issues(イシューズ)の米久です。
世界で類を見ない少子高齢化社会に突入している日本。体の不調が出やすい多くの高齢者は通院を必要としていますが、1人での通院が困難な人や、体力消耗による体調悪化などにつながってしまうリスクがあります。そのため高齢者の通院サポートは、超高齢化社会における日本では重要な支援の一つです。本記事では、改めて確認したい通院サポートとは何か、高齢化社会における通院サポートの必要性や課題、自治体3つの好事例についてまとめました。ぜひ最後までお読みいただき、超高齢化社会が進む現代の支援として参考にしていただけますと幸いです。
通院サポート(いわゆる通院介助や病院付き添い)とは、1人で病院へ通うことが困難な高齢者をお手伝いすることを指します。通院にかかる移動の介助や通院先での受付手続き、薬の受け取りなどが含まれます。通院介助・病院付き添いを利用する場合、要介護1~5と認定されていることが条件となり、介護保険制度の適用対象となります。
日本の65歳以上の高齢者数は、2025年には3,657万人となり、2042年には3,878万人とピークを迎え、世帯主が65歳以上の単独世帯や夫婦のみの世帯が増加していくと予測されています。超高齢化社会が進む現在、年齢とともに病気やけがで医療機関等へ通う割合は高くなり、65歳以上では過半数の高齢者が通院を余儀なくされています。また、要介護者は介助なしには外出できない割合が高く、要支援者においても外出時の介助を必要としている高齢者は年齢とともに上がるため通院サポートの必要性も必然的に高くなります。
また、介護する家族の負担を軽減させるためにも通院サポートは重要です。政府は「できる限り、住み慣れた地域で必要な医療・介護サービスを受けつつ、安心して自分らしい生活を実現できる社会を目指す」とし、在宅医療・介護を推進する動きが強まっている中、高齢者を介護する家族の身体的、精神的な負担を軽減するための手段の一つとして、通院サポートは必要不可欠な取組となります。
在宅医療その1|厚生労働省
在宅医療・介護の推進について|厚生労働省
病院内の移動や排泄等の介助は、病院のスタッフが行うのが原則としている市町村が多いため、病院内の介護は介護保険の対象外(実費)です。さらに、診察や会計などの待合室での待機時間や入退院時の対応なども介護保険の対象となりません。(ケースによって異なる場合もある)このように、通院介助と言っても、介護保険の対象となる支援内容や適用範囲には自治体によって差があり、対応が分かれているのが実情です。
通院サポート(通院介助・病院内介助)の好事例として、栃木県足利市、東京都奥多摩市、東京都目黒区の3自治体の取組をご紹介します。
栃木県足利市では「高齢者暮らしのお手伝い事業」を行っています。日常生活での援助が必要な高齢者を対象に、シルバー人材制度を利用して生活の支援を行います。サービス内容は、掃除、洗濯、買い物、調理、外出の付き添い等、身の回りの援助から、庭掃除や大掃除、引っ越し荷まとめ、通院介助・院内介助など介護保険にはない家事援助、身体介助も含まれます。
利用者負担は事業経費の1割、利用限度額は1世帯10,000円(月額)となり、超えた場合は実費になります。
利用対象者は、市内に居住する65歳以上の在宅の高齢者で、日常生活上の援助が必要な人であって、次のいずれかに該当する市民税非課税世帯に属する市民としています。
・ひとり暮らしの人
・高齢者のみの世帯及びこれに準ずる世帯に属する人
東京都奥多摩市では、65歳以上の在宅高齢者で、医療機関への通院が困難な人を対象に町内の医療機関への通院送迎サービス「外出支援サービス」を行っています。
社会福祉協議会が運行する10人乗りワゴン車で、利用者の自宅前から町内の指定医療機関や歯科へ通院のため送り迎えを無料で実施。利用対象者は、「おおむね65歳以上の高齢者で、身体上の理由や居住地近辺に公共交通機関がない等の理由により、医療機関への定期的通院が困難な在宅高齢者」としています。
東京都目黒区では「高齢者病院内介助助成事業」を行っています。介護保険制度では対象外となってしまう病院内での介助や医療機関での待機時間におけるヘルパー利用を、要介護状態にある人だけでなく要支援1から2の認定を受けている高齢者に対しても費用の一部を助成します。
助成内容は、30分1,000円まで、かつ月4,000円までを助成。(介護保険の給付対象となる部分は除く)
利用対象者は、以下の要件をすべて満たす者としています。
・ひとりぐらし等高齢者登録をしている
・家族が就労・就学等の理由により支援することが出来ない
・介護保険の要介護1から5、または要支援1から2の認定を受けている方でケアプランに病院内での介助が計画されている
・心身の疾患により、医療機関受診時の待機、移動に介助・見守りが必要である
※いずれも他の法令等による同等のサービスを受けられる場合は対象外
来年2025年はすべての団塊の世代が75歳となり要介護者が増え、通院サポートを必要とする高齢者やその家族の割合は上がると見られます。老々介護問題や育児と介護の両方を同時に担うダブルケア問題、夫婦のいる世帯で共働きは約7割に達するなど、育児や仕事の両立をしながら高齢者の通院サポートをすることは何かしらの支援なしには非常に難しい問題だと言えます。本記事の事例をヒントに、地域における高齢者の通院サポートサービスの参考となれば幸いです。