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日本のワクチン接種は遅れている!?日本と世界のワクチン接種事情を調べてみました!

ワクチン接種は、個人と社会全体の健康を守るために必要な公衆衛生対策です。しかし、ワクチンの種類や接種率、制度は国によって違いがあり、どの国にもメリットとデメリットが存在します。

この記事では、日本と海外のワクチン接種の現状を比較していきます。日本のワクチン接種のいいところ、改善する点を考える参考になりますと幸いです。

VPDとは?

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VPD(Vaccine Preventable Disease)とは、ワクチンで防げる病気のことを指します。

例えば、子宮頸がん予防のためのHPVワクチンでは、9価のワクチンを選択するとHPV感染の80-90%を防ぐことができると言われています。このデータからも、ワクチン接種が予防に有効であることが分かります。

日本のVPDの事例

日本では流行性耳下腺炎や麻疹などの感染拡大事例があります。これらは予防接種で感染拡大を防ぐことができる病気です。社会全体への感染拡大を防ぐためにも、ワクチン接種がいかに大切か考えるきっかけになりました。

流行性耳下腺炎

2015年から2016年にかけて流行しました。予防接種を受けていない子どもたちが多かったため、感染が広がりました。

麻疹と風疹

2019年に麻疹や風疹が流行しました。特に麻疹は非常に感染力が強く、感染後のしばらくしてから出てくる症状もあり、注意が必要です。風疹は妊婦がかかると、先天性風疹症候群とよばれる子どもが生まれるリスクが高くなり、こちらも注意が必要になります。

麻疹と風疹は1歳から受けられる予防接種。ワクチン接種できない子どもたちのためにも、受けられる人にはぜひ受けていただきたいワクチンです。
 
※先天性風疹症候群
免疫のない女性が妊娠初期に風疹に罹患すると、風疹ウイルスが胎児に感染して、先天性風疹症候群の子どもが生まれることがあります。主な症状は先天性心疾患、難聴、白内障です。

 

日本ではVPDで命を落とす子どもがいる

日本では、他の先進国と比較してVPDで命を落とす子どもの割合が多いことが課題となっています。この問題の背景には、ワクチンに対する考え方や制度の違いが存在します。

・任意のワクチンや日本では受けられないワクチンがあること
・VDPの啓蒙活動やワクチンの大切さを知る機会が少ない
などが挙げられます。

 

日本で受けられる定期接種の種類

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海外では当たり前のように定期接種となっているワクチンでも、日本では定期接種ではなく任意接種のものがあります。さらに、定期接種になったのもここ最近というワクチンも多いのです。

例えば、
・流行性耳下腺炎 任意接種
・Hibワクチン2012年定期接種開始(2008.12使用開始)
・小児肺炎球菌ワクチン2013年定期接種開始(2010.2使用開始)
・水痘2014年定期接種開始
・B型肝炎2016年定期接種開始
・ロタウイルスワクチン2020年定期接種開始

実はHibワクチン、小児肺炎球菌ワクチン、B型肝炎ワクチン、ロタウイルスワクチンはWHO(世界保健機構)から定期接種、かつ無料接種で国民を守るように指示しているものです。

さらに現在任意接種のおたふくかぜワクチンも先進国では無料化することが望ましいとWHOが勧告しています。しかし、おたふくかぜの定期化はまだ決まっていません。

さらに被害が多いインフルエンザや、急速に症状が悪化する髄膜炎菌感染症のワクチンは米国では定期接種になっています。

ワクチンの同時接種スケジュール

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子どもを持つ親なら誰でも悩む、我が子のワクチンスケジュール。何度も病院にいくのも大変です。

日本では2024年4月から、生後2ヶ月で5種類のワクチンを接種できるようになりました。
米国では生後2か月で6種類のワクチン、欧州でも6種混合ワクチンもあります。

同時接種や混合ワクチンは子どもに、付き添う保護者にとっても負担が少なくて済むので、メリットが大きく、日本でも世界でも好まれています。

 

