学校選択制のメリット・デメリットを解説|地域社会と教育の関係性

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学校選択制は1997年に開始され、東京都を中心に一部の自治体で導入されている制度です。この記事では、学校選択制のメリット・デメリットを元に、子どもに寄り添った教育環境づくりについて考えていきます。ぜひ最後までお読みいただき、地域社会の教育機会提供の参考としてご活用ください。

学校選択制について今一度考えてみる

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学校選択制とは、居住している地域に限定されずに公立小・中学校を自由に選べる制度であり、保護者のニーズに柔軟に対応するための施策として導入されました。この制度では、自治体が保護者の意見を考慮し、就学校を指定します。

学校選択制は教育に対する保護者の関心を反映し、子どもたちの将来に関わる重要な政策の一環として注目されています。教育に関する選択肢を増やすことで、子どもたちの教育環境を改善する狙いから策定された制度です。

しかし、一部の自治体では、学校選択制を試行したものの、運用上の問題や地域の実情に合わないとして廃止されるケースも見られます。このような事例を受けて、近年では学校選択制の導入に慎重になる動きが見て取れます。

以下では、学校選択制のメリット・デメリットを解説していきます。学校や地域社会が一体となって作り上げる教育環境について、考えを深めてみましょう。

学校選択制のメリット

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学校選択制は、子どもの個性や教育環境に合わせて最適な学校を選べる大きなメリットがあります。大人数の学校よりも小規模な学校が合っている場合もありますし、特色ある学校や地域の特性を活かした教育を行っている学校を選ぶこともできます。

また私立学校だけではなく公立学校からもニーズに合った学校を選択できるため、経済的な負担を抑えつつ、子どもに最適な教育環境を提供することが可能です。

実際に学校選択制を導入する自治体では、各学校が個性や特色を持つことで教育の質を向上させる取り組みが行われています。保護者は子どもに最適な学校を選ぶための情報が得られると同時に、学校側も教育方針を明確にし、地域の期待に応える努力をするようになります。

学校選択制は子どもの個性や教育環境に合わせた選択の可能性を広げ、地域の教育の質向上にも寄与する重要な制度であると言えます。

学校選択制のデメリット

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学校選択制は確かに多くの利点がありますが、その一方で大きなデメリットも指摘されています。まず、学校が選ばれる立場になることで、教育内容の特色や話題性によって学校間に人気の差が生じること。入学希望者が殺到し抽選となる学校もある反面、入学希望者が大幅減少し、適正な規模での運営が難しくなる学校が存在します。

人気の高い学校に希望が集中した場合、抽選によって入学が決まるケースもあります。この抽選から漏れてしまうと、希望の学校に通えず、兄弟姉妹で別々の学校に通うことになる可能性もあります。

また学区制に比べて通学距離が長くなる傾向があります。安全な登下校への不安や保護者の送迎負担増加が懸念され、さらに近所に友だちができにくくなったり、下校時間が異なるため防犯面での不安が増加する可能性もあります。

地域と学校の連携が難しくなることも課題のひとつです。地域社会との関わりが希薄になることで、子どもたちの安全を守るための地域の取り組みが難しくなります。子どもたちを見守る機会の減少は、地域全体の治安にも影響を及ぼす可能性があります。

このように、学校選択制には無視できない課題も存在しています。教育面だけでなく、安全や地域との連携などにも注目し、より良い教育環境の実現に向けて議論を深める必要があります。

見直しが進む学校選択制

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学校選択制は、東京都心部を中心に多くの自治体で導入されてきましたが、近年ではその仕組みに見直しの動きが広がっています。都内の事例を参考に見ていきましょう。

まず、校舎設備や施設の新しさなどの「教育面以外の要因」によって、一部の大規模校に人気が集中し過疎校が生まれているという現状があります。東京都多摩市では2003年度から選択制を実施してきましたが、学校規模による生徒数格差が拡大しています。生徒数が減った学校ではクラブの廃部などの問題が生じました。

足立区では、学力テストの結果公表と連動して「トップ10校」が固定化。学校間の序列化と生徒数の格差が拡大しており、教育の質や活動の幅への影響が懸念されています。

品川区や文京区では、新入生0人の学校も生まれました。図書費などは学校人数に応じて配分されるため、必要な図書が購入できないといった教育活動の支障が拡大しています。学校規模の縮小は教員数減少にもつながるため、事務処理や校外活動の仕事が少ない教員に集中するなどの問題も生じました。

また生徒の安全確保の面でも、地元校区の青少年協議会の取り組みが地域外の通学生徒や保護者に伝わらないという事例が報告されています。地元住民からは「不審者と間違われる」と学区外から通う生徒に声をかけられないという意見も出ており、地域の見守り体制に懸念が示されています。

地域と学校、子どもたちとの関係が疎遠になっていることを重く受け止め、多摩市では学校選択制を原則廃止し、江東区では小学校は徒歩通学できる範囲に限定するなど、適応条件を狭める改正が行われました。

いずれにせよ子どもに寄り添って選択できる環境が重要

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学区制と学校選択制はそれぞれ利点と課題を抱えていますが、どちらを選択するにしても、子どもの個性を伸ばし、多様性を認められる環境づくりが肝要です。どちらが良いという絶対的な答えはありません。最適な学びの場を提供する施策の一環として、学校選択制も一考するべきでしょう。

保護者が求める学校教育も多岐にわたります。学力の向上を望むこともあれば、子どもの発達や悩みに寄り添いたいという気持ちも強いでしょう。文部科学省も柔軟な対応を求めており、保護者の申し出に応じて学校の指定変更や区域外就学を認めるなど、さまざまな形の教育機会提供が考えられます。

自治体、保護者、教育関係者、そして地域社会が連携し、子ども一人ひとりに最適な学びの場を提供し環境を守ることが、将来を見越した教育に求められています。

学校選択制を通じて教育環境を考えるキッカケに

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この記事では、学校選択制のメリット・デメリットについて解説してきました。学校選択制の見直しが進んでいる背景や、これからの教育機会提供の考え方などを参考にしていただき、ぜひお住まいの地域のヒントとしていただければ幸いです。

【参考資料】

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/038/siryo/attach/1286200.htm
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/038/siryo/attach/1286187.htm
https://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/cmsfiles/contents/0000171/171512/siryou1-3.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jeas/50thanniv./0/50thanniv._105/_pdf