「災害が起きたあと、自治体の応急対応で気を付けることは?」
災害が起きたあと、自治体は混乱の中、応急対応に追われます。災害前に「対応は考えてあるから大丈夫」と思っていても、実際は想定外のことが次々発生!さらに実際に災害を経験した自治体でないと分からないこともたくさんあります。
そこで熊本地震を経験した益城町と西原村の事例を通じて、
□災害対策本部設置の留意点
□応援自治体との協力体制
をご紹介します。
災害対応したことがある自治体の事例を知っておくと、万が一お住まいの自治体で災害が発生したとき、応急対応に役立ちます。ぜひ最後までお読みください。
各自治体の災害対策本部は広い場所に設置することがおすすめ。職員、応援職員、自衛隊、消防関係者などの作業スペースや、資材置き場が必要だからです。さらに記者会見を行う場所も考えなくてはなりません。
庁舎の破損で、広い場所が確保できなかった益城町の事例をご紹介します。
益城町は熊本県の中央北寄りにあり、熊本市の東隣りに接しています。そのため熊本市のベッドタウンとして住む方も多い街です。さらに町内には阿蘇くまもと空港があり、交通の重要な拠点にもなっています。人口は3万4千人(令和5年12月時点)です。
熊本地震では、死者(直接死)20名、町全体の98%の家屋で全壊や一部全壊など、甚大な被害が出ました。
益城町の災害対策本部は、2016年4月16日熊本地震の本震で町庁舎が一部破損し、場所を変える必要がありました。
そこで建物が無事だった児童センター1フロアに災害対策本部を設置。100㎡(テニスコート半面程度)の広さで、町職員、消防、自衛隊、応援職員、防災関係機関など60〜100人が業務に当たりました。狭いスペースでは記者会見を行うこともままならない状況でした。
益城町では代替施設も検討していましたが、地震で破損。無事だった建物を緊急的に使用しました。
阪神淡路大震災や東日本大震災でも益城町のような事例がありました。災害で庁舎の破損が起こってしまったら他の広い場所を確保できるよう、考えておくことも大切ですね。
https://www.town.mashiki.lg.jp/kiji0032076/3_2076_16861_up_vtp3ek0o.pdf
https://www.isad.or.jp/pdf/information_provision/information_provision/no127/7p.pdf
災害直後はさまざまな自治体が応援に駆けつけます。しかし応援チームと上手く協力体制がとれるケースとそうでないケースがあります。今回ご紹介する西原村は、連携が上手くとれたケースです。
西原村は、熊本市の中心部から東に約20㎞にあり、棚田や山林など自然豊かな村です。人口は約6900人(令和5年12月)。
熊本地震では、北部の丘陵部で大型のため池が決壊。集落全体に甚大な被害がでるケースがいくつも発生しました。さらに、り災判定調査を行った家屋の約56%が半壊以上の被害を受けました。
西原村には東日本大震災の経験がある宮城県東松島市が応援に入りました。
東松島市のチームが到着して目にしたのは、村役場の課長クラスの職員が、避難所運営、物資運搬、がれき置き場など現場で作業している姿。
「職員を災害対策本部に戻さなければ、混乱は改善されない」。
6つの課の職員を避難所・支援物資など10のチームに再編。さらに避難所を被災者自身の運営に切り替え、職員が災害対策本部の業務に集中できる体制を整えました。
さらに、西原村と東松島市の職員同士が、些細なことでも相談できる体制を整備。その結果、東日本大震災の東松島市の経験を、西原村で大いに生かすことができました。
災害初期の段階で重要なのが、罹災証明発行のための被災家屋被害判定です。罹災証明がなければ、被災者生活支援金の支給や住宅の応急修理が進められないからです。
西原村では、東松島市、名取市、石巻市、佐賀県の支援チームなどと協力して、1か月で2500棟の調査を行いました。5月末時点で罹災証明書の発行はほぼ100%(熊本県全体では47.9%)。スピード調査のおかげで6月中旬から応急仮設住宅への入居手続きを進めることができました。
過去に災害を経験した自治体の経験を上手く取り入れることができれば、膨大な業務を短期間で処理できることがこの事例から分かります。
https://core.ac.uk/download/pdf/196215379.pdf
https://www.vill.nishihara.kumamoto.jp/jisin/list00501.html
https://www.isad.or.jp/pdf/information_provision/information_provision/no127/7p.pdf
災害時の二次被害を最小限におさえるためには、事前のトレーニングや研修が必要です。災害が起きたときに、すぐにできるものではありません。
また、災害経験のある自治体と協力できる体制作りも必要です。災害時100の力が必要な所、協力体制が整わず50の力しか出せない、ということでは被災した住民にさらなる負担をかけることになるからです。
https://www.isad.or.jp/pdf/information_provision/information_provision/no127/7p.pdf
この記事では、災害対策本部の設置場所の留意点、応援自治体との協力体制について、ご紹介しました。
災害時は常に予想外のことが発生します。それぞれの自治体で準備を進めつつ、さらに他の自治体からの協力を効果的に受け入れるための方法も、検討に加えてみてはいかがでしょうか。