災害時、非常用電源装置は使えますか?北海道の事例から
issuesの高松です!
お住まいの自治体では、災害時の非常用電源の確保はできていますか?
もし災害がきたら、すぐに使えますか?
総務省は北海道の各自治体を対象に、非常用電源の整備状況を調査。
調査結果から、非常用電源装置の整備状況、発電装置の日常のメンテナンスにおける課題が見えてきました。
この記事では北海道での調査をご紹介します。お住まいの自治体での電力確保の見直しの参考になりますので、ぜひ最後までご覧ください。
非常時の発電、目安は72時間
防災基本計画等では、非常発電についてこのように書かれています。
・自治体で非常用発電設備を持ち、72時間は外部からの供給なしに発電できるよう燃料を備蓄しておくこと
・非常用発電設備は日頃からメンテナンスしておくこと
・非常用発電設備の使い方を普段から訓練しておくこと
・燃料販売事業者等と「燃料の優先供給に関する協定」を締結して、1週間程度は災害対応に支障が出ないよう準備すること
80%の自治体に非常用電源設備あり
北海道での非常用発電設備の整備状況は80%(144/180自治体)。整備ができていない36自治体のうち34自治体はポータブル発電機を所有しています。
平成30年北海道胆振東部地震では、ポータブル発電機では発電容量が足りず、
・業務に必要なパソコンやプリンターの使用が制限
・テレビや電話しか使用できない
・業務に必要なサーバーがダウン
といった事例があり、地震のあと非常用発電装置を整備した自治体もあります。
非常用発電装置で確保した電力の使い方
非常用発電装置で確保した電力には限りがあり、どの範囲の業務を行うか決めておくことも大切です。
非常用発電装置を持つ144の自治体では、確保した電力で行う業務の範囲を決めていました。
・全業務 :62(43.1%)
・一部業務:81(56.3%)
・未決定 : 1( 0.7%)
また業務の範囲を決めると共に、確保した電力がその業務で使えるどうか動作確認も必要です。
平成30年北海道胆振東部地震では、
・ 電力の供給先が非常灯に限定されていて、サーバやパソコンが使えなかった
・ 非常用発電装置の手動切替の手順が分からなくて、サーバがダウンした
・ 配線が複雑で必要な機器の使用まで時間がかかった
といった事例がありました。
72時間以上稼働できる自治体は69%
非常用発電装置を整備している144の自治体に稼働できる時間を調査したところ、
・72時間以上:100(69.4%)
・72時間未満: 38(26.4%)
・不明 : 6( 4.2%)
という結果に。
稼働時間が72時間未満の自治体では、燃料優先供給協定で災害時でも燃料を確保できるようにしているという回答が多かったです。
平成30年北海道胆振東部地震では、
・ 72時間以上稼働できる燃料を備蓄していなくて、燃料不足になりそうになった
・稼働可能時間を把握していなくて、燃料供給のタイミングが分かりにくかった
という事例も。
地震後、燃料タンクを整備して72時間以上発電できるようにした自治体もあります。
備蓄燃料のメンテナンス
備蓄した燃料には保存目安期間があり、灯油・軽油が6か月、A重油が3か月と言われています。
非常用発電装置を整備している144自治体のうち、備蓄燃料のメンテナンスを実施していない自治体は69(47.9%)でした。
平成30年北海道胆振東部地震では、
・ 備蓄燃料のメンテナンスができていなくて、災害時に燃料が経年劣化していることがわかった。非常用発電設備の故障につながるおそれがあり、充てんできなかった
という事例がありました。
備蓄燃料は定期的に交換が必要なので、
・非常用発電装置の稼働訓練時に、備蓄燃料で発電し、庁内の通常業務に必要な電力をまかなった後、新しい燃料を充てんする
・ 交換する燃料を公用車などの燃料として活用する
といった方法があります。
非常用発電装置の操作訓練
非常用発電装置は持っているだけでは意味がなく、必要なときにすぐに使えるよう日頃から訓練しておくことが大切です。
非常用発電装置を整備している 144自治体のうち、操作訓練を実施していない自治体は113(78.5%)。未実施理由としては、「必要性はないと判断」が40 (35.4%)で最も多い回答でした。
平成30年北海道胆振東部地震では、
・燃料を補給するために非常用発電装置を一時停止させる必要があったが、操作方法が分からなかった。
・非常用発電装置が停電時に自動起動する設計だから、訓練を実施していなかった。災害時に自動起動できなかったら、操作できなくなる恐れがあった
という自治体もありました。
非常用発電装置の燃料の優先供給に係る協定の締結状況
北海道の180自治体のうち、事業者と燃料優先供給の協定を締結をしている自治体は163(90.6%)。
平成30年北海道胆振東部地震では、燃料の供給依頼をしても他の大型施設や住民からの燃料のニーズが高まったため、協定先からの供給が停止して、調達が困難だった事例も。
そのため、燃料優先供給の協定より実効性が高い「燃料供給パートナー制度」を検討している自治体もあります。
※「燃料供給パートナー制度」は、自治体の燃料の必要量と、事業者が保有している燃料の量の情報を共有し調整等を行う制度です。
燃料優先供給の協定を実効性の高いものへ
事業者と燃料優先供給の協定を結んでいても、
・燃料の依頼手順を決めていない自治体が87(53.4%)
・災害を想定した連携訓練を実施していない自治体が139(85.3%)
・「停電時でも燃料のくみ上げができる」ことを確認している自治体が23 (14.1%)
という結果が。
平成30年北海道胆振東部地震では、
・ 事業者に自家用発電機がなくて、停電で燃料ポンプが稼働せず調達できなかった
・ 依頼手順を決めていなかったため、燃料の調達に時間がかかった
という事例がありました。
日常で事業者への依頼手順のシュミレーションや、燃料供給の訓練で、協定を実効性の高いものにすることが大切です。
自分の住んでいる自治体の整備状況を知る方法
総務省消防庁では全国の自治体で非常用電源に関する調査結果をまとめています。
地方公共団体における業務継続性確保のための 非常用電源に関する調査結果│総務省 2024
このサイトから全国の自治体の整備状況を調べることができます。自分の住んでいる自治体だけでなく、近隣の状況も知れるので、ぜひ参考になさってみてください。
地方公共団体のBCPの実効性に関する調査 -非常用発電設備の整備等を中心として-│総務省北海道管区行政評価局 2022