【議員向け解説】プログラミング教育必修化から5年。教員の7割が抱える「不安」と議会が果たすべき役割

こんにちは。issues運営事務局です。

小学校でのプログラミング教育必修化から5年。GIGAスクール関連予算が第2期に向けてさらに拡大していく一方で、教員の約7割が「不安」を抱えています。本記事では、現場の実情と政府方針を整理しつつ、地方議会として押さえておきたいチェックポイントを解説します。

プログラミングを取り巻く意識の変化

プログラミングを取り巻く意識の変化

学習指導要領改訂により、2020年からプログラミング教育が小学校で必修化されました。

プログラミング教育と聞くと、「ちょっと専門的な世界の話」や「理系の子向けのニッチな取り組み」等のように感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ところが、複数の民間調査(※)では、将来なりたい職業として「ITエンジニア・プログラマー」が中学生・高校生でいずれも上位に入っており、多くの子供達から関心が寄せられていることがわかります。

※)参考:
中高生が思い描く将来についての意識調査2025(ソニー生命)
小学生・中学生・高校生の日常生活に関する調査<第二弾>結果を発表(学研ホールディングス)

しかし、教育現場の目線では、プログラミング教育はどのように扱われているでしょうか。

 

学校現場で顕在化している課題

学校現場で顕在化している課題

端的に表すと「大事なのは分かるけれど、現場が回っていない」というのが、多くの学校の本音ではないでしょうか。

文部科学省が出している「小学校プログラミング教育の手引」は、そもそも「教師の皆さんがプログラミング教育に対して抱いている不安を解消し、安心して取り組んでいただけるようにすること」をねらいとして作られています。

「手引そのものの目的が教員の不安解消」ということは、裏を返すと「プログラミング未経験、あるいは経験が浅い教員が多い」や「やり方が分からない不安がかなり強い」という現状認識が、国側にもあるということです。

民間の調査を見ても、同じ傾向がはっきり出ています。全国の小学校教員を対象とした調査(※)では、
・プログラミング教育の必修化に「とても不安」「やや不安」を感じる教員が7割以上
・「授業にかかる負担が大きく増えた」「やや増えた」と感じる教員が約9割
という結果が報告されています。

※)参考:
プログラミング教育必修化に不安を感じている教員は7割以上、LINEみらい財団が調査(EdTechZine)

小学校教員1024人を調査 約7割が「プログラミング教育に手ごたえある」と回答~リトルソフト調べ(教育家庭新聞)

先述の調査によると、主に以下のような不安の声があるようです。

・日々の業務でプログラミング教育のことを考える時間や余裕がない
・プログラミング教育の授業を通じた評価の仕方が分からない
・具体的な指導案や授業例などの情報を得られていない
・どの教材を使えばいいのか分からない

現場の教員からすると、「プログラミング教育は必要だと思うし、子どもたちのためにもやりたい。でも今の業務量のまま、十分な準備もないままやれと言われると、正直しんどい」

というのが率直なところではないでしょうか。

これは「プログラミング教育の是非」というより、「教員の働き方改革」や「研修やサポート体制をどう整えるか」などに掛かってくると考えられます。

 

文科省の掲げる目標と、地方議会がチェックすべき「投資対効果」

文科省の掲げる目標と、地方議会がチェックすべき「投資対効果」

なお、文科省は、プログラミング教育で何を目標にしているのでしょうか。

文科省の小学校プログラミング教育の手引の関連資料小学校プログラミング教育の概要では、小学校段階のねらいとして、概ね次の3点が示されています。

・プログラミング的思考を育むこと:自分が意図する活動を実現するために、必要な手順や命令の組み合わせを考え、改善していく力
・コンピュータや情報技術の働き・社会的な役割に気付くこと:身近な生活や社会の中で、コンピュータがどのように使われているかを理解すること
・各教科の学びをより確実なものにすること:算数や理科などの学習内容を、プログラミングを通じて深めること

もう少し大きな枠組みで見ると、以下のような長期的な人材政策の一環として位置づけがされています。

・情報活用能力を「言語能力と並ぶ学習の基盤」と位置づけること
・小・中・高を通じて一貫した情報教育(プログラミングを含む)を行うこと
・Society5.0やAI時代に対応できる人材を育成すること

ここで注目すべきは、国費の動きです。

文部科学省の令和5年度補正予算資料によれば、GIGAスクール構想第2期に向けた1人1台端末の「着実な更新」のために、総額2,661億円、そのうち公立学校の端末更新費として2,643億円が計上されているようです。

また、「第2期GIGAスクール構想」でも、端末の計画的な更新を5年前後かけて進める方針が示されています

ハードウェア(端末)に巨額の投資をしても、それを動かすソフト(指導力・教材)が力不足であれば、投資対効果の面で課題が残るのではないでしょうか。

 

さいごに:ウェビナー紹介

今回、鹿児島市教育委員会教育DX担当部長の木田様をお招きし、「公教育におけるプログラミング教育の課題と解決策」をテーマにした勉強会を2026年1月に開催します。木田様は複数の自治体で教育委員会のアドバイザーを務めてこられたご経験をお持ちで、現場の実情に即したご助言が可能です。当日は、皆さまの自治体の状況に引きつけたご質問も歓迎です。

次回の一般質問や、担当課へのヒアリングに役立つ情報が満載です。ぜひご参加ください。

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