□どうして防災にテクノロジーが必要なの?
□防災にテクノロジーを活用すると、どんなことができるの?
□活用している自治体の事例が知りたい
ここ数年、地震、水害などの自然災害が増えています。
災害時には、自治体は限られたリソースで、速やかな情報収集、正確な情報提供、被災者支援などに対応しなければなりません。
テクノロジーの活用で被災者支援をスピーディに行えます。自治体職員の負担軽減にも有効です。
この記事では防災にテクノロジーを活用するメリットや活用事例をご紹介します。
最後までお読みいただくと、お住まいの自治体でどのように活かせるか参考になりますよ。
防災テックは「防災」と「テクノロジー」をかけ合わせた造語です。防災テックを活用すると、効率的に被災者支援ができます。
例えば、
・避難場所の確保
・災害時の情報収集・提供
・被災した方の生活支援
などですでに活用が始まっています。
久留米市は、福岡県の南西部にあります。
人口約30万人(令和6年1月1日時点)で、福岡市、北九州市に次いで、福岡県で3番目に人口の多い市です。
久留米市ではLINEを使った「久留米市防災チャットボット」を導入(令和4年6月)しています。
市内の災害情報を、リアルタイムでスマホから確認できます。
災害時には市職員、地域役員や消防団が被害の写真とコメントを投稿。情報は地図に反映されて、住民がLINEを通じて確認できます。
このシステム、住民は投稿ができません。
投稿者の情報が住民の安全を守ることにつながる側面もあります。些細なことでも投稿していく体制が求められそうです。
<参考サイト>
●久留米市防災チャットボット
長岡市は新潟県の中央に位置しています。日本海側の沿岸部から山間地まである自然豊かな市です。
人口は新潟市に次いで、県内で2番目に多い約25万8千人(令和6年1月1日時点)。
長岡市では避難所の混雑が一目でわかるシステムを導入。
避難所での感染症拡大を防止し、被災者に安心して避難所を利用してもらうことができます。
平時の地図には、避難所がプロット。災害時には避難所の開設の有無、混雑状況をリアルタイムで表示します。
被災者自身が空いている避難所を探して避難します。
<参考サイト>
●リアルタイム空き情報配信プラットフォーム「VACAN」
南あわじ市は淡路島南部にあります。人口は約4万4千人(令和5年12月末)。
南海トラフ地震では甚大な被害を想定。「災害時に死者ゼロ」を目指し、防災に力を入れています。
南あわじ市では、避難所に来た方の台帳作成を自動化。
避難者は、カードリーダーにマイナンバーカードか運転免許証をおいて情報を読み込ませます。そして、付属しているカメラで顔認証。
避難台帳が自動的に作成されて、同時に誰が被災しているか市が直ぐに把握することができます。
顔認証で自治体の避難所管理の軽減が期待できます。
通常は被災者自身に台帳を書いてもらいます。書いてもらう時間がかかるので、避難所は大混雑。
顔認証を使うと避難所の混雑を避けられ、被災者情報も速やかに収集できます。さらに、自治体職員の負担も減り、その分他にリソースを割くことも可能です。
災害時は着の身着のまま避難することが多いのも事実。
マイナンバーカードや免許証を持たずに避難した方にどう対応するかも、合わせて検討が必要です。
<参考サイト>
●南あわじ市 顔認証
●パナソニック、管理負担を軽減 - 顔認証で避難所受け付け
多賀城市は宮城県の中央にあり、太平洋に面しています。人口約6万2千人(令和6年1月1日)です。
多賀城市では、平時の防災備蓄管理と、災害時の支援物資の要請にデジタルを活用。
備蓄を使うときにQRコードを読み込み、在庫管理します。使った分が業者に発注され、搬入される仕組みです。
データもクラウド上で管理されるので、災害時に役所のパソコン破損やサーバー故障があっても、データが失われることもありません。
住民側では、災害時に必要なものが必要な分、速やかに手元に届く点です。
自治体側では、
・平時の備蓄管理の効率化
・災害時に何がどれだけ使われたか、即時に分かる
・災害時に必要な支援物資を、企業や他の自治体に伝えられる
など。
平時、災害時、どちらにもメリットがあり、自治体職員の業務負担軽減にもつながります。
<参考サイト>
●日本初! 備蓄防災のDX化を実現
●【宮城県多賀城市】防災DXプラットフォーム「B-order」導入で、備蓄品管理・要請分野において日本初の備蓄防災DX化を実現 | プライムバリュー株式会社のプレスリリース
神戸市は兵庫県の南部にあります。人口149万人(令和6年1月現在)。阪神淡路大震災では、神戸市も甚大な被害を受けました。
神戸市では、災害時にFacebookやTwitterといったSNSから、リアルタイムで情報を入手できるシステムを導入しました。
SNSの情報をもとに、自然災害や火事などの情報を地図にプロット。どこで何が起きているかをリアルタイムに確認できます。
災害時には、SNSの情報がデマや誤った情報でないか、AIや24時間対応できる専門家チームで判断します。
SNSは、災害時には情報の宝庫である一方、デマや誤った情報が流れるデメリットがあります。
信頼できる情報を、災害時に最前線で働く職員に提供できるようにしています。
<参考サイト>
●神戸市でAIリアルタイム危機管理情報サービス『Spectee Pro』を導入 ~AIを活用し、SNSから災害時の被害状況を迅速に把握
災害予測、災害時の情報収集や被災者支援にテクノロジーを活用する動きは、国が推し進めている事業でもあります。
●内閣府「防災・減災、国土強靱化新時代の実現のための提言」
デジタル庁や内閣府のホームページでは、サービスを提供する企業名や、企業とのマッチングも紹介されています。
●デジタル庁「防災DXサービスマップ」
「平時」「切迫時」「応急対応」「復旧・復興」の4つのカテゴリーから選べます。
●内閣府「防災×テクノロジー官民連携プラットフォーム」
自治体と民間企業とのマッチングサイトです。
この記事では、防災チャットボット、避難所混雑が分かるデジタルツール、避難所台帳の自動化、備蓄管理のデジタル化、SNSからの情報活用について、5つの自治体の事例をご紹介しました。
防災テックを活用するには、災害にも強いネットワーク環境が必要です。ネットワーク環境を整えると共に、つながらなかった場合も想定した防災プランも想定しなければなりません。
ぜひお住まいの自治体での参考になさってみてください。