こどもの、こどもによる、こどものための選挙~茅ヶ崎市の子ども選挙の事例~
issuesの高松です!
「こどもたちが選挙の仕組みを学んだり、住んでいる地域の政治に興味を持ってもらえるような取り組みを知りたい」
「こども基本法」では、こどもは意見表明できる権利が明記されています。国や地域の社会のあり方を考えて、それを一緒に作っていく権利を持っているのです。
この意見表明の1つに「子ども選挙」があります。
子ども選挙は神奈川県茅ケ崎市の有志から始まり、2024年6月時点で全国9市で実施済み、2024年度内に3市で行われる予定です。
この記事では、子ども選挙のさきがけとなった2022年10月に開催された茅ヶ崎市長選でのこども選挙についてご紹介します。
全国こども選挙実行委員会 | ちがさきこども選挙
こども基本法
こども選挙が地域を変える。子ども選挙の5つ狙い
こども選挙には5つの狙いがあります。
①こどもが政治に興味を持ち、街を考えるきっかけにする。
②こどもが質問すると、政治家も分かりやすく説明してくれる。
③こどもが投票するなら、大人も投票にいくだろう。
④こどもの選挙と正規の選挙の結果の違いで、市政自体への興味関心が集まる。
⑤選挙結果がこどもと大人で違ったら、なぜ違うのか市政に関心が向くようになる。もし同じ結果でも、なぜこどもたちが選んだのかこどもの声が市政に届く。
こどものための選挙。【企画書から公開して実現しちゃおうnote】|池田 一彦 2022
子ども選挙の仕組み
子どもが聴く
子どもたちが質問を考えて、候補者にインタビュー。候補者はこどもでも分かるよう分かりやすく回答していきます。
子どもが伝える
候補者へのインタビュー内容をもとに、自分たちでこども選挙新聞を制作します。学校で配布したり、WEBメディアにして、茅ヶ崎のこどもたちに伝えます。
子どもが選ぶ
選挙当日は「子ども選挙投票所」を設置して、こどもたちが投票します。ネット投票もあり。投票結果は市長選のあとに公開します。
※市長選のときに発表すると公職選挙法違反になるため。
子どもが届ける
投票では候補者名、選んだ理由、想いを記入してもらいます。投票用紙をまとめて、候補者へ届けます。
こどものための選挙。【企画書から公開して実現しちゃおうnote】|池田 一彦 2022
スタートは「こどもならどんな政治家を選ぶのか」という疑問
日本では選挙権を持たない17歳以下は政治家を選ぶことができません。こどもたちの意見は政治に反映されにくいという課題がありました。
発起人の1人、池田一彦さんは「未来をつくる政治の影響を受けるこどもたちは、どんな人を選ぶのか、どんな未来を望むのか」という疑問を抱いていました。
池田さんの「子ども選挙という手段を使うことで、こどもたちのアクションを可視化できれば、自分たちの思いが届けられるかもしれない」という思いから子ども選挙がスタートしました。
こどものための選挙。【企画書から公開して実現しちゃおうnote】|池田 一彦 2022
子ども選挙委員発足
茅ヶ崎市に住む小学校3年生から6年生のこどもたち15名が中心となり、こども選挙委員を発足しました。
茅ヶ崎市のこと、選挙のことをワークショップで学び、それから候補者への質問事項を考えていきます。
ワークショップでは、
・茅ヶ崎市の好きなところ
例えば、公園がたくさんあるところ。
・茅ヶ崎市の残念なところと解決策
例えば、海にゴミがあるのが嫌→楽しく解決できる方法はないかな?→ビーチクリーンをしてビンゴをしたらいいのでは!
・問題解決には、誰が動くといいのか
例えば、国の仕事なのか、茅ヶ崎市の仕事なのか、個人が動くと解決できるのか。茅ヶ崎市の仕事ならば候補者に質問してみよう。
・茅ヶ崎市の市民活動家の方のお話を聴く
“みんながみんなで幸せになる”ためには、どうしたらいいんだろう? 「ちがさきこども選挙」ワークショップ、始まりました!|池田美砂子
まずは茅ヶ崎を愛することから。「ちがさきこども選挙」第2回ワークショップレポート|池田美砂子
候補者への質問事項を考える
15名のこども選挙委員がディスカッションして、候補者への質問事項を考えます。
茅ヶ崎市長選では、悩んだ結果3つまで質問事項を絞りました。
●市長になったら何をがんばりたいですか?その目的はなんですか?
●子どもと大人の意見をどのようにして取り入れますか?また、どのようにして実行しますか?
●茅ケ崎の中で、マンションを増やすことについてどう思いますか?また、マンションを建てるメリットがあると思いますか?
子どもたちの問いに候補者は動画で回答。こどもたちはその動画をもとに、こども選挙新聞を作りました。
こどもが市長選候補者に聞いてみたい、3つの質問とは。「ちがさきこども選挙」第3回ワークショップレポート|池田美砂子
子ども選挙当日。566票が集まる結果に
2022年10月30日に投開票が行われた茅ヶ崎市長選挙。「こども選挙」も同日開催で、小学生〜17歳のこどもたちによる模擬選挙を開催しました。
こども選挙の投票所は市内11か所、大人とこどもの総勢58名のボランティアで運営しました。
10時から15時の投票時間で399票の投票がありました。さらにネット投票と合わせて566票という結果に。
投票結果と子どもたちの思いをそれぞれの候補者に届けました。
おとなは本当の選挙へ、こどもはこども選挙へ。「ちがさきこども選挙」当日、私たちは主権者であるこどもたちの本気を見た。|池田美砂子
子どもたちが楽しんで選挙や政治に親しむ機会づくり
この記事では2022年10月に行われた神奈川県茅ヶ崎市のこども選挙をご紹介しました。
これから、神奈川県綾瀬市、愛媛県新居浜市、鹿児島県鹿児島市の市長選でもこども選挙が予定されています(2024年6月)。
こども選挙はボランティア中心の活動ですが、子どもたちが選挙の仕組みや市政に興味を持ち、自分たちの街を良くしたいという思いを市政に直接届けられる活動でもあります。
ぜひお住まいの自治体での参考になさってみてください。