「ヤングケアラーへの自治体の支援を知りたい」
ヤングケアラーは社会的な問題です。しかし、子どもたち自身がヤングケアラーであるという自覚が少ないこと、また家庭内の問題であるという認識から、表面化されにくいという問題があります。
子どもたちが学び、友達と遊ぶことは、子どもたちの成長発達に必要なことです。家族の世話でその時間が持てないことは、子どもたちの将来にも影響を及ぼす可能性があります。
この記事では、ヤングケアラーの支援に取り組む2つの自治体の事例をご紹介します。
最後までお読みいただくと、お住いの自治体で活用できるヒントが得られますよ。
ヤングケアラーとは、大人が担う家事や家族の世話などを日常的に行っている、18歳未満の子どもたちのこと。
例えば、
・障害や病気のある家族の代わりに料理、洗濯、掃除など家事全般を行っている。
・働けない親の代わりにアルバイトして、収入を家計に回している。
・病気の家族の身の回りの世話や、看病をしている
・自分より年下の兄弟のお世話をしている
など。
本当なら学校が終わった放課後、勉強や部活、友人と遊びたいところ。ヤングケアラーの子どもたちはその時間を持てないケースも多いです。
子どもたちの中には「それが当たり前」と思っている一方、「どうして私だけ?自分の人生を生きたい」と考える子どももいます。
兵庫県神戸市では令和3年6月に相談・支援窓口を設置しました。
今までヤングケアラーや、学校、地域住民から、「どこに相談したらよいかわからない」という声が上がっていたためです。
相談があれば関係者が連携して介入・支援につなげています。
神戸市では、ヤングケアラーの存在を知ってもらうため、児童・生徒、教員、児童・生徒に関わることがある関係者、地域住民に対し、講演会や研修などを行っています。
子どもがヤングケアラーであることに気が付くこと、また周囲がヤングケアラーの可能性があることに気づくことが支援の第1歩だからです。
ヤングケアラー同士で交流できる場を作っています。
これはヤングケアラーだった子どもたちから、「同じ状況の人と知り合い、話したかった」という声があったからです。
実際に参加した子供たちから、「自分だけじゃない、仲間がいる」「自分の心の整理がついた」「リフレッシュできた」という意見が出ています。
神戸市では相談があったヤングケアラーで、配食支援が必要な家庭に、週1回無料で配食を行っています。
目的は2つあり、
・ヤングケアラーの家事負担を減らすこと
・ケアが必要な家族への福祉サービスの支援につなげること
期間が利用開始から3か月間と決まっているので、その間にサポート体制をしっかりと整える必要があります。
埼玉県入間市では、全国で初めてヤングケアラー支援条例を制定しました。
入間市の杉島市長が埼玉県議会議員時代にヤングケアラーの現状を知り、胸を痛めた経験からできた条例です。
入間市では「本当に救える条例を作ろう」と制定を進めてきました。
2021年7月に市内の小・中・高校生と教員を対象に実態調査を行ったところ、「自身がヤングケアラーだと思う」と答えた割合は、小学生で5.7%、中学生で4.1%、高校生で4.8%いるということが明らかに。
入間市の条例が注目されている理由は、
・学校側にヤングケアラーの早期発見する役割と責任があること
・保護者にも責任があること
が明記されていることです。
ヤングケアラーの難しい点は、保護者の同意が必要なこと。支援が必要というところまで辿り着いても、保護者の同意がなければ、支援にたどり着きません。
今後、さらにヤングケアラー専属のスタッフと関係者を巻き込みながら、それぞれのケースに応じて「一緒に解決していこう」という寄り添った支援を充実させていく予定です。
この記事では、兵庫県神戸市の支援と、埼玉県入間市のヤングケアラー支援条例を紹介しました。
「大切な家族のためだから」
「それが小さい時から当たり前だから」
もちろん、そういった子どもたちの気持ちも尊重しなければなりません。
しかし、中には家族の人生でなく、自分の人生を生きたい子どもたちもいるのです。
学びたいときに学び、遊びたいときに遊ぶ。
当たり前のことがどの子供達でも経験できるよう、これからますます自治体の取り組みが大切になってきそうです。
ぜひ、お住まいの自治体での参考になさってみてください。