【勉強会レポート】子育て世代・地域経済・自治体財政 三方よしの子育て支援とは?

先日、issues官民共創勉強会にて、「子育て世代・地域経済・自治体財政 三方よしの子育て支援とは?」をテーマとしたオンライン勉強会が開催されました
本勉強会では、講師として株式会社iiba代表取締役CEOの逢澤 奈菜氏が登壇しました


主催のissuesは官民共創の促進を目的とし、議員の皆様へ先進事例の共有や学びの機会を提供する中立な立場として本レポートをお届けします。

このレポートでは、ご多忙のため勉強会にご参加いただけなかった地方議員の皆様へ、申請主義(プル型)支援の限界と子育て世帯の孤立に関する社会課題にフォーカスした当日の主要な内容を、具体的な事例と質疑応答の内容を踏まえてお伝えします。

1. 申請主義(プル型)子育て支援における実態と課題

子育て世帯を取り巻く環境において、行政からの支援が十分に届いていないという構造的な課題が存在します

  • 孤立する子育て環境 出生動向基本調査によれば、親元や地元から離れて子育てをしている母親は63.6%に上り、約3人に2人が頼れる実家のない土地で育児を行っています
  • 行政へのニーズと実際の利用のギャップ 家族以外に頼りたい存在として「行政」と答えた人は49%(第1位)でしたが、実際に頼っていると答えた人は14.5%(第3位)にとどまっています。また、産後ケア事業の利用率は10.9%ですが、「知っていれば利用したかった」と答えた人は66.3%に達しています
  • 情報伝達手法による受給率の差 会計検査院の調査では、給付金の申請勧奨(プッシュ)を行った自治体では給付が届いた割合が20%であったのに対し、行わなかった自治体では11.1%に落ち込みました
  • 多額の不用額の発生 結果として、低所得子育て世帯への特別給付金では491億円(予算全体の不要率8.1%に対し突出)、令和6年度の特例給付等交付金でも80億円(不要率27%)の不用額が発生しており、プル型では施策が浸透しきらない実態が示されました

2. 自治体現場における情報伝達の限界(大阪府守口市の事例)

自治体が抱える情報発信の課題について、大阪府守口市の事例が共有されました

  • 地域特性と課題感

    守口市は交通利便性が高く子育て世代に人気がある一方で、転入・転出が激しく、行政サービスの情報が十分に届いていないという課題がありました。先進的な支援制度を実施しているにもかかわらず、「制度を知らなかった」という声が少なくありませんでした
  • 従来型広報の限界

    広報誌や公式ホームページなど、住民自らが情報を取りに来るプル型の発信では、日々忙しい子育て世代に必要なタイミングで情報を届けることには限界がありました


  • 行政内部の縦割り構造

    商工労働部門から発信される市民全体向けのイベント情報と、子育て世代向けの支援情報とでターゲットへのアプローチ方法が異なり、必要な情報が埋もれてしまうという行政側の構造的な難しさも挙げられました

3. 国内外における「プッシュ型支援」への転換動向とコスト構造

情報の未達を解決するため、住民が動かずとも支援が届く「プッシュ型」への転換が国内外で進んでいます

  • 海外の先行事例
    • アメリカでは確定申告データから対象を自動で割り出し口座へ振り込みを行っています
    • エストニアでは親専用ポータルへの通知により、住民手続きが2時間から30秒に短縮されました
    • 韓国では対象となる163種類の給付が自動通知され、OECDのデジタル政府指数(先回り分野)で1位を獲得しています(日本は28位)
  • 従来型施策の事務経費
    • プル型の申請事業は、自治体のシステム費や事務コストを増大させます。プレミアム付き商品券事業の例では、住民に渡った額が440億円であったのに対し、57%にあたる586億円が事務経費として費やされました
  • 国の政策動向
    • 国もプッシュ型へ舵を切っており、2022年の児童手当の現況届原則廃止、2024年のプッシュ型子育て支援の工程表策定に続き、2025年には子どもDX政策が全自治体へ展開される予定です

