児童ひきこもり支援の可能性を広げる自治体の新たな一手
issuesのにしのです。
近年、ひきこもりになっている児童に対する基礎自治体のきめ細やかな支援が求められています。この記事では、自治体が実施しているひきこもり対策の具体的な事例や、検討すべき課題について解説します。最後までお読みいただき、多様なひきこもり支援を持つ自治体づくりの参考としてご活用いただければ幸いです。
基礎自治体がひきこもり対策を実施すべき理由とは
ひきこもり支援はこれまで都道府県・指定都市レベルの広域支援が主流でしたが、近年は基礎自治体が直接的に介入することが求められています。ひきこもりと一口にいえども、その状況や対応は多岐にわたるため、個々の事情に適した支援の提供が必要です。
それぞれの家族や地域とのきめ細やかな連携が欠かせないため、身近な基礎自治体が中心となり地域に根ざした支援を展開することで、より柔軟で効果的なひきこもり支援が期待できます。
以下、3つの自治体の事例を参考に、多様なニーズに対応するひきこもり対策を検討してみましょう。
学校から行政まで切れ目のない支援 ~滋賀県守山市の事例~
滋賀県守山市では、切れ目のない支援を目指し、ひきこもり支援カルテを活用した庁内連携を推進しています。不登校からひきこもりに至るケースでは、義務教育終了後のつながりの途切れや情報の引継ぎに関する課題が浮かび上がりました。ひきこもり支援カルテは、相談者の内容や前回の変化を定期的に記載し、専門職が情報を共有する際に効果的な手段となっています。
このカルテは約半年ごとの記入および、大きな変化があれば迅速に更新され、支援担当者が要点を把握するのに資料として活用されます。個人情報の保護に配慮しつつも、課ごとに権限のある数名が閲覧できるため、包括的な支援を円滑に進める材料として役立っています。
この取り組みにより、守山市ではひきこもり支援が学校から行政までの一貫した連携によって提供され、市民にもひきこもり支援が周知されるようになりました。
支援センターを初めて独自に設置 ~岡山県総社市の事例~
岡山県総社市は社会福祉協議会と協力し、ひきこもり支援センターを指定都市以外の基礎自治体として初めて設置しました。総社市ひきこもり支援センター「ワンタッチ」は、専任職員2名(精神保健福祉士、社会福祉士)が電話・メール・訪問での相談支援を提供しています。
従来のひきこもり支援は、生活困窮者世帯が主な対象であったため、すべてのひきこもり児童に適切な支援が行き届いていませんでした。そのため、総社市はまずひきこもり状態にある方々の実態を把握するため、地域の民生委員や福祉委員を組織の一員として所属させ、情報収集に取り組みました。
ひきこもりの状況は多岐にわたるため、把握が難しく、それに対応するために地域密着型の支援が必要です。岡山県総社市の取り組みは、ひきこもり支援において新たな一歩を踏み出す事例であり、地域社会全体での協力と連携が、問題解決に向けた大きな前進をもたらしています。
相談窓口の一本化と自発的な支援 ~鹿児島県瀬戸内町の事例~
鹿児島県瀬戸内町が進める「チームせとうち“我が事・丸ごと”支え愛事業」は、地域共生社会の構築を目指し、困りごとの相談窓口を一本化する取り組みを行っています。この事業では、高齢者や障害者、子どもなどの「対象者」だけでなく、ひきこもりなど「相談内容の属性」も問わず、「相談事はすべて地域包括支援センターへ」という仕組みを構築しました。
地域包括支援センターでは、情報共有シートを活用し、他部署との連携も図っています。この取り組みの目的は、複合的な問題を抱える方々の情報を一元管理し、関係者が共有できるようにすることです。ひきこもりの連絡や相談があった場合でも、情報共有シートによって即座に支援対象者の状況が把握でき、担当者が不在でも誰でも迅速な対応が可能になりました。
また、ひきこもりも行政支援の対象だと周知されたことにより、民生委員らが心配なケースを自発的に相談するようになりました。
この取り組みは、地域全体での協力体制を築き、効果的な支援を提供しています。相談窓口の一本化が自発的な支援を生み出し、相乗効果があったことを示しています。
自治体でひきこもり支援を行う際に検討すべき事
ひきこもり状態にある児童への支援は、年齢や要因の多様性から広域支援の役割分担だけでは十分な対応が難しいと言えます。支援団体のアンケートからも、好ましくない支援として”たらい回し”が指摘されており、自治体がまず率先して引きこもり問題を引き受ける体制づくりが肝心です。
もちろん家族への支援も欠かせません。ひきこもりで悩む世帯への支援にあたっては、さまざまな選択肢が用意され、それぞれに適した支援が提供されることが望まれます。一つの自治体だけで全ての支援を網羅するのは現実的に難しい場合が多いため、近隣自治体やさまざまな団体との連携を視野に入れた施策が重要です。
基礎自治体は、住民からの信頼感や影響力、ハード・ソフトの資源を活かし、情報集積地としてのハブ的機能を果たすことが期待されます。地域住民同士のつながりという資源を最大限に活用することで、ひきこもり支援の効果的かつ継続的な展開が期待できます。
身近な自治体だからこそできる細やかなひきこもり支援を
この記事では、3つの自治体の先進事例を取り上げ、ひきこもり児童に対する取り組みについて解説してきました。学校と行政との連携による切れ目のない支援や、相談窓口の一本化などの具体的な事例を参考にし、ぜひお住まいの地域でも役立つヒントとしていただければ幸いです。
【参考資料】
https://www.tama-100.or.jp/cmsfiles/contents/0000000/993/2020hikikomori_4.pdf
https://www.tama-100.or.jp/cmsfiles/contents/0000000/993/2020hikikomori_all.pdf
https://www.city.moriyama.lg.jp/kenkoufukushi/fukushiseisaku/1002564/1002323.html
http://www.sojasyakyo.or.jp/since2018/09hikikomori/hikikomori.html
https://www.town.setouchi.lg.jp/houkatsu/cho/chiiki/documents/01gaiyou2018.pdf