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部活動の地域移行事例集【西日本編】

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少子化の進行や教員の働き方改革を背景に、部活動の地域移行が自治体にとって重要な課題となっています。この記事では、西日本地域における運動部と文化部の地域移行事例を紹介していきます。各都道府県の事例を通じて、地域移行の重要性や具体的なメリットを学んでいきましょう。ぜひ最後までお読みいただき、地域の発展に寄与する部活動地域移行のヒントとしていただければ幸いです。

運動部の地域移行の事例(西日本編)

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福岡県宗像市

■指導連携先:宗像ストレインベースボールクラブなど
■委託費:750,418円

宗像市における部活動の地域移行は、市のスポーツ部局が中心となり、地域スポーツクラブの設立と持続可能な運営をサポート。休日の運動部活動を完全に地域移行することを目指しています。

地域クラブの立ち上げは需要に合わせて行われ、中学校運動部活動改革のロードマップや基本方針、競技種目別の受け皿クラブ数などが具体的に定められました。実態調査を基に、最大で30クラブの必要性が算出され、それに応じた支援が行われています。

具体的な支援策としては、コーチ陣への謝金補助やクラブ立ち上げ時の必要な消耗品の補助、中学校施設の開放による活動場所の確保などが挙げられます。さらに、コーチ資格の助成や独自大会の開催補助など、将来的な支援策も計画されています。

長崎県長与町

■指導連携先:NPO法人長与スポーツクラブ
■委託費:1,068,000円

長崎県長与町では、地域のスポーツクラブが中心となり、部活動の地域移行を進められました。この計画は「長与町運動部活動地域移行推進計画」として策定され、令和5年4月からは、休日の運動部活動がすべて地域スポーツクラブ活動に移行されています。

推進計画では長与町教育委員会、長与町立中学校、そしてNPO法人長与スポーツクラブが連携・協力し、地域移行を実現化。教育委員会が部活動の地域移行コーディネーターを配置し、学校と地域の連絡調整を円滑に行う体制も整備されています。

さらに国などによる財政支援も念頭に置かれ、経済的に苦しい状況にある中学生が地域スポーツ活動への参加を断念することがないよう、予算要求を行い、可能な範囲で支援を準備しています。

沖縄県うるま市

■指導連携先:スポーツデータバンク株式会社など
■委託費:1,277,760円

うるま市では、民間事業者と連携協定を結び、部活動の地域移行を実現しています。連携協定締結の主な目的は、質の高い指導者の確保と育成、そして保険制度の充実です。

市とスポーツデータバンク株式会社、三井住友海上火災保険株式会社の三者が連携し、指導者の保障や資質向上のための教育・認証制度を開発。特に、E-Learningによる教育プログラムを通じて、指導者には技術指導だけでなく、ケガ防止やハラスメント対策、コンプライアンスなどの幅広いスキルも提供されています。

資金調達においては、成果連動型民間委託契約方式(PFS)と企業版ふるさと納税を組み合わせた手法が採用されました。この取り組みでは、PR業務を外部委託し、成果連動型の契約によって民間活力を最大限に引き出しています。企業版ふるさと納税を活用する際には、事業の趣旨を明確にし、広く寄付を募るためのPR活動も行われました。

滋賀県彦根市

■指導連携先:稲枝地区学校支援協議会
■委託費:1,703,400円

彦根市では、学校支援ボランティア団体との連携により、地域クラブ活動への移行が合計7部活動で実現しています。

稲枝地区学校支援協議会では、地域運動部活動事務局を設置し、地域クラブ活動を運営。この協議会は、地域の8校園に対する学校支援ボランティア団体として2008年に発足し、地域活動の基盤を築いてきました。地域学校協働本部を受け皿団体として取り組んだ稲枝中学校区では、円滑な移行が実現しました。

しかし他の中学校区では指導者の不足やコーディネーターの不在が課題となっているため、今後も持続可能な指導者の確保が必要です。大学などとの連携強化や、地域の若者を指導者として育成する取り組みが計画されています。

石川県宝達志水町

■指導連携先:NPO法人宝達スポーツ文化コミッション
■委託費:826,670円

宝達志水町における部活動の地域移行は、活動をスポーツ文化コミッションと連携して実施することで実現しています。生徒や保護者からは、専門の指導者による指導の質の向上や活動の質の向上に対する肯定的な意見が寄せられています。

活動の実施主体であるNPO法人宝達スポーツ文化コミッションが指導者の登録や派遣、安全管理、活動場所の確保など幅広い事務業務を担い、運動施設の指定管理業務もワンストップで行うことで、管理や運営において柔軟な対応を可能にしました。

また、学校部活動と同種目の競技クラブを多数創設し、各競技協会や指導者個人とのつながりを構築することで、さまざまな競技の指導者や活動場所を確保しやすくしています。

文化部の地域移行の事例(西日本編)

