自治体SNSの成功事例・失敗事例から見る効果的な発信戦略
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自治体における効果的な情報発信手段として、SNS運用が一つの鍵になることは間違いありません。しかし、大きな成果が期待できる一方で、炎上による風評被害に懸念を感じる方も多いのではないでしょうか。この記事では、各自治体のSNS利用における成功と失敗の事例を紹介し、効果的な運用方法について考察します。ぜひ最後までお読みいただき、お住まいの自治体SNS活用におけるより効果的な戦略構築のヒントとしてご活用ください。
自治体のSNS活用【成功事例】
自治体のSNS活用は、地域の魅力を発信する手段として注目を集めています。以下では、高知県、沖縄県渡名喜村、山梨県甲府市、そして宮崎県小林市の各自治体が、独自の戦略を駆使してSNSを活用し、驚異的な成果を上げた事例を紹介します。
高知県の事例 ~フォロワー数が10倍に~
高知県がSNSを活用し、フォロワー数を10倍に増やした成功事例を紹介します。2019年に実施された「リョーマの休日 #一生忘れられない高知旅行 ぷち体験キャンペーン」では、観光需要の拡大を目指し、10日間にわたり高知旅行のダイジェスト動画を毎日配信しました。
キャンペーンに参加し、フォロー&リツイートを行った人々の中から100名に「高知県産品が購入できるオンラインクーポン」がプレゼントされる企画も同時に実施。このキャンペーンにより、フォロワー数は10倍にあたる1万8,000人に増加しました。また、応募数は74,000件以上に達しました。
この取り組みによって、SNSフォロワーの約33%が実際に高知県を訪れたと報告しています。さらに、この取り組みはXユーザー全体を巻き込み、高知に対する興味関心を高めるだけでなく、拡散性と話題性を高めることにも成功しました。
実際、多くのユーザーからは「高知に行ったことがなかったが、動画をきっかけに行きたくなった」「自然体験は子どもも大人も楽しめそう」といった感想が寄せられ、高知の魅力を広く知らしめることに成功しました。
沖縄県渡名喜村の事例 ~フォロワー数人口比率全国1位~
沖縄県渡名喜村は、日本で2番目に小さい自治体です。その人口はわずか350名程度ですが、驚くべきことに2024年4月時点でのFacebookのフォロワー数は9,741人。これは人口比で見て全国1位の数字です。
この成功の秘訣は、地域おこし協力隊として活動するメンバーたちの努力によるもの。彼らは地域の情報収集に力を入れ、平日はほぼ毎日記事を投稿し更新するなど、SNSを精力的に活用しています。
投稿内容は、海や山の美しい景色、地元の行事や特産品などの紹介と一般的なものです。しかし彼らは積極的な情報発信だけでなく、フォロワーとの双方向のコミュニケーションに注力しました。Facebookの投稿に寄せられるコメントには丁寧に返信し、コミュニティ内の絆を深めています。
渡名喜村の投稿からは地域の魅力だけでなく、温かいコミュニティの雰囲気も伝わってきます。島民の生活や美しい景色を通じて、渡名喜村の魅力が多くの人々に伝わり、フォロワー数の増加につながりました。渡名喜村の成功事例は、小さな地域でもSNSを活用すれば大きな成果を上げられることを示しています。
山梨県甲府市の事例 ~インフルエンサーとのタイアップ~
甲府市にはもともと、市の公式XやFacebookがあったものの、活用が十分ではありませんでした。市は公式アカウントでの情報発信に限界を感じ、若年層に魅力を広く知ってもらいたいという考えからインフルエンサーとの連携を試みました。
インフルエンサーに市の職員が同行し、市内を訪れて楽しい体験を投稿することで効果的なPR活動を展開。投稿では、甲府市の観光スポットや日帰りでの楽しみ方、東京からのアクセスのしやすさなどがわかりやすく伝えられ、幅広い層にアピールされました。
その結果、タイアップ投稿は650件以上のいいねを獲得し、これまで届かなかったユーザーへのリーチが拡大。インフルエンサーの個人的な視点からの発信は、堅苦しさのない観光PRにつながりました。
高い質の投稿は広く拡散され、フォロワー数の7倍ものインプレッションを獲得し、ブックマーク数も3,500件以上という大きな成果が得られました。費用対効果も高く、施策から1年近くたった今でも検索の上位に投稿が表示されています。
