学校給食無償化 ~韓国の取り組み事例紹介~
- 自分たちの街で学校給食を無償化できないか?
- 子供を対象とした福祉施策を検討したい
このようなお考えはありませんか?
本記事では、
- 韓国における給食無償化の経緯と現状
について紹介します。
韓国での給食無償化の取り組み事例を知ることで、自治体における給食無償化に向けたヒントが生まれることでしょう。ぜひ最後までお読みください。
韓国における給食無償化の経緯
韓国の学校給食の開始は日本より遅く、1990年代に本格的に導入されました。現在までに加速度的に普及し、高等学校においても給食が実施されています。
韓国では2000年代から、困窮家庭への給食費支援(選択的福祉)から、全員を対象とする給食無償化(普遍的福祉)へ転換していきました。
2000年代初頭まで、韓国における給食は様々な課題(劣悪な委託給食、食中毒、給食費未納など)を抱えていました。そこで2002年4月、生徒の保護者を中心に、よりよい給食実施を叶えるため「学校給食全国ネットワーク準備委員会」が結成されました。
時を同じくして、国際競争に疲弊する農業の現状を訴えた農民団体が、地元の農産物を学校給食に活用する呼びかけを行っていました。
2002年7月には、前述の「学校給食全国ネットワーク準備委員会」や農民団体らが、政党主催の学校給食改正に向けての討論会に参加。翌年の2003年には、地元産の「親環境農産物※1」を学校給食に使用する条例制定に向け、市民運動が盛んに行われるようになりました。これらをきっかけに、「国産農産物の給食活用」と「給食無償化」を合わせた「親環境無償給食※2」の導入運動が高まっていったのです。
そして2010年の地方選挙選では、2,200団体が「国産農産物を使った給食無償化」を打ち出し、「親環境無償給食※2」の実施を公約とした候補が大量当選しました。このような経緯で、韓国では全国的に給食無償化が進んでいきました。
※1 新環境農産物とは?
環境にやさしい農産物。環境を守り、消費者に安全な農作物を共有するため、有機合成農薬や化学肥料をできる限り使用せずに生産した農産物をさします。
※2 親環境無償給食とは?
健康・環境・生態を最優先に考慮し、すべての食材の安全性に対して予防の原則を適用して、生産・加工・流通過程が生態的に持続可能で安全に行われる給食のことをさします。
韓国における給食無償化の現状
韓国では2020年現在、1万1,903校で給食が実施され、全国で547万人(人数比99.9%)が給食を利用しています。ほとんどの自治体で給食無償化が適用され、保護者負担は2010年が60.8%だったのに対し、2020年では5.1%と大幅に減少しています。
また、学校給食は新環境農産物の最大の供給先(2019年度)であり、大きな経済効果をもたらしています。しかしながら、近年の韓国は少子化が進んでいます。そこで、未就学児や高齢者などを対象とした、学校給食以外の公共給食にも親環境給食を拡大することが、地域における政策課題となっています。
住民参加で取り組む「フードガバナンス」としての給食無償化
本記事では、韓国での給食無償化の経緯や現状について紹介しました。自治体の給食無償化をはじめとした、住民参加で取り組む「フードガバナンス」に向けたヒントとして、ご活用ください。
【参考資料】
https://www.jstage.jst.go.jp/article/keidaironshu/67/5/67_79/_pdf
https://www.ffpj.org/blog/20220725
https://atomi.repo.nii.ac.jp/record/4141/files/atomi_manage34_04.pdf