いじめ問題で自治体が打つべき対策と具体的な取り組み事例
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これまでは教育委員会が中心となって対応していたいじめ問題ですが、近年は自治体も積極的に問題に関与し、いじめの重篤化を防ぐための取り組みが活発化しています。本記事では先進的ないじめ対策の事例を参考にしつつ、自治体がとるべき対策や直面する課題について解説していきます。最後までお読みいただき、いじめ解消に積極的に関与していきたい自治体がどのような仕組みを構築すべきか、参考にしていただければ幸いです。
いじめ問題の対応の鈍さに対する自治体の働きかけ
近年、いじめ問題にまつわる教育委員会や学校の対応の鈍さが問題視されています。被害者側からの相談に対して先延ばしにする姿勢が批判され、現場だけでのいじめ対応が限界に来ているとの懸念が広がっています。
いじめ問題は学校や教育委員会が窓口となることが多いですが、関係性が近いゆえに相談に抵抗があること、またSNSの普及によりいじめが学校現場だけに留まらなくなっている現状があります。
そのため、市教委とは切り離された相談しやすい窓口を自治体で設け、いじめ問題にきめ細やかに対応する重要性が高まっています。
SNSで話題になった大阪府寝屋川市のいじめゼロの取り組み
全国的に学校や教育委員会のいじめ対応が批判される中、大阪府寝屋川市の対策がすごいと保護者から絶賛され、SNSで2.7万いいねの反響を呼びました。その理由は児童からの相談からわずか数日で行動を起こした「市を主体とした迅速な対応」にあります。
「寝屋川方式」と呼ばれる独自のいじめ対策は、三権分立の新しいアプローチを採用しています。教育、行政、司法の協力により、従来の垣根を越えた連携を実現し、いじめ問題に対する包括的で迅速な対処を可能にしています。
この取り組みは単なる現場の動きだけに留まらず、地域社会全体がいじめ問題を自分事として捉え、一丸となって解決を図る姿勢も生み出しています。
寝屋川市の取り組みはいじめ対策に一石を投じた先進的な環境整備です。以下でほかの自治体で行われているいじめ対策の先進事例を紹介していくので、これらの成功事例を参考にし、あなたの地域のいじめ対策も前進させていきましょう。
LINEを活用した子どもの権利救済機関 ~北海道札幌市の事例~
北海道札幌市では、「子どもアシストセンター」という子どもの権利救済機関を設け、いじめや体罰などの権利侵害に苦しむ子どもたちの相談を受け付け、助言・支援、調査・関係者間の調整を行っています。
特筆すべき取り組みとして、電話やEメールに加えて「LINE相談」に力を入れていることが挙げられます。令和3年度の相談件数は1,504件で、その内訳はLINEが724件、電話が356件、Eメールが339件、面談が85件となっています。特にLINEの利用が目立っており、これは子どもたちにとってより相談しやすい手段であることがうかがえます。
子どもの立場に立ったコミュニケーション手段の導入が、子どもたちの権利救済において成功を収めている代表的な事例と言えます。
教育委員会と切り離した第三者機関を設置 ~岐阜県可児市~
可児市では「子どものいじめの防止に関する条例」に基づき、市長の付属機関であるいじめ防止専門委員会を設置しています。この組織の特筆すべき点は、教育委員会とは独立した第三者機関であることです。
学校現場だけの対応ではいじめ問題は後手に回りがちですが、いじめ防止専門委員会の取り組みにより、市や学校、保護者、市民、事業者のそれぞれの責務を明確化し、いじめ防止に市全体で取り組む環境を整備しました。
子どものいじめ防止に特化した条例を制定した自治体として、可児市は全国で初めての取り組みを行っています。このアプローチは、学校現場だけでなく、市全体の広い視点から問題に取り組んでいることを示しています。
市教委を越えて直接市長部局に届く仕組み ~千葉県松戸市~
松戸市では、市長事務部局にいじめ専用の相談窓口を設置しています。この取り組みは、いじめの多様化や学校現場との関わりが深い市教委に相談することへのためらい、また現場の対応が遅いと感じている子どもや保護者に対する配慮から生まれました。市教委を超えて直接市長部局にいじめの問題を訴える仕組みは、県内で初めての試みです。
いじめの構造を本質的に解決するためには、第三者の立場から事実を把握し、再発防止策を策定することが必要です。市長部局に設けられた窓口では、心理士とソーシャルワーカーが常駐し、問題によっては弁護士にも相談できる体制が整えられています。
市全体でいじめ問題に取り組む姿勢を示すことで、市民が安心していじめ問題を訴え、解決への一助となることが期待できます。
各先進事例から見えてくる自治体の取り組むべき姿勢とは
事例に示した自治体では首長部局の第三者性を活かし、積極的にいじめ解消プロセスに関与していく姿勢を見せています。柔軟で総合的なアプローチを取り入れ、市民の安全と幸福を確保するための新たな取り組みを模索することが重要です。
これまでの実情は、いじめ問題が重篤化した後の事後対策が主流であり、自治体と教育委員会の円滑な意見交換が難しい現状が続いていました。さらに現場の教職員への責任や対応負担が増加し、きめ細かな対応が難しいという問題も浮き彫りになっています。
行政側からのアプローチを導入し、これまで現場の教職員が行っていた生徒宅の訪問などの負担を自治体が引き受けることで、教育的アプローチだけでは難しかった現実的な課題解決を実現しています。現場の教職員は日常の予防・予後のケアに集中する役割分担により、生徒個人に焦点を当てた対応が可能となっています。
いじめの初期段階から積極的に関与していく自治体であるために
この記事では、大阪府寝屋川市をはじめとした4つの自治体が行ういじめ対策について解説してきました。学校や教育委員会を超えて関与できる環境整備を参考にし、ぜひお住まいの地域のヒントとしていただければ幸いです。
【参考資料】
https://www.city.neyagawa.osaka.jp/organization_list/kikikanri/kansatsuka/index.html
https://www.city.sapporo.jp/kodomo/assist/index.html
https://www.city.kani.lg.jp/3284.htm
https://www.city.matsudo.chiba.jp/kurashi/jinken_danjo/jinken/ijimesoudan.html#:~:text=%E5%B8%82%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%80%81%E5%A4%9A%E6%A7%98%E5%8C%96%E3%81%99%E3%82%8B,%E3%81%9F%E8%A7%A3%E6%B1%BA%E3%82%92%E7%9B%AE%E6%8C%87%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82