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2024年2月14日に厚生労働省で開催された中央社会保険医療協議会総会で、6月から適用される新しい診療報酬により、子どもの付き添い入院における家族の負担が軽減されることが発表されました。この記事では、子供の付き添い入院の現状と課題、そして診療報酬の改定でどのように変化するかについて解説していきます。ぜひ最後までお読みいただき、子育て世帯が住みやすい環境づくりの施策例としてご参考いただければ幸いです。
付き添い入院とは、家族が病人と同じ病室に泊まり込み看護をすることです。国の規定では、付き添い看護は原則禁止されていますが、患者が子どもの場合、医師の許可があれば家族が付き添うことが認められています。
重要なのは、付き添いが看護師の仕事を代替するものではなく、補完的なサポートや子どもの心理的不安を和らげる手段として行われるべきものであるということです。
付き添いは規定上「任意」であり、家族の付き添いはあくまでサポートの立場です。具体的な作業は看護師らが担当し、家族は看護業務を遂行するものではないと定義されています。
しかし現実には、付き添い入院する家族に多大な負担がのしかかっている実情があります。昨年6月に公表されたNPO法人「キープ・ママ・スマイリング」(東京)の調査によれば、精神面から経済面に至るまで、付き添い入院の過酷な現状が明らかになりました。
小児の付き添い入院において、本来医療従事者が果たすべき役割を家族が担っている事態が深刻化しています。食事や入浴の介助、服薬まで請け負い、場合によっては人工呼吸器の管理といった専門的な医療的ケアに従事しているケースも見受けられます。
「付き添い入院は全面的に禁止したほうがよい」との声も上がっていますが、病気の子どもの観点から見れば、親に付き添ってもらうことは「子どもの権利」とされています。親が付き添うことによる安心感は子どもの早い回復にとって重要です。
問題なのは、「家族が看護要員の代替または看護力を補充するような状況」が常態化していることです。医療者や医療機関だけでなく、社会全体がこの問題に共感し、親が安心して付き添える環境や制度を整備することが必要です。
付き添い入院をする方々のうち、65.1%が病院内のコンビニや売店で食事を済ませていることが明らかになりました。付き添い者は患者ではないため、多くの病院では食事提供を行いません。このため、おにぎり、菓子パン、カップ麺が主食となり、栄養バランスを欠いた食事が懸念されています。
また、1日に1食または2食しか食べられなかったと答えた方のうち、約6割が「食べる時間がなかった」と回答しています。子供の世話や介護に追われ、食事の時間も確保できないという現状が浮かび上がります。
約85.4%の親御さんが十分な睡眠を確保できず、そのうち51.8%が子どもと同じベッドで寝ていました。特に、添い寝や寝かしつけが必要な乳幼児を持つ親でその割合は高く、節約のために簡易ベッドや布団のレンタルを避け、子どもと同じベッドで寝ている人が多く見受けられます。
これに加え、夜間に子どもの世話や看護をする必要がある人は9割以上にのぼります。24時間体制での付き添い生活は睡眠不足を招き、体調を崩すリスクが高まります。
付き添い者の体調不良は深刻であり、2人に1人が入院中に体調を崩した経験があるにもかかわらず、付き添いを続けている現状があります。抑うつ状態に陥る人も多く、付き添い者のケアも急務な実態が明らかになりました。
調査によると、付き添い入院を経験した人のうち7割が「付き添いが必須だった」と回答しており、体裁上医師の許可を得る「付き添い願い書」提出も一般的であることがわかりました。家族が付き添いを望まなくても、病院からの要請に答えざるをえない現状が明らかになり問題視されています。
制度上は付き添いが任意であるにもかかわらず家族に選択権がないことは、人権や尊厳の軽視に関わってきます。家族が安心して付き添える環境が整っていないということは、病気の子どもの権利をも侵害していることにもつながります。
厚生労働省の2022年度調査によれば、小児科病棟の半数以上が保育士や介助看護助手を配置していない実態が浮かび上がりました。子供の付き添い入院にまつわる根本的な課題は「看護人材不足」であり、人手の配置を充実させる対策が不可欠です。
子供のケアは成人よりも手間がかかるにもかかわらず、その報酬が同等である問題が指摘されています。医療機関は厳しい経営状況に直面していますが、労力提供型の付き添いを止めるためには、人手不足の解消や小児医療体制の見直しが必要です。医療機関単独では解決できない現実を理解し、国を挙げた支援が求められます。
そして今後は親のケア参加についてきちんと定義づけし、「親に期待されるケア」と「看護要員がやるべきケア」の線引きをしっかり行い、家族の負担にならない仕組みを作っていくことが命題です。
厚生労働省はこれらの問題を重く受け止め、2024年6月から適用される新たな診療報酬制度に、付き添い入院の環境改善につながる喜ばしいポイントを多く盛り込みました。
小児入院医療管理料を算定する医療機関には、保育士や看護助手の増員に対して加算が行われます。例えば保育士の報酬は子ども1人当たり1日「1,000円」から、2人以上配置した場合は「1,800円」に引き上げられます。
夜間も働ける看護助手の配置には新たに子ども1人あたり1日「1,510円」の報酬が設けられ、家族はこの時間を利用して休息や食事を取れるようになります。そのほか、食事や睡眠環境などの付き添い環境整備を小児医療機関に求め、病院食の提供や寝やすいベッドの用意など、家族への配慮を促しています。
この診療報酬改定は、付き添い入院の課題である「見守り・食事・睡眠」の状況を解決するための対策を網羅しており、家族に過度な負担がかからない医療体制を確保する観点から高く評価されています。この施策によって、小児の入院医療に新しい常識が生まれることが期待されています。
この記事では、子供の付き添い入院に関する現状と今後の展望について解説してまいりました。国の施策だけでなく、さまざまなNPO法人や団体も付き添い入院の負担軽減のために支援を行っています。子育て中の世帯が安心して生活できるように、自治体が独自の支援策を検討することも一つの手段となるでしょう。
【参考資料】
https://momsmile.jp/wp/wp-content/uploads/2023/06/a7b63100c25f4547c15be124e0e70e25.pdf
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28544.html