男性育休取得率90%!父親も育休を取る国スウェーデンの施策とは

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近年、男性の育児参加が重要視される中、スウェーデンの育児休暇制度は世界でも類を見ない成功を収めています。男性の育児休暇取得率が驚異の90%に達し、父親が育児に積極的に関わるのが当たり前の社会となっているのです。

この記事では、スウェーデンにおける男性の育児休暇取得率の高さの背景にある制度や社会的要因を探り、日本との制度の違いや、スウェーデンの制度がもたらす効果について考察します。

ぜひ最後までお読みいただき、日本の父親の育児休暇取得率向上に向けた施策を検討する際の参考としていただければ幸いです。

スウェーデンの男性育休取得率は驚異の90%

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スウェーデンは、男性の育休取得率が非常に高い国として知られています。厚生労働省のデータによると、2022年度の日本における男性の育休取得率は17.1%にとどまる一方、スウェーデンでは90%を超える高い水準を達成しています。

例えば平日のストックホルムでは、街を歩けば、ベビーカーを押して颯爽と歩く男性や、公園で子供と遊ぶ父親の姿が日常的に目に飛び込んできます。これは、男性が育児に積極的に参加する文化が社会全体に根付いていることの証拠です。

この風景は、日本とは対照的なものです。育休取得が広く一般化しているスウェーデンならではの光景であり、私たちが目指すべき未来像と言えるでしょう。

男性が積極的に育休を取る「パパ・クオータ制」の仕組み

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スウェーデンの男性が高い育休取得率を誇る背景には、「パパ・クオータ制」の導入が大きく影響しています。パパ・クオータ制では、90日間の育休期間が自動的に父親に割り当てられるという画期的な仕組みを設けました。

詳しく説明すると、両親が合計480日間の育休を取得できる中で、90日間は「父親だけ」が取得できるよう定められています。もし父親がこの期間を取得しなかった場合、給付金を受け取る権利を失ってしまうという「損をする仕組み」を導入したのです。

パパ・クオータ制の導入以降、スウェーデンの男性育休取得率は1990年代初頭のわずか数%から現在の90%へと飛躍的に向上しました。これはパパ・クオータ制が男性の育児参加を強力に後押ししていることを示しています。

日本でも「パパママ育児プラス」という似た制度があり、男性が育休を取得すると育児休暇期間が延長される仕組みがあります。しかし、スウェーデンの制度と比べると強制力に欠けるため、男性の育休取得率は依然として低迷したままとなっています。

スウェーデンの育児休暇制度がもたらす効果

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ワークライフバランスの向上

スウェーデンの充実した育児休暇制度は、ワークライフバランスの向上に大きく貢献しています。スウェーデンの職場では、育児休暇取得が当たり前の文化として根付いており、育児と仕事の両立をしやすい環境が整っています。こうした環境下では、従業員のモチベーション向上と生産性向上が見られ、企業にとってもメリットが大きいことが示されています。

また、出産直後から母親のワンオペになりやすい有給取得率の低い国と比較すると、スウェーデンは育児に男性も積極的に関わるため、家庭全体の生活の質の低下が見られません。男性が育休を取りやすい仕組みを整えたことで、仕事も子育ても充実した生活を送ることが可能になりました。

家族関係の強化と子供の発育への影響

育休取得は、家族の関係性にも多くのメリットをもたらします。父親は子供と過ごす時間を増やすことができ、子供の成長を間近で見守ることができます。これは、子供の発達に良い影響を与えるだけでなく、夫婦間の役割分担も進みます。

また父親が育児に積極的に関わることで、子供は情緒が安定し、学習意欲も向上すると言われています。夫婦間の信頼関係も強化され、同じ情報を共有していることによって、家庭内コミュニケーションも円滑化することが期待できるでしょう。

日本とスウェーデンの育児休暇制度の違い

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日本とスウェーデンの育児休暇制度は、その設計と利用率において顕著な違いがあります。

日本では、育児休暇の取得が職場でのキャリアに影響することが懸念され、男性の育休取得率が低い原因になっています。スウェーデンでは、男性の育児休暇の取得が文化的に受け入れられており、職場でも支援されるため、取得しやすい環境が整っています。この違いは、男女平等や働き方改革における各国の姿勢の違いを反映しています。

日本での育児休業中の給与は、最初の6ヶ月は給与の67%、その後は50%が支給されますが上限があります。一方スウェーデンでは、最初の390日間は収入の約80%、残りの90日は定額と、高い給付水準を持ちます。

そして前述した通り、スウェーデンは父親の育児休暇取得を強く推奨する仕組みを構築しています。これは、国家理念としてジェンダー平等を掲げ、育児休暇制度もその観点から設計しているからです。

日本では依然として性別役割分担の意識が根強く残っており、育児休暇制度の利用に大きな影響を与えています。

スウェーデンの育児休暇制度が示す未来

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スウェーデンの育児休暇制度は、男女平等の実現と家族関係の強化において、大きな成果を上げています。日本においても、仕事と育児の両立を支援する制度整備や社会全体の理解促進、ひいては男性の育児参加促進による働きやすい社会の実現が喫緊の課題と言えるでしょう。

スウェーデンの事例を参考にしながら、日本の育児休暇制度を改善し、多くの父親が積極的に育児に参加できる環境を整備していきましょう。

【参考資料】
育休男性85%の国、北欧スウェーデンの育児休暇事情(現地レポート)|SaaS辞典|2022
北欧の育休事情:男性の仕事と子育ての両立 ~デンマーク事例~ |株式会社リクルート|2024
「制度は立派なのに…」の日本 男性育休の先進国ヨーロッパ、何が違うのか|朝日新聞GLOBE+|2021
「来週から3ヶ月休むから」でも仕事が回る!?スウェーデン男性の育児休暇取得率と生産性の関係|創業手帳|2017
スウェーデンにおける仕事と育児の両立支援施策の現状 |労働政策研究・研修機構|2024