issues(イシューズ)の米久です。
2015年、東京都渋谷区と世田谷区がパートナーシップ制度を導入したことを先駆けて、全国各地へと制度の導入が広がりました。
本記事では、パートナーシップ制度の課題を解決した自治体独自の取り組み事例と、制度のメリット・デメリットについて詳しくまとめました。
誰もがジェンダー平等と多様性を理解する社会実現の一歩として、是非最後までお読みいただけますと幸いです。
パートナーシップ制度とは、同性同士の婚姻を法律上認められていない日本で、自治体が独自に性的少数者(LGBT等)のカップルを「婚姻に相当する関係」と認める制度のことです。
対象者はパートナーシップ証明書の取得や宣誓などが受理されることで、日常生活を送る上で様々な手続きがスムーズになることや、多様性への理解が深まることが期待されています。
一方で、法律上の婚姻関係とは異なるため、法的な効力はなく制限される項目がいくつかあります。
パートナーシップ制度のメリットとデメリットは以下の通りです。
※各自治体及び民間サービスによって制度の内容は異なります。
※記載内容は一例です。
・公営住宅などへ家族として入居が可能
・医療機関での付き添いや立ち合い、面会などが可能
・市営墓地の使用継承が可能
・住民票の続柄を「同居人」ではなく「縁故者」に変更可能
・身体障害者等に対する軽自動車税の減免や介護者への給付金支給
・養育里親として登録が可能
・生命保険の受取人にパートナーを指定可能
・パートナーの子どもの親権者にはなれない
・相続、所得税の配偶者控除・扶養控除、遺族年金の給付などは認められない
・自治体により制度が異なるため、受けられる行政サービスにばらつきがある
・自治体をまたいで引っ越した場合、転出元・転入先で新たな手続きが必要になる(近年、都市間連携が広まっているが十分とは言えない)
【参考元】
◉広島市|パートナーシップ宣誓書受領証等の提示により利用可能となる行政サービス等一覧
現在、パートナーシップ制度を導入している自治体は2023年6月28日時点で328自治体で、人口カバー率70.9%となっています。
県単位で制度を導入している自治体は、青森県、秋田県、茨城県、栃木県、群馬県、東京都、
富山県、静岡県、三重県、大阪府、香川県、福岡県、佐賀県などの都府県です。
次に、パートナーシップ制度を導入している自治体の取組み事例をご紹介します。
【参考元】◉全国パートナーシップ制度共同調査
2022年8月、茨城県と佐賀県は「パートナーシップ宣誓制度に関する協定」を全国で初めて締結しました。
自治体をまたいで転居する場合、転出先で交付した証明書や受領書が使用できなくなるため、転入先で新たな手続きが必要でした。手続きの負担は勿論のこと、精神的な負担も伴うことが考えられます。しかし、茨城県と佐賀県が連携体制を実現させたことで、両県間での転居は簡易な手続きで宣誓の効果が有効となりました。
現在は、パートナーシップ宣誓制度の自治体間の連携・相互利用を開始する動きが全国各地で拡充しています。
【参考元】
◉京都市|大阪・兵庫とパートナーシップ宣誓制度の都市間連携を開始
カップルに限定していた制度に加え、全国で初めて子どもや親等の近親者も含む家族の関係を証明をするファミリーシップ制度を導入しました。また、結婚という形を選択しない異性カップルの届出も可能で、戸籍上の性別・ソジー(SOGIE:性的指向、性自認、性表現)は問わないものとしています。
子ども等も家族として行政がその関係性を認め尊重することにより、パートナーや子どもの病状説明や入居手続きなど、家族として生き易い効果を得られることが期待されています。
まだ多くの自治体がパートナーシップ制度の対象者要件を「双方またはいずれか一方が性的マイノリティ(LGBT等)の二人」と限定している中、千葉市では国内初となる性的マイノリティの方々に限定せず、事実婚の異性カップルも含めたパートナーシップ制度を導入しました。
結婚という形を何らかの事情でできない、望まない事実婚の異性カップルは「婚姻に相当する関係」を公的に認められていません。そのため、医療機関での面会や病状説明を受けられないことや、公営住宅に家族として入居できないなど様々な行政・民間サービスを受けることができません。現在は、同性・異性問わずパートナーシップ制度を利用できる自治体が増えています。
【参考元】
本記事では、茨城県と佐賀県、兵庫県明石市、千葉県千葉市の事例をもとに、パートナーシップ制度の取組みについてご紹介しました。
世界経済フォーラムが発表する2021年の「ジェンダーギャップ指数(GGI)」では、日本は156か国中120位でした。2020年は153か国中121位だったので、順位は底辺レベルで停滞しています。(引用:渋谷区|条例啓発用小冊子)
誰もがジェンダー平等で自分らしく生きる権利があります。多様性を認め合い尊重する社会実現の一歩として、本記事がお住まいの自治体のヒントとなれば幸いです。