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急速な少子化に高等教育はどう対処する?未来を見据えた施策を解説

作成者: にしのやすひろ|2024/06/10 5:57:09

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少子化の急速な進行が日本社会に深刻な影響を及ぼす中で、未来を見据えた高等教育の在り方が問われています。この記事では、文部科学省が発表した資料【急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方】を基に、高等教育を取り巻く状況、今後の目指すべき姿、現在進められている施策について解説します。ぜひ最後までお読みいただき、少子化に対応した高等教育についての理解を深め、具体的な対策を考える際の参考としてご活用ください。

高等教育を取り巻く状況

近年の高等教育を取り巻く変化

少子化が進む中で、高等教育を取り巻く環境は急激に変化しています。18歳人口の減少に伴い、高等教育機関は入学者の確保に苦労する一方で、教育の質を維持するための新たな取り組みが求められています。18歳人口は1966年の約249万人をピークに大幅に減少し、2023年には約110万人と半減しています。今後も減少が続き、2041年には約79万人になると予測されています​​​​。

経済・産業・雇用の構造変化も、高等教育に対するニーズを大きく変えています。特にIT技術の進展により、デジタルスキルを持つ人材の需要が急増しています​​​​。

学修者本位の教育への転換も重要なテーマです。従来の画一的な教育から脱却し、学生一人ひとりの学びを尊重した教育へとシフトする必要があります。これにより、学生の主体的な学びを促し、社会で即戦力となる人材を育成することが求められています。具体例として、プロジェクトベースの学習や実務経験を重視したカリキュラムが導入されつつあります​​。

コロナ禍を契機とした遠隔教育の普及も、高等教育の在り方を大きく変えました。物理的な制約を超えた学びの場の提供が求められる中で、オンライン授業の質をいかに高めるかが課題となっています。例えば、ハイブリッド型授業の導入やデジタル教材の充実が進められています​​。

これまでの高等教育政策

高等教育政策の歴史を振り返ると、量的拡大に対する計画と規制、大学設置基準の大綱化、設置認可における規制の緩和などが行われてきました。これにより多様な教育プログラムの提供が推進され、教育の質の確保が図られてきました。特に国立大学の法人化や第三者評価の導入は、高等教育の質を向上させるための重要な施策です。

設置認可における規制の緩和により、大学はより自由に教育プログラムを構築できるようになりました。各大学が独自の特色を打ち出し、多様な選択肢を学生に提供しています。国立大学の法人化も、経営の自由度を高め競争力を強化することにつながりました。大学は独自の経営戦略を展開し、教育研究の質を向上させることが求められています。

学修者本位の教育への転換も進んでいます。学生が主体的に学び、実践的なスキルを身につけることを目的とする教育方法であり、問題解決型学習(PBL)やサービスラーニングの導入により、学生が実際の社会課題に取り組む機会を提供しています。個々の学修成果の可視化と評価が進み、学びの質を保証する取り組みが強化されています。

今後の高等教育の目指すべき姿

日本の将来を見据えた高等教育の目指すべき姿は「知の総和」の維持・向上です。これは文理横断・文理融合教育の推進、成長分野を支える人材の育成、流動性に支えられた多様性の確保によって実現されます。

文理横断・文理融合教育の推進は、現代の複雑な社会課題に対応するために不可欠です。例えば、環境問題やエネルギー問題など、科学技術と社会科学の知識が融合することで、より効果的な解決策が見つかる可能性があります。このような教育プログラムを提供することで、学生は多角的な視点から問題に取り組む力を養うことができます​​。

成長分野を支える人材の育成も重要です。AI、ロボティクス、バイオテクノロジーなど、未来の産業を牽引する分野で活躍できる人材を育てるために、専門的な教育プログラムを充実させる必要があります。プログラムには実践的なスキルを習得するためのインターンシップやプロジェクトベースの学習が含まれます。例えば、企業との共同研究プロジェクトを通じて、学生が実際の業務に携わりながら学ぶ機会を提供することが考えられています​​​。

流動性に支えられた多様性の確保も欠かせません。学内外の多様なバックグラウンドを持つ人々と交流し、異なる視点を取り入れることで、創造的なアイデアが生まれやすくなります。留学生の受け入れ拡大や社会人の再教育プログラムの充実が図られており、共同プロジェクトや異文化理解を深めるプログラムを通じて、学生は多様な価値観を学べます​​​​。

高等教育への取り組みの概要

2040年に向けた高等教育のグランドデザイン答申

2018年に策定された「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」答申は、高等教育の未来像を描き、具体的な施策を提示しています。この答申では、学修者本位の教育への転換や教育成果の可視化が重視されており、学生が何を学び、どのようなスキルを身につけたかを明確に示すシステムの導入が推進されています​​。

各大学は独自の強みを活かしつつ、連携と競争を通じて教育の質を向上させることが求められています。例えば大学間でリソースを共有することで、教育の質を高めるとともに、学生に多様な学びの機会を提供することが可能となります。また第三者評価を導入し、教育プログラムの質を客観的に評価・公表することで透明性を確保し、改善点を明確にしています​​。

答申では教育の国際化も強調されています。海外の大学との連携を強化し、グローバルな視点を持った教育プログラムを提供することで、学生が国際的な環境で活躍できる人材に育つことを目指しています。ダブルディグリープログラムや国際共同研究プロジェクトを通じて、学生が海外で学び研究する機会を増やす取り組みが進められています​​。