ワクチン接種に向けたこどもの体調管理

日本では予防接種の前に問診票に体調を記入します。そして当日の熱が37.5度以下であることを確認してから接種します。

親にとっては予防接種当日に向けた体調管理は大変です。場合によっては当日接種できずに、体調が回復するまで待ち、再度予約することに。補助がでる接種期限もあることから、無事に接種が終わるまでドキドキです。

実は接種スケジュールが組みにくさが、接種率の低下やVPDが減らない理由とも言われています。

一方アメリカでは、「受けやすい体制をつくって、接種率を上げることが大切」という考え方がスタンダード。接種にあたって日本ほど細かなことにはこだわらないそうです。

 

ワクチンの安全性への考え方

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日本でも海外でも、ワクチンの安全性に対する考え方は同じです。

ワクチンは医薬品であり、副作用が出ることもあります。確率としては低くても中には重い症状が見られることがあります。

ワクチンによる副作用なのか、またはたまたまこのタイミングで起こった別の病気なのか、判別することが大切です。


HPVワクチン接種後原因不明の痛み

2013年6月、国内でHPVワクチン接種後に原因不明の痛みを訴える事例が発生し、積極的な接種の勧奨が中止されました。

しかし、この中止措置に世界保健機関(WHO)は2015年12月「ワクチン接種推奨を中止するような安全上の問題は確認されていない」と声明を発表しました。

さらに、200万人以上を対象に調査したフランスの事例では、接種後に見られる原因不明の痛みに関して「接種した人と接種していない人との間に有意な差は認められなかった」との結果が報告されました。
世界が子宮頸がん排除に向けてワクチン接種に積極的に取り組む中、日本の接種推奨の中止措置は批判を受けました。

そして国内でも様々な検討を重ねて、2021年11月にHPVワクチンの推奨接種が再開されました。


日本脳炎ワクチン接種による脳炎

日本脳炎ワクチンの接種後に重い脳炎を発症した子どもが報告され、一時的に接種が見合わせになりました。

しかし、2006年にWHOがこの事象を検討し、ワクチンが原因で重い脳炎になる可能性は根拠がないと確認されました。さらに日本脳炎自体が重大な病気であり、ワクチンで予防することが重要と結論づけました。

日本の専門家の間でも、接種後の脳炎はタイミングの偶然によるものである可能性が高いと考えられていました。そのため、ワクチン接種の再開が推奨されました。

現在、日本で使用されている日本脳炎ワクチンは、重い脳炎が発生した時と異なる、新しい細胞培養で作られています。この技術改良により、安全性がさらに向上しています。


「ワクチンを受けるメリット」を取るのが世界標準

HPVワクチンと日本脳炎ワクチンの事例を紹介しました。世界ではワクチンを受けるメリットが大切にされています。VPDの被害を受けることのリスクよりも大きいと考えているからです。ワクチンに対する考え方には、世界と日本で違いがあるようです。

 

日本と海外でのワクチン副反応の調査体制の違い

日本では、予防接種のあとに何らの症状が見られた場合、「副反応疑い」として医師が報告します。これは予防接種法で定められています。

報告内容一覧はこちら>

アメリカではワクチン接種後に見られた症状は接種者自身でも報告できるシステムがあります(VAERS)。真の副反応か否かは、大規模なモニタリングシステムで非接種者のデータも利用し、ワクチンと有害事象の因果関係を検証します。

 

安心してワクチン接種できる体制作り

この記事では海外と日本のワクチン接種事情の違いについてご紹介しました。

ワクチン接種は、個人と社会全体の健康を守るために重要です。国によって様々な施策がありますが、どちらにも良い点、改善すべき点があります。誰もが安心してワクチン接種できるよう、国として、自治体として考える参考にしていただけますと幸いです。

<参考サイト>
日本での VPD の流行と予防接種の現状│菅谷明則 2019
日本vs世界のワクチン事情2│Know VPD 2024
Hibワクチン定期接種化に至るまでの経緯と小児ワクチン接種の現状│国立感染症研究所 2013
子宮頸がん(ヒトパピローマウイルス)ワクチン接種後に起こる可能性のある症状(副反応)について │北九州市 2023