児童虐待の解決をサポート~児童相談所におけるAI活用事例~
issuesの高松です!
「児童相談所でのAI活用事例を知りたい」
児童相談所では、子どもの虐待事例の相談が年々増加。一方で、児童相談所の職員は、ベテラン職員の退職などで経験豊富な人員が不足している状況があります。
この記事では、一時保護の判断にAIを活用している三重県と静岡県静岡市の実証実験の事例をご紹介します。
子どもの虐待は年々増加傾向
令和4年度中に全国232か所の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は約22万件で、過去最多を記録しました。
令和3年度と比較しても、約11,500件(前年比+5.5%)の増加です。
特に多いのは、
・心理的虐待に係る相談対応件数
令和3年度は12万5千件だったものが、令和4年度には12万9千件と+4000件
・警察等からの通告の増加
令和3年度は約10万件だったものが、令和4年度には約11万件と+1万件
虐待件数の増加に対応する児童相談所職員の負担は大きいのが現状です。
令和4年度 児童相談所における児童虐待相談対応件数(速報値)│子ども家庭庁 2023
経験が浅い職員をサポートするAI
児童相談所は全国の都道府県などに設置され、現在約230の施設があります。
児童相談所に虐待通告があれば、原則48時間以内に子どもの安全を直接確認しなくてはいけません。そして調査を行って、子どもを親から引き離す一時保護が必要かどうか判断します。
この一時保護、経験豊富な職員であれば判断できますが、経験が浅い職員には負担が大きい業務です。
そこで経験が浅い職員の判断の手助けになるよう、一時保護の判断のサポートにAIを取り入れる自治体が出てきています。
【三重県】いち早く一時保護の判断にAIを活用
三重県ではいち早く、一時保護の判断の質の維持・向上のためにAIを導入しました。
三重県では、2012年に子どもが命を落とす虐待が2件起こりました。それらの虐待を児童相談所は把握していたけれど、積極的な介入につなげられなかったという反省がありました。
そこで三重県では、2014年から子どもの保護を早急に行えるよう「リスクアセスメントシート」を導入しています。
増え続ける児童虐待相談への対応と、経験が浅い職員が一時保護を判断するサポートに、2020年7月からは全国に先駆けてAIを導入しました。
三重県で書かれた1万件以上のリスクアセスメントデータをAIに蓄積し判断していきます。
AIはあくまで「サポート」役
AIはあくまでツール。最終的に判断するのは児童相談所の職員です。
2023年、4歳の女の子が虐待で命を落としました。その時に活用したAIでは、一時保護率は39%と出てきました。
AIであざや傷の箇所のデータは蓄積されていても、生い立ちなどを判断することは難しく、最終的には職員の判断が必要になることが明確になりました。
三重県におけるAIを活用した児童虐待支援システムの導入について│厚生労働省
【静岡県静岡市】児童相談所にAIを活用する実証実験
静岡県静岡市では、2022年12月~2023年3月にかけて児童相談所の業務にAIを活用する実証実験を行いました。
児童相談所で蓄積してきたアセスメントデータに、ベテラン職員の知見とノウハウを結び付け、AIに学習させます。
児童虐待対応の連絡が入った時、調査する時、対応する時と3つフェーズで、過去類似事例やベテラン職員からのアドバイスなどの情報が得られます。
これによって経験の浅い職員でもベテラン職員のようにアセスメントができます。
実証実験の結果で対応の質が54%向上という結果も。2024年4月から本格導入が始まっています。
NEC、AI活用により児童相談所の業務負荷を軽減するシステムを静岡市と構築│NEC 2023
AIのアシストで児童虐待解決をスピードアップ
この記事では、三重県の児童相談所でのAI活用事例、静岡県静岡市での実証実験をご紹介しました。
全国の自治体での導入に向けて、国も動いています。
あくまでもAIは業務のアシストです。AIを活用しつつ、児童相談所の職員確保や人材育成も同時に進めていく必要があります。
ぜひお住まいの自治体での参考になさってみてください。