「IT人材がいない」と諦めない!予算と規模に合わせた柔軟な人材活用で自治体DXを加速させる

株式会社issuesとレバテック株式会社の共催による地方議員向け勉強会が開催の様子をわかりやすくマオ止めてみましたのでぜひ最後までご覧ください!地方自治体が直面する、人口減少による人手不足。

この深刻な社会課題を、専門知識を持つ企業との官民競争(官民連携)を通じて解決することを目指し、今回は特に業務効率化とIT人材の確保に焦点を当てました。

レバテック株式会社の田中様からは、「ITができる人がいないと諦めていませんか?予算も規模に合わせた柔軟な人材活用で業務効率化を行うには」というテーマで、地方自治体が進めるべきDXの現状と具体的な解決策が提示されました。

今の自治体サービスを維持か、それとも破綻か

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現在、自治体サービスを維持することは容易ではありません。急激な人口減少が見込まれる中、DXや業務効率化を進めなければ、行政サービスそのものを維持できなくなる危機にあります。

総務省の「自治体戦略2040構想」でも、今後、自治体職員が大幅に減少することが予測されています。これまでの業務フローを変えることなくサービスの質を維持するのは、もはや現実的に不可能です。

現在の自治体が直面している状況を「業務効率化を進めて問題をクリアするか、サービスの縮小、もしくは破綻という二択しかないと言っても過言ではない」 と述べ、DX化と業務効率化が自治体経営の維持に関わる、最も重要な課題であることを強調しました。

今回の講師の講師をご紹介します

講師:田中智樹氏

レバテック株式会社
ITソリューション事業部
地方支店統括講師

10年以上ITプロ人材と企業の双方を支援。 福岡支店の立ち上げを行い地方市場の活性化に貢献しました。 現在は、地方支店全体の管理と関東エリア大手向けのプロ人材支援責任者を兼務。 地方から首都圏まで、企業の課題解決とプロ人材の活躍を全方位でサポートしている。

 


1. 自治体DXを阻む、4つの構造的な壁

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多くの自治体がDXの必要性を理解しながらも進められないのは、以下の4つの複合的な要因が絡み合っているためです。

課題1:深刻なIT人材不足

ITの専門知識を持つ職員が決定的に不足しており、DX推進の最大の壁となっています。

  • 課題の「翻訳者」がいない: 現場の「困りごと」(例:手入力が多い、面倒だ)を、具体的なITソリューション(例:AI-OCRで自動読み取り)に結びつける「翻訳者」の役割を担うIT人材が不在です。
  • 外部採用の困難さ: 外部からのIT人材採用は、民間企業との間で獲得競争が激化しており、困難な状況にあります。IT人材は5年後には約79万人不足すると言われています。

課題2:根強いアナログ文化

紙やハンコを中心とする長年の業務習慣が根強く残っています。これにより、非効率な時間が大量に発生しています。

  • 非効率な時間の発生: 「探す」時間、「移動する・待つ」(押印リレー)時間、「転記する」時間といった単純作業に多くの時間が奪われています。
  • 直接的なコスト増大: 用紙代やインク代といった直接的な経費に加え、大量の書類を保管するためのキャビネットや書庫が庁舎内の貴重な不動産コストを圧迫しています。
  • 住民ニーズとの乖離: 平日の昼間に窓口で手書きの手続きを求めるやり方は、スマートフォンでの手続きに慣れた住民にとって不便さとなり、約8割の住民が行政手続きのオンライン完結を望んでいます。

課題3:予算の制約

DXは「高価な買い物」というイメージが心理的なハードルとなっています。

  • 財源の確保が最大の課題: 総務省のアンケートでも、DX推進の課題として「財源の確保」が最も多く挙げられています。
  • 小規模自治体の構造的な問題: 大都市と同じシステムを導入する際、初期費用が働きにくいため、小規模自治体ほど割高な投資を強いられる構造的な問題を抱えています。

課題4:業務効率の低下による「負のサイクル」

職員が非効率な定型業務に忙殺される。その結果として、業務改善や新しいツールを学ぶ「余力」を捻出できず、DX推進が停滞し、非効率な業務が翌年度も温存されるという悪循環に陥っています。

このサイクルからいち早く脱して、成功した事例を次はいくつかご紹介します。


2. DX化がもたらす効果と成功事例

 

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DX化は、業務効率化、住民サービス向上、コスト削減、データ活用など、自治体業務の様々な観点でプラスに働きます。

効果分野 DX化後(After)の具体的な変化 根拠となる事例
業務効率化 電子化により作業時間が大幅に削減され、定型業務の自動化(RPA)で本質業務に集中可能。 京都府 亀岡市:RPA導入により合計455時間(削減率54%)の業務削減を達成。
住民サービス 開庁時間のみの手続きから、24時間365日オンラインでの手続きが可能に。 北海道 北見市:「書かないワンストップ窓口」を導入。職員が質問をシステムに入力し、申請書を自動作成。年間約3,375分の業務時間を削減。
コスト削減 紙文書の印刷・保管コストが大幅に削減される。 愛知県 岡崎市:RPAとOCR(紙文字読み取り)の組み合わせで、令和4年度に2,000時間超の削減を達成。
データ活用 データ分析により住民ニーズを的確に把握し、EBPM(証拠に基づく政策立案)を実現。 新潟県 柏崎市:予算書のデジタル化により、数字をグラフ化し検索・絞り込み機能を充実させ、市民にとってのわかりやすさを向上。

