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絶対おさえておきたい災害時のトイレ問題

issuesの高松です。

「自治体の防災トイレ計画を見直したい」
「災害時にはどんなトイレ問題があるのか知りたい」

能登半島地震で、現地のトイレ問題が報道されています。断水が長期化するエリアは大変な苦労の中、毎日を過ごされています。

災害時のトイレ問題は避難生活における【最重要課題】です。平時からの備えが災害時に役に立ちます。

この記事では、災害時になぜトイレ問題の解決が必要なのか、自治体としてどのような備えがあればよいのかをご紹介します。

最後までお読みいただくと、自治体の防災トイレ計画のヒントが得られますよ。

 

災害時の最優先事項は「トイレの確保」
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避難所で最初に準備すべきは「トイレ」

災害が起こったとき、避難所運営で大切なことは何だと思いますか?

避難者の誘導や安否確認、水や食料の配布‥などいろいろ思いつきますよね。

災害時の最優先事項は「トイレの確保」です。

トイレ研究所が行った調査では、災害後3時間以内にトイレに行きたいと思った方は31%6時間で67%というアンケート結果があります。

半数以上の方が、6時間以内にはトイレに行くということです。

<参考サイト>

●災害時のトイレ、どうする?


災害時には水洗トイレは「使えない」


大きな災害後、避難所の水洗トイレは「使えない」ことが多いです。

トイレの外観は変わっていなくても、見えない部分で断水・下水管の破損があるからです。

もしそれに気が付かずに、避難住民がトイレを使ってしまったら‥そのあとのトイレは大変なことになりますよね。

だから、トイレの準備が大切になるのです。

<参考サイト>

●避難所における トイレの確保・管理ガイドライン


トイレは命に関わります

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トイレ問題は命に直結します。

避難住民がトイレが整っていない、トイレが汚いと感じると、「トイレに行かなくていいように水分を控える」人が出てきます。

水分が不足すると、脱水、便秘、脳梗塞、心筋梗塞や深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)などのリスクが高くなり、体調を崩しやすくなります。最悪の場合、命を落とすことも。

またトイレに行きたくても我慢すると、膀胱炎や腎盂腎炎にもつながります。

災害が起きたときは、病院へのアクセスが悪くなったり、平時と医療の提供内容がかわったりします。最悪の場合治療が遅れてしまう、ということも発生するのです。

災害時でもトイレに行きやすい環境を整えることが、住民の命を守ることにつながります。


どのくらいトイレの備蓄があればいい?

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災害時に必要とされるトイレの量は、
災害発生当初は、避難者約50人に1基
・避難が長期化するときには避難者約20人に1基
と目安が決められています(「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」内閣府(防災担当)2016年)。

備蓄を進めている自治体がほとんどですが、実際には、40%の自治体で不足する見込みが。

徳島県東京都江戸川区など、災害トイレ計画を策定して、備蓄を見直している自治体もあります。

<参考サイト>

●災害時のトイレの備えに関するアンケート 調査

自治体で用意しているトイレいろいろ

簡易トイレ
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多くの避難所に備蓄してある簡易トイレ。トイレの便器に設置して使うタイプと、組み立て式の簡易トイレの場合があります。

メリットは、災害直後からすぐに使えて、断水でもOK。限られたスペースで枚数多く保管できます。

デメリットは、排泄物の入った使用済み袋の保管場所、使用済み袋のにおい対策や回収方法があげられます。


仮設トイレ
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イベントや工事現場などで目にすることが多い仮設トイレ。便槽に貯めておくタイプと、マンホールに直結して下水道に流すタイプがあります。

電気がなくても使えるタイプなら、停電でも使えます。

メリットは、流通している数が多いので調達しやすい点

デメリットは、トラックで運ばなければ行けないため、災害直後からすぐに使えるわけではないこと。また、道路状況によっては到着が遅れることがあります。

マンホールトイレ
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下水道管路にあるマンホールの上に、便座やパネルをおいて、災害が起こったときすぐにトイレが準備できます。貯留できるタイプと、下水道管直結のタイプがあります。

東日本大震災では宮城県東松島市、熊本地震では熊本県熊本市で活躍しました。

<参考サイト>
●下水道:災害時に使えるトイレ - 国土交通省

トイレトレーラー

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トイレトレーラーは災害時を想定して作られた移動設置式のトイレです。3人〜4人分のトイレ個室があり、バリアフリートイレも完備しています。災害時以外にも、人が集まるお祭りなどでも活用されています。

トイレトレーラーのメリットは建物近くに停められること。足が不自由な方も避難施設のすぐ近くにトイレがあれば、行くことをためらうこともなくなります。

静岡県富士市は全国で最初にトイレトレーラーを導入した自治体です。クラウドファンディングを活用して購入しました。

能登半島地震でも、富士市のトイレトレーラーは活躍中です。断水の地域でトイレを提供しています。

<参考サイト>

●トイレトレーラーを全国で最初に導入した静岡県富士市の事例

●運用実績

なぜ複数種類のトイレが必要なのか?

自治体では複数の防災トイレを備える必要があります。

理由は3つあります。

1つ目は災害によって使えるトイレが変わるからです。

例えば、マンホールトイレ。下水道管に直結しているタイプは、下水道管破損があれば使うことができません。簡易トイレや仮設トイレなど他の方法を活用することになります。

2つ目はトイレの準備にかかる時間です。

例えば、簡易トイレであればすぐに使用できます。しかし、仮設トイレやトイレトレーラ―は運ぶ時間、マンホールトイレは設置のための時間が必要です。

3つ目は長期的な運用です。

簡易トイレはあくまで緊急時の対応。通常のトイレ環境とは違うので、使いにくさもあります。

一方でマンホールトイレであれば、通常のトイレに近い状態で使用できて、避難者のストレスも軽くなります。

さまざまな観点から、複数種類のトイレを備えることがおすすめです。

 

災害が起きたときこそきれいなトイレが必要


この記事では、避難所で最初にトイレを準備する必要がある理由、備蓄の目安、さまざまな種類のトイレの備蓄が必要な理由をご紹介しました。

災害がおきたときこそトイレをきれいにする必要があります。1つは避難所の衛生環境や避難者の健康の観点から。

もう1点は、避難所で過ごす被災者が唯一、1人でリラックスできるのがトイレの個室。気持ちを落ち着けたいときに、トイレがきれいでなければ、気持ちもリラックス出来ませんよね。

ぜひお住まいの自治体で、災害トイレ計画の参考になさってみてください。