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塾代補助制度で学びの扉を開く|自治体別事例とその効果を紹介

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子育て世帯の学習費がますます負担に感じる昨今、お住まいの地域でも「塾代補助制度」の導入を検討されてはいかがでしょうか。この記事では、各地域での具体的な事例を交えながら、その効果や利用者の声に焦点を当ててご紹介します。ぜひ最後までお読みいただき、平等な学習機会に向けた検討の一環としてご活用ください。

いま塾代補助制度が求められている背景

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令和4年度から新学習指導要領が小中高全てにおいて実施され、成績評価に新たな要素として「主体的に学習に取り組む姿勢」が加えられました。家庭では学習へのアプローチの仕方を体系的に教えることが難しいことから、学習塾などの校外学習を検討する家庭が増加しています。

そんな中、子供の可能性を引き出すための教育費は惜しみたくないと考える家庭が多いものの、子育て世帯にとって塾代は少なくない負担としてのしかかっています。

文部科学省が発表した「令和3年度子供の学習費調査」によれば、公立中学校の補助学習費(塾代)は年間30.3万円、公立高校生が年間17.1万円と、いずれも前回調査を上回る金額です。

この現状を考慮し、自治体の中には学習塾など校外学習の経済的負担を軽減し、同時に子供たちの学力や学習意欲を伸ばす補助制度を提供しているところがあります。これらの政策は地域住民のニーズに寄り添ったものとして一定の評価を受けています。

以下で補助制度を実施している自治体の先進事例を見ていきましょう。

東京都:受験生チャレンジ支援貸付事業

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東京都では、学習塾の受講料や高校・大学受験料の捻出が困難な一定の所得以下の世帯を対象に「受験生チャレンジ支援貸付事業」を実施しています。この制度は、子供たちの学習意欲を応援しサポートするために、無利子の貸付を行っています。

対象は中学3年生・高校3年生またはそれに準じる方であり、貸付の限度額は学習塾などの受講料の場合は20万円、高校受験料は2万7,400円(1度で4回分の受験料まで貸付可能)、大学などの受験料は8万円を上限としています。

さらに高校・大学などに入学した場合、返済免除の申請が可能です。この制度を利用した方の99%が返済を免除されており、非常に子育て世帯に寄り添った制度になっています。

大阪府大阪市:習い事・塾代助成事業

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大阪市では、子育て世帯の経済負担軽減や子供の意欲や才能を伸ばす機会を提供するため「習い事・塾代助成事業」が行われています。この事業では学習塾やスポーツ教室などにかかる費用の一部を助成しています。

対象者は大阪市内在住の小学5年生から中学3年生の養育者で、所得金額が大阪市が定める所得制限限度額未満の方です。対象者には「塾代助成カード」が交付され、1人あたり月額10,000円まで利用できます。

この助成は学習塾や家庭教師などの学習に限らず、文化(英会話、音楽、絵画など)やスポーツ(野球、ダンス、水泳など)など、幅広い学校外教育の費用に当てられるのが特徴的です。

千葉県南房総市:教育サービス利用助成券

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千葉県南房総市では「教育サービス利用助成券」を発行し、学校外の教育サービス提供を推進しています。この施策は子供たちの個性や才能を伸ばす機会を提供するとともに、子育て中の家庭の経済的負担を軽減することを目的とし、平成27年度に全国初の試みとしてスタートしました。

対象者は小学5年生から中学3年生までの児童・生徒の保護者で、南房総市に居住し、かつ南房総市の住民基本台帳に登録されている方です。助成額は子供1人あたり、月額で生活保護世帯が7000円、市民税非課税世帯が6000円、それ以外は所得に応じて5000〜1000円です。

利用できる教室は学習塾に限らず、放課後子供クラブ、習字、そろばん、クラシックバレエ、サッカーなど、幅広い文化・運動系の教室が含まれます。

福岡県福岡市:子ども習い事応援事業

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福岡市では、小学5年生から中学3年生のお子さまを持つ保護者を対象に「子ども習い事応援事業」を実施しています。

この事業では、お子さま1人につき月額1万円分のクーポンが交付されます。ただし対象世帯は、市内在住の生活保護または児童扶養手当を受給している世帯に限られます。児童全員を対象とするものではなく注意が必要です。

この支援は貧困家庭を対象としており、生まれ育った環境に左右されずにお子さまの個性や能力を伸ばし、自己肯定感を育むことを目的としています。

塾代補助制度の効果と利用者の声

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塾代補助の施策は、どのような効果が現れているのでしょうか。大阪市が令和5年1月に公開した「大阪市塾代助成事業の実施状況(令和5年1月末現在)」を参考に、具体的に見ていきましょう。

「塾代助成によってどのような変化があったか」の質問に対する回答では、「新たに通塾できた」「受講科目を増やせた」「冬期講習などに参加した」「以前から利用している学習塾などに加え新しい教室などにも利用できた」など、学校外教育の機会が増えたと回答した保護者の割合は合わせて65.0%に達しました。

成績内容も「学校の通信簿の内容」「学校の定期テストなどの順位」などの客観的なデータで74.9%向上し、学習意欲についても65.9%の生徒が向上したと答えています。この結果から、塾代補助制度が子供に新たな学習機会を提供するキッカケになっていることが見て取れます。

一方で、助成対象にもかかわらず「子供が学習塾などを利用したいと言っていない」「現在利用している学習塾などが参画事業者ではない」など、塾代補助制度を利用していないとの回答もあります。

補助制度を作って終わりというわけではなく、土台となる学習環境の整備にも引き続き並行して取り組み、より需要に寄り添った学習機会を提供できるように働きかけていくことが大切です。

自治体に求められる学習機会の提供

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この記事では塾代補助制度について、先進事例を持つ各自治体を例に解説してきました。上限補助額や対象世帯の範囲などを参考にし、ぜひお住まいの地域のヒントとしていただければ幸いです。

【参考資料】
https://www.mext.go.jp/content/20221220-mxt_chousa01-000026656_1a.pdf
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/seikatsu/teisyotokusyataisaku/jukenseichallenge.html
https://www.juku-osaka.com/system/about_project.html/
https://www.city.minamiboso.chiba.jp/0000007632.html
https://www.city.fukuoka.lg.jp/kodomo-mirai/mimamori/child/naraigoto1_3.html
https://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/cmsfiles/contents/0000596/596583/0501.pdf