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小中学校の給食費無償化|先進事例に見る社会への影響と可能性

作成者: にしのやすひろ|2024/03/27 4:38:14

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ここ数年、小中学校の給食費無償化が全国的に広がりを見せており、導入を検討されている地域の方も多いのではないでしょうか。この記事では、給食費無償化が進む背景や自治体の先進事例を参考に、給食費無償化の影響について解説していきます。ぜひ最後までお読みいただき、お住まいの地域で給食費無償化を検討する際の参考としてご活用ください。

小中学校の給食費無償化が進む背景

給食費無償化は、学校給食費を生徒の保護者から徴収せず、自治体や国が公費を用いてまかなう制度です。近年のコロナ禍や円安に伴う物価上昇により、給食が子どもたちの生活や健全な学習機会の保障に深く関与していることが表面化してきました。問題の顕在化により、給食費無償化を推進する自治体が増えてきています。

物価高対策に活用できる政府の臨時交付金を給食費無償化に活用する自治体も多くあり、報道によれば全国約1600市区町村の3割にあたる451市町村が、2022年度に給食費を無償化したことが分かりました。貧困家庭の増加など格差社会が広がる中で、子どもたちの権利保障を担保するには、地域や国が人権問題として責任を果たし、給食費無償化の施策を整える必要があります。

千葉県いすみ市の事例 ~無償化と地域活性化を両立~

給食費の無償化を進めつつ、給食の質の担保、地産地消や食育にも同時に取り組むのは簡単なことではありません。しかし、2012年に環境保全型農業によるまちづくりを宣言した千葉県いすみ市は、この課題に果敢に取り組んできました。いすみ市は有機栽培を行う農家を支援し、2017年には学校給食をすべて有機米に変更し、2022年には給食費を無償化するに至りました。

この成功の背景には、地産地消による街の活性化や環境負荷の軽減、地域のブランド化といった具体的な成果がありました。地元で生産された食材を使うことで、地域の農業や食品産業に活力が生まれ雇用が増加し、経済の活性化が進み税収が増加したことで、給食費の無償化に必要な財政基盤が整いました。

千葉県いすみ市の取り組みは、地域の資源を活かすことで無償化と地域活性化を両立させた良い事例となりました。地域住民と行政が連携して取り組むことで、持続可能な社会の実現が可能であることを示しています。

東京都中野区の事例 ~私立も含めた全小中学校で無償化~

東京都中野区では、2023年10月から2024年3月までの半年間、小中学生の保護者に対し給食費相当額を現金給付する取り組みを実施しました。この政策は物価高騰対策の一環として導入され、具体的には小学生1人につき3万円、中学生1人につき3万7千円が給付されました。

この施策の注目すべき点は、国立、都立、そして私立学校に通う全ての小中学生の給食費を実質無償化したことです。所得制限を設けず私立学校も対象に含めた点は先進的であり、ほかの地域や自治体にも示唆を与えました。

中野区の取り組みは教育の公平性を追求する上で重要な一歩です。2024年度以降の継続は未定とされていますが、経済的負担が教育の機会を左右することを避け、全ての子供が公平な教育機会を享受できるようにするための取り組みとして注目を集めています。

青森県の事例 ~全国初の県単位一律無償化~

青森県は、2024年10月から県内の小中学校で提供される給食を無償化する方針を採択しました。これは、都道府県単位での一律無償化としては全国初めての取り組みです。

関連経費約20億円が2024年度当初予算案に盛り込まれ、各市町村に給食費の平均額である1食当たり小学校280円、中学校310円を上限に分配されます。これにより、地域ごとの経済格差や子供たちの学校生活における不公平を軽減することが期待されています。

すでに独自の無償化を進めていた自治体への取り組みには適応できないなど、公平性が問われる意見も出されていますが、全国初の試みとして、これからの子育て支援へどのような影響があるのか注目されています。

小中学校の給食費無償化の課題

給食費の無償化は保護者にとって大きな恩恵ですが、その実現には複数の課題があります。

無償化した結果、残念ながら給食の質が低下したケースがあることは否めません。単価を下げたことで広域の統一献立が導入され、地域の特産品が活かせなくなったり、献立のマンネリ化や生のフルーツの提供停止などが問題になりました。無償化によって質の低下や食の多様性が損なわれると、食育の本質的な意義を失ってしまう恐れがあります。

また、財源確保も無視できない問題です。無償化を実現するためには膨大な費用が必要です。自治体は新たな財源を確保しなければなりませんし、ほかのサービスの削減や新たな税負担の導入が検討されるでしょう。保護者や有権者には別の形の負担が増える可能性を理解してもらわなければなりません。

給食費の無償化は検討すべき施策ですが、実際には多岐に渡る課題が存在します。質の保持や財政的負担などの課題に対処し、本当に価値がある給食費の無償化を実現するためには、慎重な計画立案と柔軟な対応が求められます。

給食費無償化へ向け社会全体で取り組んでいく意識を

この記事では、千葉県いすみ市をはじめとした各自治体の事例を参考に、小中学校の給食費無償化について解説してまいりました。給食費の無償化は、社会的、経済的、教育的な観点から見ても多岐にわたる影響を及ぼす複雑な課題です。ぜひこの記事を参考にしていただき、お住まいの地域での給食費無料化へのヒントとしていただければ幸いです。

【参考資料】
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/07/__icsFiles/afieldfile/2018/07/27/1407564_001_1.pdf
https://news.livedoor.com/article/detail/23750864/
https://www.city.isumi.lg.jp/soshikikarasagasu/gakkokyoikuka/kyoikusomuhan/4701.html
https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/kosodate/kosodatesite_ohirune/nenreibetsu/kodomo/kyuhukin.html