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小学校35人学級の導入の効果と課題|秋田県の先進事例から学ぶ

作成者: にしのやすひろ|2024/03/27 4:36:12

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2021年から、小学校の全学年で1クラスの定員を35人までとする「35人学級」の導入が段階的に進められています。この記事では、35人学級のメリット・デメリットや実際の成果、課題について詳しく解説していきます。ぜひ最後までお読みいただき、地域の子どもたちの学習環境を考える際の参考としてご活用ください。

35人学級導入の流れ

日本の小学校における学級の定員は、これまで小学1年生のクラスのみ35人を上限としており、2~6年生は40人が上限でした。しかし、2021年3月に改正義務教育標準法が可決され、定員上限が全学年で35人に引き下げられることとなりました。今後は段階的に全国すべての小学校が35人学級に移行していきます。

35人学級のメリット

35人学級では、従来の定員よりも1クラスあたりの生徒数が減少するため、個々の生徒に目が行き届きやすくなり指導に充てられる時間が増えます。生徒がより多く発言する機会が増え授業が活発化されるため、学力向上が期待されています。また生徒が抱える問題の解決が進みやすくなります。

ICT教育が進めやすくなる点も大きな利点です。GIGAスクール構想に基づくICT教育では、端末を活用し個々の生徒に合った指導を実現することが重要です。35人学級では生徒一人ひとりの理解度や学習特性に合わせた指導が可能となり、教員の負担が軽減されます。

また、生徒の様子を把握しやすくなることで、いじめや不登校などの問題に対応しやすくなります。教員が生徒ひとりひとりの変化に気づくことで、早期に問題を発見し適切な対応を行うことが可能になり、生徒の学校生活の質が向上します。

35人学級の導入は、生徒の学力向上や学校生活の充実につながるだけでなく、教員の負担軽減やいじめ・不登校への対応強化にも役立ちます。少人数学級のメリットを最大限に活かし、子どもたちの健やかな成長を支援する取り組みとして期待されています。

35人学級のデメリット

35人学級導入には生徒と教員の両方に利点がある一方で、クラスの人数が減ることで生じるデメリットも存在します。

友人関係の形成は、小学校生活において極めて重要です。しかし35人学級ではクラスの人数が減るため、出会える友人の数も減少します。気の合う友達が同じクラスにいない状況も生まれ、友人作りの機会が制限される可能性があるでしょう。もしクラスメイトが気の合わない人ばかりだった場合、学校が過ごしにくい環境になることが考えられます。

また1クラスあたりの生徒数を減らすため、クラスの数が増えます。空き教室を活用して工夫している学校もありますが、都市部のマンモス校などでは物理的な教室数不足が問題になるでしょう。教室ごとに配備されるICT機器の導入など、新たな備品の準備も考慮されなければなりません。予算の制約もあり、計画的な対応が求められます。

35人学級は教育現場におけるさまざまな利点を提供しますが、クラスの人数が減ることで生じるデメリットも無視できません。教育環境の改善に向けて、学校ごとに異なる問題への対策が求められます。

秋田県の事例 ~教育の質が向上~

秋田県では、公立小中学校の学級を30人程度に制限する「少人数学習推進事業」を、全国に先駆け2001年から開始しました。この政策は、導入から19年間で累計118億6000万円の予算が投じられています。

文部科学省の調査によると、少人数学級を開始した後の秋田県では、正答率が高まっている傾向が見られました。不登校率も全国平均を下回り、この成果を「児童生徒に寄り添った指導がしやすくなった結果」と評価しています。

教員や保護者からのアンケート調査でも、少人数学級の効果が明らかになっています。教員は個別指導が行いやすくなり、子どもたちの学習状況や理解度を把握しやすくなったと報告しています。保護者からも、子どもたちがより活発に発言し、先生との関わりが増しているようだとの声が聞かれました。

児童生徒自身の意識や学習姿勢の変化は、学力にもポジティブな結果をもたらしました。文科省が実施している全国学力・学習状況調査では、2019年度の都道府県別平均正答率で、秋田県は小学校の国語で1位、算数で2位と好成績を残しました。国語や算数の学習に対する好意的な意見が増え、授業内容についてもよく理解できるという回答が得られています。

これらの成果は、少人数学級の導入によって教育の質が向上し、子どもたちの学びや成長にポジティブな影響を与えていることを示しています。秋田県の先進的な少人数学級政策は、教育改革の成功事例として注目されています。

教員の確保が大きな課題

クラスの数が増えることにより、担任を任せる教員の確保が急務となっています。移行期間では、加配定数の教員の振り替えで対応できましたが、今後全学年で35人学級になるとなると、新たな教員を確保することが不可欠になります。

ただ単に教員の採用数を増やすだけでは、教員の質が低下する恐れがあります。教員の質を維持しつつ、全国の35人学級に対応するためには、文部科学省は約13,000人の教員を新たに採用する必要があると試算しています。

しかし、近年の教員志望者は減少傾向にあり、退職する教員も増えているため、実際の現場では経験豊富な教師の不足が問題になっています。保護者としても、新しい教員が増えたところで、「きちんとした指導経験のある先生なのか」「中堅・ベテランの先生が少なくなり、先生の質が落ちるのでは?」という不安を抱くでしょう。

この課題に対処するためには、拘束時間をはじめとした「教員の労働環境改善対策」に取り組まなければなりません。また、若手教員の育成や中堅・ベテラン教員の支援を強化することで、教育の品質を維持しつつ、35人学級に適切に対応していくことが求められます。

35人学級の学習環境改善に期待

この記事では、秋田県の先進事例を参考に、35人学級を導入することによる学習環境の変化を解説してまいりました。子どもたちの学びや成長にポジティブな影響を与えている実例を参考にしていただき、ぜひお住まいの地域のヒントとしていただければ幸いです。

【参考資料】
https://www.mext.go.jp/b_menu/activity/detail/2021/20210331.html
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/084/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2011/07/05/1308080_6.pdf
https://www.mext.go.jp/content/20210517-mxt_zaimu-000014948_11.pdf
https://www.komei.or.jp/komeinews/p139649/