【勉強会レポート】自治体情報が住民に届く見逃されない広報とは
先日、issues官民共創勉強会にて、「自治体情報が住民に届く 見逃されない広報とは」をテーマとしたオンライン勉強会が開催されました。
本勉強会には、株式会社ヤプリ自治体担当の須永智史氏、長野県小諸市 企画課長の小林氏、Wind合同会社の長谷川氏が登壇しました。
主催のissuesは官民共創の促進を目的とし、議員の皆様へ先進事例の共有や学びの機会を提供する中立な立場として本レポートをお届けします。
このレポートでは、ご多忙のため勉強会にご参加いただけなかった地方議員の皆様へ、自治体からの情報分散や特定の住民層へ情報が届きにくい構造に関する社会課題にフォーカスした当日の主要な内容を、具体的な事例と質疑応答の内容を踏まえてお伝えします。
1. 自治体広報が抱える現状の課題
自治体の広報活動は、住民生活に必要な情報の提供や、行政から住民への説明、参加協働の促進を目的としています。現在、多くの自治体では広報誌の発行と、ホームページやSNSを用いた発信を並行して行うことが標準となっています。 一方で、現状の広報活動においては以下の課題が挙げられました。
- 情報の分散と埋没:防災、子育て、観光、福祉など、様々な部署から多岐にわたる情報が発信されるため、住民が必要な情報を見つけにくい状態が生じています。
- 特定の層への届きにくさ:現役世代や若年層をはじめとして、既存の広報手法のみでは情報が届きにくい層が存在します。紙を見る世代、LINEを見る世代、SNSを見る世代さまざまです。
- 即時性の問題:広報誌の発行において印刷スケジュールの都合上、最新情報を即座に反映しにくいという構造的な課題があります。緊急時の発信(災害情報など)には不利です。
2. アプリ活用による解決策と横浜市の事例
情報の伝達手段を改善する解決策として、国内普及率が9割を超え、利用時間の約9割を占めるとされるスマートフォンアプリの活用が提示されました。ワンタップでのアクセス、利用者に合わせた情報の整理、プッシュ通知によるリアルタイムな発信が可能となります。 具体的な事例として、神奈川県横浜市の障害福祉分野におけるアプリ導入が紹介されました。
- 対象者と従来の課題:横浜市内では約18万人(身体障害者手帳所有者:約9.9万人、愛護手帳所有者:約3.5万人、精神障害者保健福祉手帳所有者:約4.4万人)に向け、「障害福祉の案内」という冊子を毎年発行していましたが、最新情報の提供や窓口でのご案内に時間と手間がかかる点が課題となっていました。
- 導入効果とコスト削減:アプリの導入により、現在地から近い施設を即座に検索できる仕様となり、利用者・職員双方の負担が軽減されました。また、年間5,000部の冊子削減による発行コストの抑制を実現しています。
- コミュニケーション機会の創出:障害者プラン策定の説明会や意見募集(パブリックコメント)の案内をプッシュ通知で配信することで、これまで接点が持ちにくかった若年の障害者との対話の入り口が形成されました。
3. 官民連携による情報一元化アプリ「コモマグ」(小諸市)
長野県小諸市(人口約40,000人)では、市役所、観光局、商工会議所、市民団体などからバラバラに発信されていた情報を一元化するアプリ「コモマグ」を導入しました。この事業は、小諸市、小諸市観光局、小諸商工会議所、都市企業、Wind合同会社、株式会社ヤプリの6者が連携する官民共創のDX推進組織によって運営されています。 コモマグの機能と期待される効果は以下の通りです。
- ワンストップでの情報提供:市民が日常生活で活用できる地域情報をワンストップで提供するとともに、観光客が滞在中に必要とする最新の観光・交通・店舗情報や経路案内をまとめて閲覧できる仕組みを実現しています。これにより、デジタル情報格差の解消と地域全体の利便性向上を目指しています。
- 音声メディア(ポッドキャスト)の配信:地域おこし協力隊や地元事業者をナビゲーターとした音声番組などを配信し、アプリ内でオリジナルコンテンツを提供しています。
- クーポンの配信や移住施策への活用:観光客・市民向けのクーポン機能の導入や、キャンペーンなどを通じて、体験を深め、地域とつながり、地元消費の循環など経済を動かすためのデジタル基盤として活用されています。

4. アプリ運用体制とコスト削減効果の検証
