部活動の地域移行が促進される背景とは?質の高い教員確保への一手

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学校の部活動運用を民間に委ねる「地域移行」の動きが加速していますが、その実施背景や必要性をご存じでしょうか?この記事では、部活動の地域移行について詳しく解説していきます。なぜ部活動を地域移行する必要が生じたのか、国のプランはどのようなものなのか、そして地域移行のメリットやデメリットについても解説していきます。ぜひ最後までお読みいただき、部活動の地域移行が抱える意義や課題についての理解を深めてください。

部活動の地域移行とは?

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部活動の地域移行とは、これまで学校教員が担当してきた部活動の指導を、地域団体や関連する事業者に委ねる取り組みを指します。この方針は2020年に国が表明し、少子化によって廃止が懸念されている部活動の維持や、教員の働き方改革の両立を目指しています。2023年度からの3年間を「改革推進期間」と位置づけ、普及活動を行っています。

部活動の地域移行がなぜ必要になったのか

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部活動の地域移行が求められる背景には、生徒のニーズの多様化や、教員の勤務負担増が挙げられます。2016年度に文部科学省が発表した教員勤務実態調査によると、月80時間を超える残業をした中学校教員が約6割に上り、過労死ラインにあることが明らかになりました。部活動顧問としての指導責任が過重労働を招いている一因であり、改善が求められていました。

そもそも部活動は必ずしも教員が指導する必要はないにもかかわらず、文部科学省の調査によれば教員の約8割が顧問を担当しています。休日返上で指導に当たる慣例から教員の志望者数が低迷し、深刻な教員不足の直接の原因になっています。

部活動地域移行が実現し地域の有志や専門家が指導に参加することで、教員の負担を軽減するとともに、生徒の多様なニーズに対応する充実した部活動を提供できると期待されています。

地域移行にむけての国のプラン

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地域移行に向けた具体的な活動形態として、教育委員会や自治体が関係団体と連携して運営するタイプ、市区町村が任意団体を設置・運営するタイプなど、さまざまな形態が存在します。国は2023年度、自治体が指導員に支払う報酬などを支援するために28億円の予算を確保しました。全国の339市区町村がモデル事業に参加しており、2025年度までを推進期間として地域移行を拡大していきます。

まずは公立中学校で休日に行われる部活動を対象に、地域移行を早期に実現する取り組みが行われています。そしてその実績を元に、私学や高校における活動においても順次地域移行を進めていく計画が策定されています。

部活動地域移行のメリット

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部活動の地域移行は教員の負担軽減につながります。これまで部活動の顧問になった教員は週末も指導のために出勤することが慣例であり、大会が行われる月はほとんど休めませんでした。地域移行が進んでいる学校の教員からは「地域移行のおかげで連休をとることが可能になり、精神的な負担が減った」と歓迎する意見が挙げられています。労働環境が改善することで、教員志望者が増えることが期待されます。

また、専門的な技術を持つ外部の指導者が部活を受け持つことにより、生徒が専門的な指導を受けられる利点があります。プロチームや大学から現役選手を派遣している自治体もあり、生徒たちからも「技術的な改善点を指摘してもらえるので上達できそう」と好評を得ています。

地域と学校の接点が増えることで、防災や防犯、あるいは授業での協力など、部活動以外でもプラスになる場面もあると考えられます。副次的な資産としても部活動地域移行は期待されています。

部活動地域移行のデメリット

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部活動地域移行は積極的に推進されていますが、デメリットも見逃せません。喫緊の課題とされているのが保護者の費用負担の増加です。例えば、富山県黒部市では地域移行を進めた際、指導員への報酬として1人当たり年間約7000円の上乗せ負担が必要になりました。市教育委員会の調査によれば、部活動費の増加に対し「負担に感じる」と回答した保護者は4割に上ります。

地方では外部指導者の確保が難しい状況もあります。特に中山間地域や離島では外部人材が不足し、地域移行を希望しても指導者を見つけられない自治体が多い現状があります。根本的な人材不足が解消されない限り、地域移行の安定的な継続は難しいでしょう。

また、教員以外の指導者が学校活動を担当するリスクも懸念されています。過去には勝利至上主義に陥った外部指導者が体罰をふるった事例も報告されており、指導者の倫理管理や安全面での配慮が求められます。

これらの課題に対処するためには、地域の状況やニーズに合わせた慎重な計画と、自治体と学校の連携による十分なサポート体制の構築が必要です。

部活動の地域移行は各位足並みをそろえて実施しよう

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この記事では、部活動の地域移行について解説しました。質の高い教員確保のためには、負担が大きい顧問活動の見直しや、地域の指導者の掘り起こしが必要です。部活動の環境の変化は子どもたちに大きな影響を与えるため、地域移行の実施には各位足並みをそろえた取り組みが必要です。

ぜひ、この記事の内容を参考にし、お住まいの地域における部活動の今後の展開について考えてみてください。地域移行が抱える意義や課題についての理解を深め、地域の発展に貢献できる一歩を踏み出していただければ幸いです。

【参考資料】
https://www.mext.go.jp/content/20220727-mxt_kyoiku02-000023590_2-1.pdf
https://www.mext.go.jp/content/20230428-mxt_zaimu01-000029160_2.pdf