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大分県大分市

■指導連携先:大分県吹奏楽連盟
■委託費:700,000円

大分市立稙田西中学校の吹奏楽部では、休日の部活動を地域移行し、外部指導者のみで指導する取り組みを検証しました。生徒や保護者、教職員、実施主体に行ったアンケートからは、顧問負担の軽減が実感されており。また生徒の大半が外部指導者を肯定的に捉えています。

外部指導者のみで活動する際には安全面の懸念が指摘されていましたが、警備員の配置や危機管理マニュアルの作成などで、事故や事件時の対応を情報共有し、しっかりとした安全対策を行っています。

愛知県豊田市

■指導連携先:地域部活動指導者
■委託費:630,000円

豊田市における部活動の地域移行の事例は、生徒の成長と教員の負担軽減の両面で効果を発揮しています。地域指導者の専門的な指導は生徒の技術と意欲を高め、顧問教師の負担を軽減します。

地域部活動指導者の確保には、地区への広報や学校関係者による声掛けが行われ、校長による面接を経て選定されました。指導者の研修会やガイドラインの遵守により、指導の質を担保。連絡調整も顧問と指導者の共同期間や教員の兼職などでスムーズに行い、安定した運営を可能にしました。

兵庫県加古川市

■指導連携先:地域の吹奏楽経験者
■委託費:500,000円

加古川市では地域指導者の参加による休日部活動の地域移行を実施した結果、教職員の負担が準備を含めて月に16時間以上も削減されました。大会や活動の引率、指揮も地域指導者が担い、顧問教員の労働環境改善に大きく寄与しています。

地域移行に際し、専門家会議で整理された「休日の文化部活動の地域移行を推進するための7つの視点」を基に課題を洗い出し、実践事例をリーフレットにまとめて周知・啓発を行いました。

課題としては、保護者や学校が安心して預けられる指導者の確保が挙げられます。今後は受益者負担の観点から保護者負担を求める予定ですが、補助金の活用や関係課との連携により、負担が大きくならないように計画が進められています。

奈良県生駒市

■指導連携先:リトルパイン総合型地域スポーツクラブ
■委託費:525,194円

生駒市では、教育委員会と地域スポーツクラブが連携して、部活動の地域移行を推進しています。休日には拠点校の吹奏楽部に専門指導者を派遣し、地域での活動を実施しています。これにより、顧問の負担軽減や生徒の技術向上が図られています。

具体的な指導に対しては、専門指導者が技術的なアドバイスや練習課題を提供し、個々のレベルに合わせた細やかな指導を行っています。また、適切な休憩や練習方法など、基礎的な指導も行われており、生徒の技術向上につながっています。

運営面では市教育委員会が中心となって指導者の募集や配置を行い、指導者の兼職・兼業に関する制度整備や地域クラブの創設に向けた取り組みを進め、円滑な運営を図りました。

鹿児島県与論町

■指導連携先:ヨロンSC音楽教室指導者など
■委託費:520,000円

鹿児島県与論町における部活動の地域移行は、顧問教諭の負担軽減と地域支援の高まりをもたらしています。地域移行前と比べて、吹奏楽部の指導に携わる顧問教諭の時間は1〜2割削減され、その負担が軽減されたことが確認されています。

また地域部活動推進協議会は、休日の部活動の地域移行に関する文書を家庭に配布し、理解を求めました。町民の間で吹奏楽部を地域で支えようという意識が高まり、地域指導者の数も増加。平日と休日の両方で指導できる人材を任用することで、学校部活動と地域部活動の接続が円滑に行えています。

生徒たちへのアンケート調査では、地域移行によるデメリットはないとの回答が得られており、学校部活動との連携を維持しつつ与論町ならではの活動が期待されています。

部活動の地域移行で子供・教員双方に恩恵がある地域づくりを

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この記事では、西日本地域における運動部と文化部の地域移行事例を紹介してきました。各都道府県の事例を通じて、地域移行の重要性や具体的なメリットを学べたのではないでしょうか。これらの先行事例を参考にし、地域の発展に貢献する部活動地域移行のヒントとしてご活用いただければ幸いです。

部活動の地域移行は、子供たちの成長と教員の働きやすさにとって重要な要素です。地域の未来を担う子供たちにとっても、より良い環境で活動できることは大きな恩恵です。自治体や関係者が協力し合い、地域全体の発展につながる取り組みを推進していくことが求められています。皆さんの地域でも、部活動の地域移行が住みよい街づくりの一翼を担うことを願っています。

【参考資料】
https://www.mext.go.jp/sports/content/20230919-spt_oripara-000028259_01.pdf
https://www.bunka.go.jp/seisaku/geijutsubunka/sobunsai/pdf/93942801_01.pdf