自治体における病児保育の取り組みについて
こんにちは!issues(イシューズ)高橋です。今日は先日、意見交換会でも取り上げた病児保育について調べていきたいと思います。
病児保育事業とは何?
子どものいる保護者が就労している場合において、子どもが病気の際に病院・保育所等において一時的に保育を行う事業のことです。これにより安心して子育てができる環境の整備を図ることができるとともに、地域の保育所等への情報提供や巡回支援などを実施するなど専門性を活かした地域支援にも取り組むことができます。
課題
しかし、課題もあり事業の特性として突然の利用キャンセルにより事業運営の見通しが立てづらい点があります。理由としては子どもの病気の回復や感染症の流行などで病児保育室を利用する・しないが決まってくるためです。また病児保育がない自治体もあります。
厚生労働省の調査によると、2020年時点で全国の約2割の自治体に病児保育施設がありませんでした。特に人口の少ない町村部では設置が難しい状況です。
国・自治体としての対策
そのため厚生労働省では2021年度予算において、安定的な提供体制を確保できるよう補助の仕組みの見直しを行っております。具体的には利用児童数の変動によらない基本分単価の引き上げを行いました。これにより提供体制の安定的な確保に繋がっているものと考えられます。
一方で基本分単価を引き上げたことに伴い、加算単価の引き下げが行われており、利用児童数の規模によっては引き下げの影響を受けている可能性もあると考えられています。また、国庫補助基準額とは異なるルールにより委託料や補助金等を病児保育施設に支払っているところもあります。その理由・背景を見ると「利用児童数によらず、施設が安定的に経営できるようにするため」が46.3%で最も割合が高く、次いで「施設側からの個別の要望に応じる形で設定したため」14.9%、「施設側の赤字を縮小し、収益を拡大させるため」が9.6%となっているようで、委託料や補助金全体を通して多様なパターンがあることが分かります。
加算分に関する意見では更なる改善を求める声も多くあり、まだまだ課題が多いのが現実と言えるでしょう。
市町村としての取り組み
市町村として病児保育施設に実施している支援の内容を尋ねると「特になし」が52.4%で最も割合が高く、次いで「運営にあたっての助言・相談対応を行っている」が27.8%でした。
実施している自治体においては「病児保育施設のシステム導入・ICT化の支援」「職員に対する処遇改善のための補助の実施」「運営にあたっての助言・相談対応」「市内病児保育施設の連携のための連絡会の開催」などを行っている自治体が多いようです。
地域支援に関して先駆的な取り組みを実施している自治体
新潟県新潟市
- 長年、病児対応型のみを実施していたが2019年度より病後児対応型の施設を新たに整備した
- 対象年齢は生後6ヶ月~小学校6年生まで。市内在住者の他市外在住者の内、市内の保育園等に通園している子供や保護者が市内に通勤している子どもも利用対象
- 2021年度には市内8区全てに病児保育施設が整備された。それをきっかけるに改善分や送迎サービスにも取り組む
- 委託料について国の「子ども・子育て支援交付金」の国庫補助基準額では年間延べ利用児童数100人増加するごとに加算する仕組みとなっているがこれを1人単位で加算額が決まる仕組みしているためよりきめ細やかな委託料の支払いが可能
- 利用者の少ない日などに地域の保育所へ情報提供や巡回支援等を実施するいわゆる改善分を全11施設の取り組みとして2021年度から開始した。(各病児保育施設が作成したおたよりを保育施設にメール送信など)
- 市のウェブサイトに全ての施設のおたよりを掲載し誰でも閲覧可能に
- 2021年度より全施設で送迎サービスを開始
- 家庭への周知として病児保育施設の利用の流れを分かりやすくまとめたリーフレットを作成
香川県高松市
- 6か所ある病児保育施設のいずれも小児科医院併設である
- 施設が少なかった際には市から小児科医院に働きかけて開設を推進
- 近年は市だけでなく小児科医院からも開設希望があった
- 高松市では県の事業に応じて「高松市病児・病後児保育利用無料化事業」を実施しており「第2子で3歳に達した日以後の最初の3月31日までの子ども」及び「第3子以降で就学前の児童」までは病児・病後児保育の利用を無料にしている
- 香川県内の市町村であれば、住んでいる資料損に関わらず病児・病後児保育施設が利用可能
- 病児保育施設が地域子育て支援拠点に出向いて健康相談やイベントを行うなど、地域に出向いた事業を実施
- 幼稚園・小学校での健康診断時に保護者に病児保育に関するチラシを配布したり、児童館にパンフレットを配布
石川県能美市
- 市民のニーズにこたえるため、能美市の公立病院に病児保育施設を開設
- 現在は病児保育施設は公立病院の敷地内の別棟で実施しており病院の小児科医や内科医が協力医となっている
- 病後児保育施設は3か所ありいずれも公立の認定こども園に病後児の保育室が設置され看護市も配置されている
- 利用料は能美市と能美市民以外で異なる金額にしている
- 病院と併設していることから、昼食・おやつは病院の調理師が対応している、病院食のようにいくつかメニューがある中から子どもの様子に合わせて対応している
- 病児保育施設が公営のため、公立認定こども園と同様の施設として市では位置づけられており、担当課や公立認定こども園、病児保育施設等との間での人事異動もあるなど連携が取りやすい体制が構築されている
- 病児保育施設の利用者の状況については市の担当者が毎日把握している
この他、先駆的な取り組みをしている自治体や具体的な課題など報告書には様々記載がありましたので是非、ご確認下さい!
https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2023/04/koukai_230413_01.pdf