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性暴力の現状と課題|被害者と加害者の両者への取組事例

issues(イシューズ)の米久です。

昨今、デジタル性暴力や子どもの性被害、セクシュアルハラスメントなどの社会的に声をあげにくい人に対する性暴力が社会問題となっています。

本記事では、性暴力の現状と向き合うべき課題、性暴力対策を推進する施策、被害者と加害者の両方を支援する愛知県の取り組み事例を詳しくまとめました。

是非最後までお読みいただき、性暴力のない社会の実現のため参考にしていただけますと幸いです。

性暴力の現状と課題

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同意のない、対等でない、強要された性的な行為や発言は性暴力であり、重大な人権侵害です。

「抵抗しなかったから、同意の上だと思った」

被害者がはっきりNOと主張できない場合でも、それは性的同意が得られたことにはなりません。声をあげにくい立場や環境のため断れない、恐怖やパニックで抵抗できない、感覚が麻痺するなど被害者は応じざるを得ない追い詰められた状況に陥ったことが考えられます。

昨今は、高収入なアルバイトへの応募をきっかけに性被害に遭う「JKビジネス」、本人の同意なく性的な動画や写真がインターネット上へ拡散されてしまう「デジタル性暴力」など時代とともに子どもの福祉を害する犯罪被害が発生しています。そして、社会全体において加害者は男性、被害者は女性などという先入観が強い傾向にありましたが「男性・男児の性被害」への支援も必要です。

性暴力は年齢や性別に関係なく誰もが被害者になる可能性があり、交際相手や配偶者、職場の関係者など加害者の8割近くが身近な人という調査結果がでています。(内閣府調査より)

また、被害者の多くは十分な支援を受けることができないばかりか、「肌の露出が多い服を着ているから」「ちゃんと抵抗したの?」「酔ってたなら仕方ない」など、周囲の人やSNSなどのインターネットで被害者側が誹謗中傷をされ、精神的ダメージを追う二次的被害(セカンドレイプ)を受けるケースは少なくありません。

このように二次的被害は、被害者から声をあげる力を奪ってしまう、心身ともに一生残るトラウマになる可能性があるなど更なる精神的社会的ダメージを受けさせるだけでなく、加害者が性暴力を繰り返し新たな被害者を生む危険性があるのです。

◉大阪府|性暴力対策に関する取組について

 

性暴力対策を推進する施策

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■こども若者の性被害防止のための緊急対策パッケージ

令和5年7月、関係府省はこども・若年層が性被害に遭う事案が後を絶たない現状を受け、性犯罪・性暴力対策強化のため「こども若者の性被害防止のための緊急対策パッケージ」を取りまとめました。

①加害を防止する強化策②相談・被害申告をしやすくする強化策➂被害者支援の強化策、この3つの強化策の確実な実行のため、総合的な支援を可能な限り一か所で提供するワンストップ支援センター等の地域における支援体制の充実や、性暴力の被害に遭った男性や男児及びその保護者等を対象とした相談窓口「男性・男児のための性暴力被害者ホットライン」の臨時開設(令和5年9月~12月)されるなど施策が実行されています。令和5年8月及び9月の2カ月間は政府を挙げた啓発活動を実施し、期間終了後も「若年層の性暴力被害予防月間」などの機会を活用し、継続的に周知啓発に取り組むとしています。

◉こども若者の性被害防止のための緊急対策パッケージ

◉男性・男児のための性暴力被害者ホットラインの開設について

◉性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(一覧)

 

■若年層の性暴力被害予防月間とは

進学・就職等で若年層の生活環境が大きく変化する時期は、日常生活で性暴力や性犯罪がより身近になる可能性が考えられます。そこで、政府は被害に遭う危険が高まる4月(令和6年4月1日~30日)までの1か月間を「若年層の性暴力被害予防月間」定めました。SNS等の若年層に届きやすい広報媒体を活用した啓発活動を展開することとしています。

◉若年層の性暴力被害予防月間

 

「性暴力被害者支援」福岡県の取り組み事例

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福岡県では子どもを対象とした専門講師による授業の導入の他、性暴力加害者への支援にも取り組んでいます。

 

■性暴力対策アドバイザー授業の導入

福岡県は全国で初めて専門講師である「性暴力対策アドバイザー」を公立全小中高に一斉派遣する取り組みを実施しています。性暴力を根絶し、子どもを性暴力の被害者にも加害者にもしない、被害者の心に寄り添う気持ちを共有する社会実現を目指しています。

性暴力対策アドバイザーとは、①福岡県臨床心理士会②性暴力関係機関等から県に推薦された方➂県内の学校に勤務するスクールカウンセラーのうち、県が実施する養成講座を修了した方です。

性暴力対策アドバイザーの授業を実施する対象は、公立の全ての小学校(高学年)、中学校及び高等学校、また希望があれば学校教育法第1条に規定する大学及び高等専門学や自治会などの地域団体にも派遣を行っています。

◉性暴力対策アドバイザー派遣事業について

 

■性暴力加害者相談窓口の設置

被害者も加害者も出さない社会の実現のため、性暴力加害者の再犯防止及び社会復帰を支援する「福岡県性暴力加害者相談窓口」を設置しています。性犯罪の有無にかかわらず、性依存症など性的な問題で悩む人も対象としており性別も問いません。

こども家庭庁によると、性暴力による再犯率(性犯罪による有罪確定後5年間のうちに再び性犯罪に及び、有罪確定した者の割合)は、13.9%の者が再び性犯罪に及んでいます。また、再犯率ではありませんが、小児わいせつ型の性犯罪であり、かつ性犯罪2回以上の前科がある者について見ると、そのうち過去の前科も小児わいせつ型であった者の割合は84.6%でした。

性暴力の加害者は、やめたくてもやめられない依存症の一種である可能性があり、適切な治療や支援が必要となる場合があります。福岡県は性暴力による被害者を出さないために加害者側への支援も行っています。

◉福岡県性暴力加害者相談窓口

◉性犯罪の再犯に関する資料|こども家庭庁

 

被害者の半数以上が誰にも相談できない

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内閣府調査によると、被害者の約6割近くが被害をどこ(だれ)にも相談できなかったことが判明しました。◉性暴力被害の実態(全国と鳥取県の比較)

調査対象者は20歳以上の男女のため、幼児・児童・生徒など若年層は含まれていません。今回の結果は氷山の一角であって、今もこの瞬間性暴力の被害に苦しんでいる人がいます。性暴力根絶のためには、性暴力に関する教育や啓発、相談・支援窓口の周知などの取り組みが求められます。そして、性暴力の被害者だけでなく加害者の両方へ正しい理解と支援が必要です。