or.jp/bunken/yoron-jikan/
https://www.town.oiso.kanagawa.jp/soshiki/chomin/kosodate/tanto/asano_kodomo/1447996447975.html
https://www.mitaka-schools.jp/minamiura-es/documents/20231030koutei.pdf
https://www.townnews.co.jp/0305/2023/06/01/680603.html