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不登校対策COCOLOプランとは|背景とポイントを解説

作成者: 米久熊代|2024/04/15 3:29:14

issues(イシューズ)の米久です。

近年、小・中・高等学校の不登校が約30万人に急増し、不登校により十分な学びの場を確保できていない児童生徒が多くいることなどが大きな課題となっています。そこで、文部科学省では学びの保障に向けた不登校対策「COCOLOプラン」を取りまとめました。本記事では、COCOLOプランとは何か、本プランがつくられた背景、本プランの抑えておきたいポイントについて解説します。ぜひ最後までお読みいただき、子どもたちが安心して学びの機会を得られるよう、不登校・いじめ対策の参考にしていただけますと幸いです。

COCOLOプランがつくられた背景

平成29年に施行された「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」等に基づき、不登校児童生徒の支援について取り組んできましたが、不登校の児童生徒数は増加し続けています。

令和3年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」では不登校児童生徒数(小中高)が約30万人と過去最多となり、90日以上の不登校であるにもかかわらず、学校内外の専門機関等で相談・指導を受けていない小中学生は約4.6万人に上ることが分かりました。

こうした背景から、文部科学省では、永岡文部科学大臣の下、「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策」(COCOLOプラン)を取りまとめました。

 

COCOLOプランとは?実現に向けた3つの目標

誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策「COCOLOプラン」とは、不登校により学びにアクセスできない子供たちをゼロにするための取り組みで、実現に向けて下記3つについて推進します。

 

①不登校の児童生徒全ての学びの場を確保し、学びたいと思った時に学べる環境を整える

仮に不登校になったとしても、小・中・高等学校を通じて、学びたいと思ったときに多様な学びにつながることができるよう、個々のニーズに応じた受け皿の整備を目指します。

■学びの多様化学校(不登校特例校)設置の促進

通常の学校より授業時間数が少ないなど、不登校児童生徒の実態に配慮し、カリキュラムを柔軟に組むことができる学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)の設置促進を行います。令和5年2月時点で、不登校特例校の設置をしていないが設置を検討している市町村は379校ありますが、実際の設置は全国21校に留まっています。早期に全ての都道府県・指定都市に、将来的には分教室型も含め全国300校を目指します。

■校内教育支援センター(スペシャルサポートルーム等)の設置促進

不登校児童生徒や、登校ができても自分の教室に入りづらい児童生徒が、落ち着いた空間の中で自分のペースで学習・生活できる環境を、空き教室や空いているスペースを利用する等して設置します。令和5年2月時点で、校内教育支援センター(スペシャルサポートルーム等)の設置をしている学校がある市町村は1015に対し、全ての学校に設置している市町村は228に留まっています。

■教育支援センターの機能強化

教育支援センターでは、不登校児童生徒本人への支援に加え、その保護者が必要とする相談場所などの情報提供や、子供たちが様々な学びの場や居場所につながることができるよう、教育支援センターが地域の拠点となり必要な支援等を届けます。また、不登校児童生徒への知見や実績のあるNPOやフリースクール等との連携を強化することも重要としています。

■高等学校等における柔軟で質の高い学びの保障

不登校の生徒も学びを続けて卒業することができるような学び方を可能とします。また、中学校のよう学校でスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーに相談ができず支援が途切れてしまう状況を踏まえ、各都道府県においては、電話・SNS 等を活用した相談事業や、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーのオンラインを活用した支援が求められます。

■多様な学びの場、居場所の確保

不登校の児童生徒の多様な学び場として夜間中学校のほか、公民館、図書館等も活用します。また、1人1台端末を用いて、自宅をはじめとする様々な場所での学習を成績評価に反映することが望ましいとしています。

 

②心の小さなSOSを見逃さず、「チーム学校」で支援する

不登校になる前に「チーム学校」による支援を行うため、1人1台端末を活用して児童生徒が出している小さなSOSの早期発見と、その保護者への支援を実施します。

■1人1台端末を活用した心や体調の変化の早期発見を推進 

健康観察にICTを活用します。また、子供やその保護者が相談したいときにワンタッチで教師やスクールカウンセラーにつながることができます。令和5年2月時点で、アプリ等を用いた把握を行っている市町村は全国で411、今後アプリ等の活用を検討している市町村は580となっています。

