issues(イシューズ)の米久です。
カジノを含むIR (統合型リゾート施設:Integrated Resort)を設置するにあたり、観光振興や地域活性化に繋がることなどが期待されています。一方で、治安の悪化や青少年への悪影響、ギャンブルに依存する人の増加、深刻化することなどが懸念点としてあります。
本記事では、IR(統合型リゾート施設)推進法・整備法とは何か、ギャンブル等依存症の課題と施策、自治体独自の回復プログラムなどの取り組みについて詳しくまとめました。
お住まいの地域のギャンブル等依存症対策の参考として、是非最後までご覧いただけますと幸いです。
IR (統合型リゾート施設:Integrated Resort)とは、「カジノ施設及び会議場施設、レクリエーション施設、展示施設、宿泊施設、その他の観光の振興に寄付すると認められる施設が一体となっている施設であって、民間事業者が設置及び運営をするもの」と定義されています。
(引用:大阪府|IR(統合型リゾート)ってなに?)
IR推進法とは、正式名称「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」のことです。海外同様、日本でもカジノを含むIR(統合型リゾート施設)を合法的に設置する際、新しい制度を推進していくための骨組みのような基本法になります。
そして、IR整備法とはIR推進法を円滑に進めるために必要な法律のことです。IR(統合型リゾート施設)の区域制度やカジノ規制、納付金等の具体的な内容を定めています。
(参考元:首相官邸ホームページ)
ギャンブル等依存症とは「ギャンブル等にのめり込んでコントロールできなくなる精神疾患の一つです。」自分の意思ではやめたくてもやめられないため、本人及び家族の日常生活や社会生活に支障が生じる状態に陥ることがあります。
また、多重責務や失業、貧困などの経済問題、うつ病を発症させるなどの健康問題、家族が苦痛を感じるなどの家庭問題にも影響を及ぼし、虐待、自殺、犯罪等の重大な社会問題を引き起こす場合があります。
早期の支援と専門的知識による適切な治療をすることで回復等が十分可能であるにも関わらず、対象者が必要な治療や支援を受けられていないという課題があります。このような問題が起きる原因は、
・医療機関及び相談支援体制が乏しい
・治療を行っている医療機関や相談機関、自助グループ等の支援に関する情報を得にくい
などが考えられます。
また、近年は海外オンラインカジノや、スマートフォンさえあれば公営競技が簡単にできる環境があることから、ギャンブル等依存症の拡大、深刻化する傾向にあります。
ギャンブル等依存症対策の推進に向けた施策として、国及び地方公共団体においては毎年5月14日~20日までは「ギャンブル等依存症問題啓発習慣」を定め、積極的に啓発習慣の趣旨に相応しい活動を実施するよう努めるものとしています。
また、第13条において、都道府県は「都道府県ギャンブル等依存症対策推進計画」の策定を努力義務としています。令和3年9月末時点で21の道府県において既に策定されています。
ギャンブル等依存症を発症、進行及び再発への適切な措置と支援や、依存症に密接に関連する多重責務、貧困、虐待、自殺、犯罪等の施策との有機的連帯の配慮などが基本理念にあります。
【参照元】
IR(統合型リゾート施設)の誘致を進めている大阪府では、全国初となる都道府県計画を策定しました。
ギャンブル等依存症の本人及び家族が日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるよう支援するため、相談支援体制の強化など7つの基本方針と9つの重点施策に沿ってギャンブル等依存症対策を推進しています。
児童・生徒・府民へ依存症に関する正しい知識の普及啓発や、依存症本人だけでなく、その家族等へも支援を充実させるため相談窓口の整備、治療が可能な医療機関の充実を取組みとしています。
また、予防から相談、治療及び回復支援を促進するためOATIS(オーティス|大阪依存症包括支援拠点)を設置しています。OATIS(オーティス|大阪依存症包括支援拠点)とは、予防、相談支援、人材養成及び連携体制の確保などを総合的に行う依存症総合支援センター(大阪府こころの健康総合センター)と、専門治療や研究を行う依存症治療・研究センター(大阪精神医療センター)が、有機的に連帯した依存症対策の総合拠点です。今後も大阪独自の支援体制の推進のため新規事業として(仮称)大阪依存症センターの設置に向けた整備を進めています。
【参照元】
◉「第2期大阪府ギャンブル等依存症対策推進計画」の策定について
北海道苫小牧市では、ギャンブル等依存症に苦しむ本人及び家族等に向けた相談窓口を症状や状況に合わせて設置しています。
うつ病の発症や引きこもりなどこころと体の健康に関する相談窓口や、失業や借金など経済問題に関する相談窓口、ギャンブル研究会への参加についての問い合わせ窓口があります。
ギャンブル研究会(G研)とは、ギャンブルをやめたいのにやめられない人を対象としたギャンブル等依存症を克服したい人達のための会です。月2回と定期的に会を開催し、同じようにギャンブル等で苦しんでいる状況の人と体験の共有をします。精神的安定に繋がることが期待でき、回復に向けた動機を高めることを目的としています。
【参考元】
千葉県ではギャンブル等依存症で悩んでいる本人及び家族、関係機関職員を対象とした専門の相談窓口を設置し、定期的に相談会を実施しています。また、治療回復プログラムCST-G(キャットジー)では、同じ悩みを抱えている仲間とテキストを用いて学び、日常生活及び社会復帰支援を推進しています。
GA(ギャンブラーズ・アノニマス)、ギャマノンなどの自助グループや民間団体との連携を図り、依存症本人とその家族や友人を対象とした支援に繋げるようにしています。また、ギャンブル等依存患者が適切な治療を受けられるよう、依存症専門機関、依存症治療拠点機関を確保し、今後は更に専門医療機関数を充実させる予定で、地域における依存症の医療提供体制の整備を進めています。
【参考元】
平成29年度に、国立研究開発法人日本医療研究開発機構は、国内のギャンブル等依存について調査を実施しました。その結果、調査対象者のうち、過去1年以内にギャンブル等の経験のある「ギャンブル等依存が疑われる者」の割合は成人の0.8%(全国で約70万人)と推計し、また生涯を通じて「ギャンブル等依存が疑われる者」の割合を成人の3.6%(全国で約320万人)と推計しています。一方、厚生労働省の平成29年度の精神保健福祉資料において、ギャンブル等依存症の診断名による外来患者数は3,499人、入院患者数は280人となっています。患者が必要な治療や支援を受けられていない現状が考えられます。(引用:千葉県ギャンブル等依存症対策推進計画)
ギャンブル等依存症は専門的な知識が必要不可欠で、適切な治療を受けることで十分に回復が可能です。治療対象者本人及びそのご家族、支援者への切れ目のない支援体制の構築が必要となります。