3. フリーランスIT人材による「スモールスタート戦略」

DXは大規模開発でなければできないというイメージがありますが、フリーランス人材を活用することで、上記4つの課題を解消し、「小さくDXを始める」ことが可能になります。

(1) フリーランス活用の主要メリット

フリーランス活用は、柔軟性とコスト効率において、従来のシステム受託開発と大きな違いがあります。

比較項目 従来型開発(ウォーターフォール型) フリーランス活用(アジャイル型向き)
人材確保 正規職員採用や大手ITベンダーは流動性が低く、人材確保が困難。 流動性が高いため、必要な時にスポットで市場から調達しやすい。
柔軟性 最初に仕様をかっちり固める必要があり、途中の仕様変更が難しい。 密なコミュニケーションを取りながら、途中で修正や方向転換が可能。
初期コスト 高額になりやすい(数百万円〜数千万円規模)。 低コストで開始可能(数十万円からスタート可能)。
ノウハウ蓄積 納品物のみで、町内にノウハウは残りにくい。 職員とフリーランスが連携するため、IT関連知識が町内に蓄積される。

(2) コストを柔軟に調整する方法:人月の活用

特に予算制約の大きい自治体にとって、コストの柔軟性は重要です。

フリーランスは、1ヶ月間の稼働量を意味する「人月」でコストを調整できます。例えば、月70万円のスキルを持つ人材でも、週5日(1人月)ではなく週2日の稼働に抑えれば、コストは月28万円ほどに抑えることが可能です。(もちろん、案件やどの程度のDX化を行うかによりますのでご参考程度に考えていただければと思います。)

(3) 神戸市の成功事例:納期と柔軟性の確保

神戸市は、支援情報検索サイト「Smart 神戸」の開発において、フリーランスを活用し成功しました。開発期間が短縮した際、大手ITベンダーには断られましたが、レバテックフリーランスを通じて市場から全国のIT人材を調達し、プロジェクトを完遂させました。

【神戸市のDXが大手企業で進まなかった理由】

・諸事情で開発をスタートできず、開発期間が短かった

・開発スタートが遅れたため人材が確保できなかった

・開発会社の場合複数ポジションの方を介してコミュニケー ションが必要

・大きめの予算と長い期間が必要

 

これらの問題をフリーランス人材を使用して解決しました。
そのポイントは以下のとおりです。

・フリーランス活用で短い期間でも完了

・市場調達型のフリーランスですぐにマッチする人材を獲得

・関わるのは基本的にはフリーランス人材のみ。

・コミュニケーションが簡潔。 レスポンスも早い。

・予算は人月などで調整可能。期間も短いも のから長いものまで柔軟。

 

これらの要因から神戸市はDXをフリーランス人材を活用することで進めることができました。

参考記事:納期・予算の制約がある中、ポータルサイトの新機能開発を実現。神戸市がレバテックフリーランスの活用を選んだ理由とは

 

 


4. 質疑応答から見る実践的な活用方法

勉強会では、地方議員の皆様から具体的な活用に関する質問が寄せられました。

質問内容 回答(実践的アプローチ)
DXの最初の一歩は? DXはあくまで手段。まずは「何に困っているのか」「どうなるといいのか」という課題を明確にすることから始めるべきです。
契約形態は? 契約はレバテック株式会社と自治体様の間で締結されます。提示された金額には、弊社の手数料も含まれており、別途紹介料などはかかりません。弊社が間に入り、フリーランスの方との調整やフォローアップを行います。
課題が曖昧でも提案可能か? はい、可能です。「この業務が手間だな」「この書類がなんとかならないか」というふわっとした状態や、現在進行中のプロジェクトの見直しのご相談でも、RPAなどの技術を活用した改善策をご提案できます。
既存サービス(LINEなど)の活用は? 既存のLINEなどのツールも、専門知識を持つフリーランス人材(システムエンジニアやウェブマーケターなど)が参画することで、単なる情報発信だけでなく、カスタマイズや多角的な住民サービスへの活用設計が可能です。

5. まとめと次のステップ

自治体経営を維持するためには、DX化・業務効率化は避けて通れない道です。

DXは高額で大規模なものという誤解がありますが、フリーランス人材を活用することで、思っているよりも小さく、低コストで始めることができます。組織全体を変えずに一人から、部分的な課題からスタートし、負のサイクルを少しずつ抜け出すことが重要です。

国からもDX推進のための補助金が用意されています。

まずは貴自治体の「困りごと」の棚卸しから始め、小さな一歩を踏み出すための具体的な計画を検討されてはいかがでしょうか。契約のプレッシャーなく、自治体の実情に応じた個別面談の機会もご用意しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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