ベンチの設置で安心して外出できるまちづくり|環境整備をした事例4つ

 

issues(イシューズ)の米久です。

近年、少子化が進み超高齢化社会に突入した日本で、高齢者等にやさしいまちづくりが注目され、その施策の一つとして歩道等にベンチを設置する取り組みが広がっています。本記事では、各地でベンチを設置する取り組みが拡大している背景、ベンチ等の休憩スペースを提供する自治体独自の取り組み事例4つを詳しくまとめました。ぜひ最後までお読みいただき、よりよいまちづくり、みちづくりの参考としていただけますと幸いです。

ベンチを設置する取り組みが広がる背景

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超高齢化社会を迎える日本では、諸外国に例をみない速さで高齢化が進んでおり、やがて1人の若者が1人の高齢者を支えるという社会になると予想されています。(2050年には65歳以上の高齢者1人に対し、20~64歳の人は1.2人と推計)

超高齢化社会における様々な課題を踏まえ、高齢者だから支えられる立場ではなく、「健康でいきいきとした生活を送ることができる」「高齢者が安心して外出できる地域づくり」が重要であるとし、休憩スペースや地域の交流の場としてベンチ等の設置を行う取り組みが各地で広がっています。

◉今後の高齢者人口の見通しについて

 

神奈川県大根地区|みんなのベンチプロジェクト

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坂道が多い大根地区では、公共施設やスーパー等に歩いていく際に「高齢者等が道の途中で休憩できるベンチがほしい」という声を受け、2021年に「みんなのベンチプロジェクト」が立ち上がりました。

2022年5月に、第一段となるベンチを作成、坂道の途中に設置しました。第二弾は、「北矢名北部朝市」の会場に設置。朝市場の付近には、およそ70軒の集落があり高齢者も多いため、朝市のときだけではなく、地域のコミュニケーションの場として利用されることも期待されています。

ベンチのデザインは、地元秦野産ヒノキを使った木の質感を残したものにし、多くの人が利用できるよう3人掛けにしたほか、高さや背もたれの長さなど、より良いベンチの制作に向け何度も会議を重ねた結果、こだわりと思いの詰まったベンチが出来上がりました。

◉みんなのベンチ設置

 

東京都三鷹市|ほっとベンチ

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東京都三鷹市では、「ベンチのあるみちづくり整備事業」を実施しており、ちょっと一休みできる場として、歩道や沿道にベンチ(通称ほっとベンチ)を設置しています。三鷹市では、バリアフリーのまちづくりとして歩道の段差等の解消に取り組んでいますが、「せっかくバリアフリー化されても、休める場所がなく外出しにくい」という市民の声を受け、ベンチ設置の取り組みが始まりました。

本事業は、ベンチの設置にともなう費用の一部として一口5万円の寄付を募集しています。希望により、寄付者の個人名、企業名、団体名、メッセージ等の刻まれたプレートを、ベンチに設置することができます。ほっとベンチのタイプは全5種類で、いずれも市民が座ったときにホッとする、あたたかい(心や気持ち)などの意味合いが込められ命名されました。

ほっとベンチ設置の目標は下記3つとしています。

①広い歩道がある幹線道路では、おおよそ100メートルから200メートル間隔を目標とした連続的な設置。

②生活に密着している歩道のない地域内道路では、市民の要望などを踏まえ地域にあった設置。

➂三鷹市を流れる河川やその遊歩道では、市の計画する「緑と水の回遊ルート」を中心にベンチからの眺望性等に配慮し、おおよそ50メートルから100メートル間隔での設置。

◉ベンチのあるみちづくり整備事業

 

静岡県伊豆の国市|ベンチでつながる地域づくり~伊豆の国市ベンチプロジェクト~

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静岡県伊豆の国市では、2016年6月から「ベンチ」を通して地域コミュニティを再生しようという取り組みが始まりました。地域の子どもたちからお年寄りまで、ベンチは誰でも、いつでも、何を話してもいい自由なふれあい空間として設置されています。

ベンチの制作には、建設業協会や大工組合、地域のシルバー人材センター工作同好会の方達だけでなく、伊豆総合高校の生徒など地域住民が多数参加するなどして地域全体でのまちづくりを行っています。

ベンチは背もたれのある3人掛けのものや、両側から座ることのできる仕様になっているものなどデザインは様々です。いつも同じ場所にあるベンチに、自分の足で、自分の力で歩みを進めることで、高齢者は生きがいをもち、子どもたちの会話は増え、大人たちの気にかける視点がうまれることなど、地域住民の憩いの場となるよう期待されています。

◉ベンチでつながる地域づくり~伊豆の国市ベンチプロジェクト~

 

福岡県福岡市|おさるのベンチプロジェクト

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福岡市では、誰もが気軽に外出しやすいまちづくりのため2011年から「みんながやさしい、みんなにやさしいユニバーサル都市・福岡」というプロジェクトをスタートさせ、実現に向けて、全庁を挙げて様々な取り組みを推進しています。その施策の一つとして、高齢者や障害者、妊婦や子ども連れの人等の休憩需要に応えるため、市内の歩道上などにベンチ等休憩施設、通称「おさるのベンチ」の設置に取り組んでいます。

ベンチ設置促進に向けた取り組みとして、ベンチ購入費補助金を交付しており、1基あたり最大10万円を補助。また、寄付の受付もしており、ふくおか応援寄付(福岡市へのふるさと納税)の寄付先の一つとなっています。寄付金は、福岡市が市有地等に設置するベンチの購入費に活用しています。

◉ベンチプロジェクト

◉福岡市のユニバーサルデザインの取り組み

 

ベンチの設置で誰もが外出しやすいまちへ

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以上、ベンチを設置する取り組みが拡大している背景、ベンチ等の休憩スペースを提供する自治体独自の取り組み事例4つをご紹介しました。

各自治体が実施している地域の環境整備の事例をヒントに、誰もが外出しやすい元気なまちづくりのため、本記事が参考になれば幸いです。