宮崎県小林市 ~動画配信で広告効果10億円~
宮崎県小林市は、YouTubeを活用した地域のPRにおいて驚異的な成功を収めています。『ンダモシタン小林』と題された動画は、主人公のフランス人男性が小林市をPRしているという内容。しかし彼が話していた言葉はフランス語ではなく、地元の方言である「西諸弁」だったという斬新なアプローチで注目を集めました。
この動画は2015年に投稿されて以来、2024年4月現在で327万回以上再生されるほどの人気を誇ります。その魅力は表現の面白さだけでなく、地元の美しい風景やPRコンテンツとしての完成度も高い点にあります。2016年には全国広報コンクールの映像部門で入賞し、小林市への移住相談件数は実に4.5倍に増加しました。
この動画の広告効果は10億円以上に達したと言われており、自治体がYouTube動画を活用した成功事例の先駆けとして大きな示唆を与えています。
自治体のSNS活用【失敗事例】
自治体のSNS活用には失敗事例もあり、特に注目されるのが広島県と沖縄県中城村の例です。以下ではそれぞれの失敗事例を通じて、その背景や教訓について探ります。
広島県の事例 ~無意識の偏見~
広島県が作成した「働く女性応援よくばりハンドブック」は、本来、女性の働き方や支援制度を理解しやすく伝えることを目指して作られました。しかし、SNSで冊子の内容を発信したところ、男性に対する無意識の偏見が含まれているとして批判を浴びてしまいました。
例えば、「夜泣きがうるさくても我慢してるし、多少は手伝っているんだから、勘弁してほしいな…」という男性の発言があり、男性=子育てに他人ごとという印象を与えました。性別による役割分担意識を強化する恐れがあります。
冊子を作成した「県働き方改革推進・働く女性応援課」の過半数は女性職員であり、子育て中の職員もいながら、該当する表現について議論に上がることはありませんでした。この出来事から、無意識の偏見に自覚的になり、多様な視点や意見を取り入れることの重要性が浮き彫りになりました。
沖縄県中城村の事例 ~差別・搾取を連想~
中城村は、架空のキャラクター「琉花」を活用して村の魅力を発信しようとしましたが、Xの投稿で「#私の容姿が性癖に刺さる人に届いて欲しい」というハッシュタグを使用したことで、多くの人々から非難を浴びてしまいました。
この投稿は外部委託業者によって行われたものであり、県の担当者が直接行ったものではありませんが、中城村は多くの批判にさらされ、謝罪と投稿の削除に追われました。また、委託金には交付金が使用されていたため、「税金の無駄遣い」としても非難の的となりました。
この事例から、特に「萌え」要素を取り入れたPRは一歩間違えれば炎上につながるリスクがあることが明らかになりました。現代社会では、差別に対する厳しい目が向けられており、女性蔑視などの内容は即座に批判の対象になります。
差別や搾取といったイメージを連想させる表現は、行政の信頼を損なうだけでなく、地域全体のイメージにも影響を与えかねません。自治体がSNS戦略にキャラクターを起用する場合は、慎重かつ適切に内容を検討することが不可欠です。
事例をもとに効果的なSNS戦略を構築しよう
この記事では、各自治体がSNSをどのように活用しているか、成功と失敗の事例を通じて解説してきました。これらの先行事例を参考にし、お住まいの地域に適したSNS戦略を構築する際のヒントとしてご活用いただければ幸いです。SNSは情報発信の強力な手段であり、有効に活用することで内外に対する地域価値を高められます。ぜひお住まいの自治体のSNS活用においてより効果的な戦略を構築できるよう、この記事を参考にしていただければ幸いです。
【参考資料】
https://www.jiam.jp/journal/pdf/a6be61d23314e9d78fe66f875c56bcfb8d54efaa.pdf
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/850205
https://www.comnico.jp/news/kochi-kanko-sns-support-twitter-campaign
https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/434167/041800105/
https://service.liddell.tokyo/case/1131/