自治体でのアプリ導入にあたって生じる運用体制への懸念や、既存ツールとの違い、予算化の考え方について以下の解説が行われました。
- 既存ツールとの比較:ホームページは住民が自ら訪れる構造であり、LINEはメッセージ送信による発信力が高いものの、個人の連絡の中に埋もれやすい側面があります。アプリは、利用者の属性に応じた情報の出し分けや、アイコンからの直接アクセスにより情報ノイズを減らすことが可能です。
- 容易な運用体制:プログラミングの専門知識が不要なノーコードのシステムを用いることで、職員の異動時にも複雑な引き継ぎ作業を必要とせず、管理画面から容易に情報の更新を行えます。
- コスト削減の試算:ゼロから開発するフルスクラッチ開発とは異なり、定額制のサービスを活用することで見通しを立てやすい予算化が可能です。広報誌の削減効果の一例として、毎月50,000部を発行する自治体がその10%(5,000部)をアプリへ移行し、1部あたりの印刷・配送・依頼などのコミュニケーションコストを100円とした場合、年間で6,000,000円のコスト削減が見込める試算が示されました。
5. 質疑応答やハイライト
- 質問A:導入にあたり民間企業への運営委託は可能か。また、ポッドキャストのナビゲーター選定はどのように行っているのか。
回答A:事業者が伴走し、地域組織と連携して運用体制を構築することは可能である。ナビゲーターは、地域に根ざした事業者や情報発信に意欲的な方とコミュニケーションを取りながら選定を行っている。 - 質問B:アプリ導入によって、広告掲載など歳入につながる仕組みを構築することは想定できるか。
回答B:アプリ内でのバナー広告掲載やプラットフォームへのスポンサー枠を設ける設計を進めており、協賛企業に対してリターンを提供する仕組みづくりを現在構築中である。 - 質問C:Webサイトの検索機能改善やLINE配信ではなく、アプリ導入を決定した意思決定プロセスと運用体制について知りたい。
回答C:データ分析に基づいた政策立案を行うため、データの取得や施策活用が可能なアプリの導入を予算化し決定した。運用は市観光局に委託している。既存のWebサイトをアプリ内でそのまま表示する機能(Webビュー)を活用しているため、新たな更新作業は生じておらず、担当課の業務量増大は発生していない。 - 質問D:政策決定の根拠として、アプリからユーザーの属性や位置情報などのデータを取得できるか。
回答D:スマートフォンの位置情報を無断で取得するなど個人情報を保持する仕組みにはなっていないが、アンケート形式を活用して利用者の年代、居住地(市内・市外など)、興味関心といった属性データを収集し、施策の立案に活用することが可能である。
6. まとめ
今回の勉強会では、自治体の広報活動における「情報の分散」「紙媒体のコスト増加」「特定の住民層への未到達」という課題に対し、スマートフォンアプリを活用した情報の一元化と最適化の事例が共有されました。横浜市のような特定分野に絞った活用によるコスト削減や、小諸市における官民共創体制によるデータドリブンな地域活性化など、自治体の目的や地域特性に応じた導入が効果的であることが示されました。アプリを通じた情報の適切な出し分けとデータ収集は、自治体の業務負担軽減と住民サービス向上の両立において重要な役割を果たすと考えられます。
自治体規模に応じた具体的な対策シミュレーション
皆様が活動されている自治体の地域特性や予算規模に合わせた、より具体的な先進事例の共有と課題解決の無料相談会(ミートアップ)を実施しています。
個別相談をお申し込みいただいた皆様には、本勉強会のアーカイブ動画を共有いたします。
動画を事前にご覧いただき、あらかじめ自治体の担当課と地域の現状や課題感についてコミュニケーションを取っていただいた上で相談会(ミートアップ)ご参加いただけますと、当日はより地域の実情に即した有意義な情報交換が行えます。
地域の社会課題解決に向けた具体的なステップとして、ぜひこの機会をご活用ください。
個別相談の予約リンクは以下からご確認ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
issuesでは、今後も議員の皆様の地域課題解決の一助となるような情報発信や勉強会を実施してまいります。
