全ての母親がアクセスしやすい産後ケアへ~課題とDX化による革新~│勉強会開催レポート

issuesの高松です!

今回は、株式会社グッドバトン代表取締役 園田正樹氏をお招きして、「産後ケア事業の課題」についてお話しいただきました。

産後ケア事業は令和元年の母子保健法の改正により、市区町村の努力義務となりました。さらに、少子化社会対策大綱では令和6年度末までに全国展開を目指すとされており、急ピッチで制度を整えた自治体も多いのではないでしょうか。そして利用者の声や事業者の声が届き始め、課題も見え始めてきた頃かと思います。

今回の勉強会では、産後ケア事業の課題と解決策について、園田氏をはじめ、産後ケア事業者や利用者から直接お話を伺いました。お住まいの自治体での産後ケア事業にご活用いただける視点がたくさんありますので、ぜひ最後までご覧ください!

産後ケア事業について│こども家庭庁 令和5年

 産後ケア事業は大きく分けて3つのタイプ

産後ケアは、
・宿泊型
・日帰り型
・訪問型
があります。利用者は使いやすいタイプを選ぶことができます。どのタイプでも看護師や助産師などの専門職配置が必要です。

産後ケアの目的は母親が休むだけではない

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産後ケアの対象となるのは、主に生後1年未満の子どもを持つ母親です。一見元気そうに見えても、しんどい中で子育てをしている親がたくさんいます。まとまった睡眠時間が全く取れない、夫や実家に頼れずワンオペ育児…。そのような母親が安心して休める場として、産後ケア事業が推進されています。

産後ケア事業で提供できるものは、母親が休めるということだけではありません。助産師や保育士などの専門家とのつながりや、本音が言える場でもあります。実際に産後ケア施設に来た産後の母親で、「全部終わりにしたいと思っていた…」と話された方もいらっしゃったそうです。

 

誰でも施設を活用できるポピュレーションアプローチ

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産後ケア事業は、「多胎児の母親や母親自身に問題を抱えている方が利用するもの」というイメージが根強くあります。そのようなハイリスクな方の受け入れは大切です。同時に「ただただ休みたい」という母親も活用できるようにする必要があります(ポピュレーションアプローチ)。

今日は笑顔でも、数日後には涙を流している母親がいることも産後の特徴です。それだけ産後の心身は変わりやすいもの。産後施設は誰もが利用できて、安心して過ごせる時間を持つことが大切です。

 

産後ケア施設の利用者は産婦の約10%

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産後うつの割合は産婦の10~15%と言われています(研究結果によって多少の違いがあります)。しかし、実際には産婦さんの10%程度しか利用していません。

・使いたいけれど予約手続きが煩雑。
・予約のために役所の窓口を訪問しないといけない(生後1か月の子どもを連れて行くのはハードルが高い)。
・事業所一覧をもらったけれど、1つひとつホームページを確認しないといけなくて、どこが良いのか分からない。
・病院と産後ケア施設が同じ場所にあり、その病院で出産した人しか使えない。
・生後4か月までしか利用できなくて、時期が過ぎて利用できなくなってしまった。

このように、利用へのハードルはさまざまです。

また利用直前でないと予約が取れないというところもあります。特に宿泊型の産後ケア事業を行っている施設は、分娩も扱っていることが多いという現状があります(夜勤の人員確保が必要で運営の負担が大きく、分娩を扱っているとスタッフが確保しやすいという理由から)。しかし単価が高く、緊急性の高い分娩が優先されます。実際には、分娩予定がなく空きがあれば受け入れる施設も多く、予約が明日や明後日からと、直前になるケースもあります。

 

稼働率を上げないと経営が厳しい

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予約の手続きの煩雑さや利用しにくさがあると、産婦さんが集まらず事業者側も経営が厳しくなります。施設によっては毎月100万円単位の赤字が出ていたところも。事業者が経営できなくなると、その影響は産婦さんや自治体に跳ね返ってきます。

 

予約のハードルを下げるDX化

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予約のハードルを下げる方法の1つに、予約のデジタル化があります。利用者側のメリットは、専用アプリで必要事項を入力するだけで予約が完了し、役所に行く手間もなし。事業者側のメリットとしては、キャンセルが出た際にウェイティングリストの方にお越しいただき稼働率の低下を抑えたり、自治体への報告資料の作成に活かせることなどが挙げられます。

現在は事業所単位での導入ですが、これから実証実験を経て自治体に導入できれば、自治体での管理を一元ができ、利用者の情報をいち早く自治体と事業所で共有できるようになります。

 

その他、「もっと詳しく知りたい!」という方は下記のフォームより必要情報を記入してアーカイブ視聴動画を確認してみてください!

 

 

事業者や利用者の声が聞けるissuesの勉強会

今回の勉強会には、事業を展開されている医師や助産師さんにもお越しいただきました。普段はなかなか聞こえてこない現場のリアルな問題点が明らかになりました。また、利用した母親たちからも、良かった点や改善を求める意見が寄せられました。

この勉強会で、制度、事業者、そして利用者のリアルな声が集まり、自治体の運用を振り返るきっかけ作りにもつながったと考えています。