自治体が行う中小企業賃上げ促進事例|働きやすい地域の実現へ
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近年、大手企業を中心に賃上げの動きが活発化していますが、地方の中小企業ではなかなか実現できていない現状があります。この記事では、中小企業の賃上げ促進の重要性や各自治体の取り組み事例、賃上げ促進に関する自治体の課題について解説します。最後までお読みいただき、働きやすく住み続けたい地域の実現への参考にしていただければ幸いです。
自治体による中小企業の賃上げ促進の重要性
国が物価上昇率を超える賃上げを推奨する中、自治体単位でも中小企業の賃上げ促進に取り組むことが求められています。従業員の実質賃金上昇は生活の安定を意味し、高給与を求めた人材がほかの地域に移動するリスクを減らすことにつながります。そのため、自治体にとっても無視できない重要な課題と言えます。
現在は物価高、円安、国際情勢の不安定が続いており、資金力が限られている地方の中小企業は大手企業ほど即座な賃上げが難しい状況にあります。自治体や県が独自の取り組みを行い、体力が少ない地域企業でも賃上げを実現できる施策が求められています。
厳しい経済状況や地域差を正しく把握しながらも、自治体の賢明な支援が中小企業の発展と住民の生活向上、ひいては地域の活性化につながります。
群馬県高崎市の事例 ~中小企業給与改善奨励事業~
群馬県高崎市では、「中小企業給与改善奨励事業」が行われています。この事業は、高崎市内に本店または事務所を有する中小企業を対象としており、正規従業員や非正規従業員(パートタイム労働者を含む)が対象です。
賃上げ率が1%未満の場合、正規従業員や契約社員1人につき24,000円、パートタイム労働者1人につき8,000円の奨励金が支給されます。賃上げ率が2%以上の場合は、正規従業員や契約社員1人につき36,000円、パートタイム労働者1人につき12,000円が支給されます。支給上限は1事業者につき150万円です。
この中小企業給与改善奨励事業は、地方自治体が初めて民間企業の賃上げを支援する試みであり、地域経済の活性化に大きく寄与する働きかけとして注目を集めています。
奈良県および生駒市の事例 ~中小企業等賃上げ促進給付金~
奈良県では、「中小企業等賃上げ促進給付金」を導入し、地域経済の活性化と所得向上を推進しています。この給付金は、正規・非正規雇用労働者の賃金を1.7%以上引き上げた企業が対象となり、従業員1人あたり5万円の給付金が支給されます。なお、賃上げ後の1年間は賃金を引き下げないことが条件とされ、持続可能な賃上げを促進する仕組みとなっています。
さらに、県内の生駒市では市町村初となる独自の上乗せ給付金を導入しています。奈良県からの給付金に加えて生駒市からも給付金が支給され、従業員1人あたり10万円の給付を受けられます。生駒市の事例は、国や県の補助金を補完する形で自治体独自の優位性を生み出す好例と言えるでしょう。
大分県の事例 ~大分県物価高騰対応業務改善奨励金~
大分県では、「物価高騰対応業務改善奨励金」として、賃上げに対する奨励金を実施しています。この賃上げの対象は、時給を30円以上引き上げた事業所であり、労働者数に応じた奨励金が支給されます。引上げ率に応じて奨励金に段階が設けられ、時給を90円以上引き上げた場合には最大で75万円が支給される仕組みです。また、業務改善助成金の申請に関連する社会保険労務士などへの報酬も奨励金の対象です。
連合大分によると、95組合のうち約3分の2にあたる62組合でベースアップが実現し、23年の春闘賃上げ率は4.0%と過去最高を記録。賃上げが実質化していることが報告されました。大分県の物価高騰対応業務改善奨励金は、中小企業に対する的確な支援策として注目され、ほかの自治体に対する良い先進事例となっています。
自治体による賃上げ促進の課題
労働力の定着や生産性向上には賃上げが重要であるという共通認識はあるものの、現実問題として中小企業を取り巻く環境は依然として厳しい状況です。たとえ一時的な賃上げが補助金によって行われたとしても、永続的な賃金の引き上げが難しい企業もあるでしょう。
この問題に対処するためには、まず生産性向上を図り、価格転嫁しやすい体制を整備することが不可欠です。例えばデジタルトランスフォーメーション推進など、企業の業務効率化に向けた取り組みを、自治体からも助成する働きかけが求められます。
「地場産業を支えていく」という消費者を含めた社会全体の意識改革が求められるとともに、中小企業が体力をつけていける施策を並行して検討する必要があります。
働きやすく住み続けたい地域の実現へ
この記事では、群馬県高崎市を含む3つの地域で実施されている賃上げ促進の取り組みについて解説してきました。地方の中小企業における賃上げ促進の重要性や、具体的な事例を参考にして、ぜひお住まいの地域におけるヒントとしてご活用いただければ幸いです。
【参考資料】
https://www.city.takasaki.gunma.jp/docs/2023061400105/
https://nara.subsidy-portal.org/wageup
https://www.pref.oita.jp/soshiki/14580/gyoumukaizen-syoureikin2023.html