地域における高等教育の役割

地域密着型教育の推進と産学官連携の強化は重要な課題です。地方自治体と高等教育機関が協力し、地域の特性を活かした教育プログラムを開発することにより、地域社会の発展に寄与します。学生は地元企業でのインターンシップなどを通じて、より実践的なスキルを身につけるなどの恩恵を受けられます。

地域の課題解決に貢献するプロジェクトベースの学習も推進されています。地方創生に関するプロジェクトや、地域の観光振興に関する研究プロジェクトなど、学生が地域の課題に取り組み解決策を提案することで、実践的なスキルを習得し地域社会に貢献します。

地域に根ざした教育は、学生が地域社会とのつながりを強め、地域の発展に寄与する重要な手段です。地方自治体と高等教育機関が連携し、地域のニーズに応じた教育プログラムを提供することで、地域経済の活性化や地域の課題解決に貢献することが期待されます​​​​。

多様な学生の受け入れ

社会人や留学生など多様な学生の受け入れも重要な課題であり、遠隔教育やオンライン授業を活用することで学びの機会を広げます。例えば仕事を続けながら学べる夜間コースやオンラインコースを増やすことで、多様な背景を持つ学生が学びやすい環境を整えます​​。

多様な文化背景を持つ留学生の受け入れ拡大も重要です。日本の学生にとっても貴重な異文化交流の機会となり、グローバルな視野を持つ人材の育成に寄与します。また海外の学生の受け入れは、地理的な制約を超えた学びの場を提供することにもつながります。海外の大学と連携したオンラインコースなどの策定によって、国際的な教育環境を整えることができます​​。

社会人入学者数は、2021年度に約1万9千人(学部段階)と最多人数を記録するなど増加傾向にあり、外国人留学生の受け入れも2019年度に30万人を達成しました。これらの取り組みを通じて、多様な学生が安心して学べる環境を提供し、教育の質をさらに高めていくことが求められます。

現在の経過や進められている施策

高等教育の質保証の強化

認証評価制度の充実や法令違反への厳格な対応を通じて、教育の質を高める取り組みが行われています。定期的な外部評価を通じて教育プログラムの質を評価し、その結果を公表することで透明性と信頼性を確保しています。

高等教育機関は法令の遵守や高い倫理基準を維持することで、学生や社会からの信頼を得ることができているため、研究倫理の遵守や学内ハラスメントの防止に関する取り組みは優先度が高い施策だと言えるでしょう。

また教育プログラムの質を保証するために、教員の研修や評価制度を整備し、教育の質を高めるための取り組みが進められています。定期的な教員研修や教員評価の見直しを通じて、教員の指導力や専門知識の向上が図られています。

財源確保と支援方策

公的支援の強化や民間からの投資促進など、多様な財源確保を通じて、持続可能な高等教育の実現を目指します。例えば企業からの寄付金を活用した奨学金制度を充実させ、経済的に困窮している学生たちも学び続けられる環境を整備します。

大学独自の収入源を確保する取り組みも進められており、産学連携プロジェクトを通じた企業との協力関係の構築や、共同研究、技術移転によって収入を得る事例も増えています。ほかにも大学の施設やリソースを活用したビジネスモデルの開発も進んでおり、キャンパスを地域住民に開放してイベントやセミナーで収入を得る取り組みも行われています。

政府は高等教育の重要性を認識し、予算確保の方法を充実させています。経済的な理由で学びを諦めることなく、誰もが質の高い教育を受けられる環境整備が求められています。

地方の高等教育機関の経営支援

地域格差や金銭的な教育格差を無くしていくためにも、地方の高等教育機関の持続は不可欠です。経営難に陥った学校法人への支援策や地域連携プラットフォームの構築を通じて、地方の教育機関の運営を持続可能にする取り組みが進められています。具体的には、複数の大学が共同で教育プログラムを開発し、資源を共有することで効率的な運営を図るなどの事例があります​​。

地域の企業や自治体と連携し、地域経済を支える人材を育成する取り組みも重要です。地域産業に特化した専門職大学の設立や、地域課題解決型の教育プログラムの開発が進むことで、地域の発展と高等教育の質向上が相互に促進されます​​。

こうした取り組みを支えるため、政府は地方の高等教育機関の重要性を認識し、地方創生交付金を活用した教育プログラムの開発支援や、地方の高等教育機関の再編・統合に対する支援を行っています。これにより、地方の高等教育機関が地域に根ざし、持続可能な運営を続けることが期待されています。

高等教育の在り方への展望

この記事では、急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について解説してきました。文部科学省の資料を基にした高等教育の現状、目指すべき姿、現在進められている施策の解説を通じて、少子化に対応するための具体的な方策を考える一助となれば幸いです。

地方自治体の議員の皆様には、地域の特性に合った柔軟で創造的な政策を立案し、高等教育機関との連携を強化することで、地域の発展に寄与することが求められます。この記事の内容を参考に、地域の未来を支える高等教育の在り方を模索し、質の高い教育を提供し続けるための取り組みに役立てていただければと思います。

【参考資料】
急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた 高等教育の在り方.文部科学省.2024
急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた 高等教育の在り方に関する中間まとめ (素案) .文部科学省.2025