■「チーム学校」による早期支援を推進

教師やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、養護教諭、学校医等が専門性を発揮して連携することで最適な支援につなげます。また、こども家庭庁とも連携し、福祉部局と教育委員会の連携を強化するなどして、子供たちと保護者を包括的に支援します。

■一人で悩みを抱え込まないよう保護者を支援

不登校児童生徒の早期支援のため、その保護者が悩みを抱えて孤立せず、適切な情報や支援を得られるように各教育委員会の相談窓口の整備や、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーが関係機関と連携し保護者を支援します。

 

➂学校の風土の「見える化」を通して、学校を「みんなが安心して学べる」場所にする

子供たちの声を大事にしながら学校の風土を「見える化」して、関係者が共通認識を持って取り組めるようにすることで、みんなが安心して学べる場所を目指します。

■学校の風土を「見える化」

学校の風土と欠席日数の関連を示す研究データもあります。児童生徒の授業への満足度や教職員への信頼感、安心して学校生活を送れるかなど風土等を把握するためのツールを整理し、全国へ提示します。

■学校で過ごす時間の中で最も長い「授業」を改善

1人1台端末を活用した子供たちの学習進捗や興味・関心等に応じた指導など、子供たちの特性に合った柔軟な学びの実現を目指します。

■いじめ等の問題行動に対する毅然とした対応の徹底

いじめや校内暴力等の問題行動には、毅然とした対応を徹底するとともに、犯罪行為があった場合は直ちに警察に、相談・通報する体制を構築します。

■児童生徒が主体的に参画した校則等の見直しの推進

校則のHPへの公表、学校のルール作り等へ、児童生徒が主体的に参加できるように目指します。

■快適で温かみのある学校環境整備

児童生徒が明日また学校に行きたいと思えるよう、学校施設全体を学びの場として捉えた魅力ある環境の整備をします。

■学校を、障害や国籍言語等の違いに関わらず、共生社会を学ぶ場に

障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に充実した時間を過ごすための条件や学びの場を整備するとともに、障害のある子を学校全体で支えることを目指します。また、外国籍の子供等が長所等の可能性を発揮できるよう、共に学び合える環境を整備します。

◉文部科学省|COCOLOプラン

 

COCOLOプランのポイントは?

不登校の児童生徒を対象にした対策計画「COCOLOプラン」のポイントは、学校に行けるようにするなど不登校自体を改善することではなく、「学びの保障」にあります。一人一人の児童生徒が不登校になった原因や、学びの状況を分析、把握し、個々に応じた多様な対応を可能にすることが求められます。

また、教師やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、養護教諭、学校医等の専門性を持つ教員が一つのチームとして児童生徒への支援を行うとともに、ノウハウのあるNPOやフリースクールなど、外部とも連携した不登校対策を社会全体で強化することが必要です。そして、不登校の児童生徒と一番関わりのある「学校」の働き方改革を促進することもポイントの一つとなります。教職員不足の改善や学校DXの促進、業務の役割分担や適性化などの働き方改革の促進により、教師が子供に接する時間の確保を目指します。

※学校DXとは、デジタル技術を活用して、教育のあり方や教職員の業務等を変革するとともに、デジタル社会に対応した教育を確立させることです。リモート授業や教員研修、連絡帳や学校だより、欠席届等のクラウド化など働き方改革にもつながります。

 

社会全体で全ての子供たちへ多様な学びの場を支援

本記事では、不登校により学びにアクセスできない子供たちをゼロにするための取り組み「COCOLOプラン」がつくられた背景、実現するための目標3つ、抑えておきたいポイントについて解説しました。

不登校・いじめ緊急パッケージによると、令和4年の不登校児童生徒数は小中学校だけで約30万人、学校内外の専門機関等で相談・指導等を受けていない小中学生は約11万4千人といずれも過去最多で増加の一途を辿っています。また、いじめ認知件数は約68万2千件を記録し、いじめ重大事態の発生件数も923件といずれも過去最多となっています。改善に向け、関係者との密な連携は必要不可欠であり、社会全体で支援を整備させていくことが求められます。