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4. デジタルマップを活用した解決策と今後の展望

行政の情報を、住民が日頃利用する場所に配置する具体的な解決策が提示されました

  • 子育て世帯の情報収集動向 現在の子育て世帯の88%がSNSで情報を収集しており、最も利用する情報源はSNS(44%)とウェブ検索(30%)です。自治体の公式媒体からの収集は1%未満となっています
  • マップのデジタル化とその効果 紙の子育て情報誌(保育園、夜間診療、イベント情報等)をデジタルマップ化し、SNS等と連携させることで、更新性と双方向性を確保できます。守口市への導入後、自治体情報を掲載したユーザー数は都道府県で15.1倍、特別区で5.7倍、市区町村で7.8倍へと増加しました
  • 支援の自動化に向けた3ステップ 今後の展望として、以下の3段階の取り組みが整理されました
    1. 情報のプッシュ(知りそびれをなくす)
    2. ワンプッシュ申請(申し込みそびれをなくす)
    3. 完全自動給付(もらいそびれをなくす)
  • データの活用 給付をデジタル化することで、使途や地域を限定し、施策のデータ検証が可能になるという副次効果も期待されます

5. 質疑応答やハイライト

質問:デジタル化やSNS活用に伴う、情報漏洩や個人情報流用の懸念はないのか。

  • 回答:国や自治体のガイドラインに従い、機密情報の取り扱いや住民への直接入力禁止等の規定を遵守している。マイナンバー連携等に際しても、デジタル庁等のセキュリティ基準をクリアした社内体制を構築し、安全を担保した上で事業を展開している

質問:既存のマップアプリ(「いこーよ」等)やプッシュ型サービス(「母子モ」等)との違いは何か。

  • 回答:最大の強みは、ユーザー自身が情報を投稿するUGC(住民の声)で地図が構築される点と、Instagram等のSNSと連携している点である。また、母子手帳アプリ等は乳幼児期を過ぎると利用率が低下する傾向があるが、マッププラットフォームは遊び場だけでなく保育園等の日常的な検索にも使われるため、長期的な利用が見込める

質問:安心して出産・子育てをするための環境づくりや、孤立解消に向けた工夫は何か。

  • 回答:物理的支援(時間貧困への対応)、精神的支援(地域コミュニティとの繋がりや街全体の歓迎姿勢)、経済的支援(制度活用による負担軽減)の3点が必要である。デジタルマップ上でキッズフレンドリーな施設や支援情報を可視化することで、街全体が子育て世帯を歓迎しているというメッセージを発信し、精神的な孤立の解消を図っている

質問:京都府の事例における利用率や導入効果の数値はどの程度か。

  • 回答:具体的な精緻な数字は個別共有となるが、サービスリリース後1ヶ月で約2割のユーザーに情報が届き、その後も成長を続けている。また、京都府の三条会商店街との連携事例では、キッズフレンドリー施設の参加店舗数が1ヶ月で26店舗から52店舗へと倍増した実績がある

質問:イベント情報について、個人事業主や地域商店会からの発信、および広域での利用は可能か

  • 回答:全て可能である。自治体がリストを持つ場合はシステムで自動更新でき、地域の事業者も個別の管理画面からイベント情報を発信できる機能を提供している。また、住民は市境などをあまり意識しないため、都道府県と市区町村が連携する広域での活用事例も既に存在している

6. まとめ

今回の勉強会では、従来の申請主義(プル型)における情報未達の構造的課題と、プッシュ型支援への転換の重要性が具体的なデータとともに示されました

紙媒体の行政情報をデジタルマップ化し、住民が日常的に利用するSNS等のプラットフォームへ展開することは、多忙な子育て世帯の利便性を高めるだけでなく、行政の不用額や事務コストを削減する効果を持ちます

これら「子育て世代」「自治体財政」「地域経済」の三方よしを実現する仕組みづくりは、今後の地方自治体における地域課題解決において、大いに参考となる事例と言えます


自治体規模に応じた具体的な対策シミュレーション

皆様が活動されている自治体の地域特性や予算規模に合わせた、より具体的な先進事例の共有と課題解決の無料相談会(ミートアップ)を実施しています。
個別相談をお申し込みいただいた皆様には、本勉強会のアーカイブ動画を共有いたします。
動画を事前にご覧いただき、あらかじめ自治体の担当課と地域の現状や課題感についてコミュニケーションを取っていただいた上で相談会(ミートアップ)ご参加いただけますと、当日はより地域の実情に即した有意義な情報交換が行えます。
域の社会課題解決に向けた具体的なステップとして、ぜひこの機会をご活用ください。
個別相談の予約リンクは以下からご確認ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。
issuesでは、今後も議員の皆様の地域課題解決の一助となるような情報発信や勉強会を実施してまいります。