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流域治水で水害を防ぐ~埼玉県戸田市/長野県中野市~

issuesの高松です!

「住んでいる自治体で、大雨による水害対策を進めたい」

近年毎年のように豪雨被害が出ている日本。
・2023年7月 九州北部豪雨
・2023年7月 秋田豪雨
など、梅雨や台風の時期にかけて、川の氾濫や河川の増水で被害が出ています。

令和元年に起こった東日本台風では、東日本の各地で河川の増水や氾濫がおきて、大きな影響がでました。

この記事では、最近の水害対策のスタンダードについてご紹介します。

お住まいの自治体での水害対策にもご活用いただけるので、ぜひ最後までご覧ください。

 

雨の降り方が変わった!大雨が40年前より増えている

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1時間あたりの降水量50mm以上の回数が増えています。

近年線状降水帯という言葉も広く知られるようになりました。

線状降水帯:
次々と積乱雲が発生して、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過・停滞することで作りだされる線状に伸びる、強い降水をともなう雨域。
参考:https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/bousai/senjou-chui.html

1時間降水量50mm以上の年間発生回数(アメダス1,300地点あたり)は、
・1976年~1985年の平均は年間226回
・2013年~2022年の平均は年間328回
この40年間で1時間降水量50mm以上の年間発生回数が1.5倍増加しています!!

 

令和元年は過去最大の水害被害額

国土交通省では水害(洪水、内水、高潮、津波、土石流、地滑りなど)による被害額を年単位で集計しています。
※内水:マンホールなどから下水があふれ出ること

国土交通省の集計では、
・令和4年6000億円
・令和3年3600億円
・令和2年6600円
・令和元年2兆1500億円。

令和元年は東日本台風による影響が大きく、1兆8600億円にも被害が及びます。

水害被害額だけでも、大きな金額がかかっていることがわかります。

●内水ハザードマップってなに? 内水と洪水ってなんのこと?

●山形県・熊本県・大分県で統計開始以来最大の被害~令和2年水害被害額(確報値)を公表

●令和3年の水害被害額(確報値)を公表 - 国土交通省

●静岡県・石川県で統計開始以来最大の被害~令和4年の水害被害額を公表

気候変動の降水量を考えた計画作り

これまで、洪水、内水氾濫、土砂災害、高潮・高波などを防御する計画は、過去の降雨や潮位に基づいて策定してきました。

しかし、気候変動による海水水位の上昇や降雨量の増大を考えると、今までの策定では不十分と考えられるように。

そこで、今後は気候変動による降雨量の増加や、潮位の上昇を加味した計画に見直す必要が出てきました。

※気候変動で平均気温が2℃上昇すると、
・降雨量 約1.1倍
・流量 約1.2倍
・洪水発生頻度 約2倍

 

水害対策のニュースタンダード 流域治水とは?

流域治水とは、流域全体で行う多様な水害対策のことです。大きく3つの対策に分かれます。

①堤防整備などで氾濫を防ぐ対策【従来型】

②被害対象を減少させるための対策

③被害の軽減、早期復旧、復興のための対策

気候変動でいつ、どこで水害が起こるか分かりません。水害に強い町づくりには、国、都道府県、市区町村の連携が欠かせません。

次の記事から、それぞれの特徴と実際の事例をご紹介します。

 

堤防整備などで氾濫を防ぐ対策【従来型】

堤防整備などで氾濫を防ぐ対策には、
・堤防整備
・ダムや遊水池の整備
・地下貯留施設の整備
・利水ダムなどの洪水調節機能の強化
などがあります。

【埼玉県戸田市】荒川の調整池

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埼玉県戸田市にある彩湖は荒川の調整池です。

公園として整備されて、平時は住民が憩いの場として活用しています。

しかし、荒川の水位が上がると、荒川の氾濫を防ぐための調整池になります。

荒川にはこのような調整池が他に2つ整備されています。


ダムの事前放水~利根川水系渡良瀬川 草木ダムの例~

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大雨が予想されるときに、ダムの水が溢れて大規模被害を避けるために、事前にダムの水を放流して容量を確保する方法があります。

例えば、利根川水系渡良瀬川 草木ダムでは令和元年の台風19号接近に伴い、ダムの事前放水を行いました。

大雨と上流から流れてくるであろう水量を計算して、ダムの下流域に影響が出ないように放水。

これにより、ダムの緊急放流を回避することができました!

※緊急放流:ダムの水を貯める能力を超える恐れがある場合に、ダム上流からの洪水をダムに貯めずにダム下流に流す防災操作のこと。「異常洪水時防災操作」とも呼ばれています。

●ダム事前放流・緊急放流について

被害対象を減少させるための対策

被害対象を減少させるための対策には、
・まちづくりや住まい方の工夫
・土地の利用規制・誘導・移転を促す
などがあります。

【長野県中野市】集落の浸水被害を避けることができた事例

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長野県中野市小牧地区(千曲川)では、令和元年の台風19号で集落の浸水被害を避けることができました。

台風19号の前から小牧地区を災害危険区域に指定して、居住用の建築の新たな建築ができないようにしました。

さらにもともとある住宅で改築・増築するためには
・基礎は鉄筋コンクリート造
・地盤面の高さを基準高以上にしているもの
など細かい基準を守った建築物に制限。

その結果、大雨でも集落の被害をさけることができました。

 

被害の軽減、早期復旧、復興のための対策

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被害の軽減、早期復旧、復興のための対策には、
・水害リスク情報の空白地帯をなくす
・河川整備のの浸水ハザード情報の提供
などがあります。


個人でもできる、マイタイムラインの作成

マイタイムラインとは、台風などの接近で水害のリスクが高まった時に、住民1人ひとりが生活環境や家族構成に合わせて、いつ、どこで、何をするかを時系列で整理した、個人の防災行動計画です。

この取り組みで、避難の実効性を高めることが期待されています。

質問事項は、
・台風直撃の3日前・前日・半日前、どのような行動をとりますか?
・河川が氾濫する3時間前、どのような行動をとりますか?
など。

個人でも、地域の防災訓練でも取り組めます。

それぞれの自治体のホームページからも作成可能です。(福岡市・熊本県など)

●マイ・タイムライン

●マイ・タイムラインってなんですか | 河川

気候変動を想定した水害対策は早い対策が求められる課題

この記事では、堤防整備などで氾濫を防ぐ対策・被害対象を減少させるための対策・被害の軽減、早期復旧、復興のための対策をご紹介しました。

気候変動で毎年大雨による水害のニュースが話題になります。

自分の住んでいる地域は大丈夫ではなく、いつ、どこで水害が起こるか分かりません。

ぜひ、住民と一緒に流域治水を考えてみてはいかがでしょうか?

 

参考:「流域治水」の基本的な考え方