ジェンダー平等先進国アイスランド|成功の秘訣と日本が学ぶべきこと
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現代社会において、ジェンダー平等は極めて重要な課題の一つです。世界経済フォーラムが発表した「ジェンダー・ギャップ指数2022」では、日本は146カ国中125位という結果が出ており、ジェンダー平等の実現に向けて大きな課題を抱えていると言えます。
この記事では、世界で最もジェンダー平等が進んでいるアイスランドの成功の秘訣を紐解いていきます。個人主義と姓の変わらない文化、充実した法律や制度、教育の重要性などについて具体的に掘り下げ、日本でも実現可能な平等社会のヒントを見つけていきましょう。
ぜひ最後までお読みいただき、効果的なジェンダー平等への取り組みのヒントとしていただければ幸いです。
日本が抱えるジェンダー格差の具体例
日本では、女性の社会進出を推進してはいるものの、依然として多くのジェンダー格差が存在します。特に顕著なのが育児休暇の取得率で、2021年度における男性の取得率は13.97%と、女性に比べて著しく低い状況です。
政治分野における女性議員の比率も15.4%と低く、ジェンダー平等の意識が十分に浸透していないことが伺えます。加えて、職場における女性管理職の割合も依然として低く、多くの企業で男女間賃金格差も残存しています。
ジェンダー平等先進国アイスランドの成功の秘訣
ジェンダー・ギャップ指数1位の理由
アイスランドは、世界経済フォーラムが毎年発表する「ジェンダー・ギャップ指数」において15年連続1位を獲得しており、名実ともに「ジェンダー平等先進国」といえます。その背景には、男女平等に対する国民の強い意識と、それを実現するための具体的な施策が挙げられます。
ジェンダー格差を解決するさまざまな施策が推し進められていますが、中でも特筆すべきは、2018年に施行された「平等賃金証明法」です。
この法律では、企業が男女同一労働同一賃金を実現していることを証明することが義務付けられており、法的な裏付けによって男女平等が推進されています。
個人主義と姓の変わらない文化
結婚後も、夫婦がそれぞれ自身のラストネームを保持する文化が、アイスランドにはあります。背景には個人のアイデンティティを尊重する考え方があり、生涯同一性を保つことが一般的です。
この個人主義を大切にする文化が、ジェンダー平等の意識を高める一因となっています。結婚しても個人の名前が変わらないアイスランド社会では、女性が夫に属するという考え方が定着していません。
ジェンダー平等を実現するアイスランドの法律と制度
男女の賃金格差違法化の取り組み
先にお伝えした通り、アイスランドでは、2018年に世界で初めて男女の賃金格差を違法とする法律、「男女同一賃金証明法」が制定されました。この法律により、企業は同じ労働をする男女に同一の賃金を支払うことが義務付けられています。
具体的には、企業は年に一度第三者機関による監査を受け、賃金格差がないことを証明しなければなりません。違反した場合は罰金が科せられ、この取り組みにより賃金格差が大幅に縮小されました。
充実した育児休暇制度の効果
父親と母親、それぞれに6カ月の育児休暇が認められており、加えて6週間の共有育児休暇も取得できます。アイスランドでは男性の育児休暇取得率が8割を超え、父親も積極的に育児に参加するのが一般的です。
実際、グズニ・ヨハネソン大統領自身も5回の育児休暇を取得しており、育児休暇取得が当たり前という社会的な気風が、男女平等な家庭環境の形成に大きく貢献しています。職場復帰後も育児に理解のある環境が整っているため、ワークライフバランスを実現しやすい社会と言えるでしょう。
アイデンティティと平等を育むアイスランドの教育
ヤットリ・モデルによるジェンダー平等教育
アイスランドには、男女を分けたクラス編成を行い、それぞれに「埋め合わせ」の教育を提供するヤットリ・モデルと呼ばれる教育方法を取り入れている私立学校があります。この教育方法は、男女それぞれの特性を尊重し、平等な機会を与えることを目指しています。
具体的には、女の子には自信を持って意見を述べ、積極的に議論に参加することを、男の子には思いやりや協調性を育むことを、それぞれ重点的に指導します。
ヤットリ・モデルは1989年に導入されました。当時は「先進的すぎる」という声もありましたが、現在では国内14のプリスクールと3つの小学校で採用され、海外からも関心を集めています。
学び直しの「リカレント教育」の重要性
アイスランドは教育費が無料であり、生涯にわたって必要なタイミングで「リカレント教育」を選択できます。自身の環境やキャリアに合わせ、柔軟に学び直しを図ることが容易なのです。
例えば、ある専門分野でキャリアを積んだ後、異なる分野の学位を取得して新たなキャリアを築いたり、結婚や出産を経て新しいことにチャレンジするケースも珍しくありません。
こうしたリカレント教育制度は、個人の能力を最大限に引き出し、経済的な自立を促進する役割を果たしています。性別を問わず、生涯スキルアップしていくという意識が定着しているのです。
日本がアイスランドから学べること
社会構造の問題として捉える視点
日本ではジェンダー格差が個人の問題として片付けられがちですが、社会構造そのものの問題として捉えることが重要です。アイスランドでは、ジェンダー平等を実現するために、法律や制度を整備し、社会全体で取り組んできました。
これまで説明してきた通り、男女の賃金格差を違法とする法律の制定や、育児休暇制度の充実など、具体的な政策が顕著な効果を上げています。日本もアイスランドにならい、社会全体でジェンダー平等を推進する意識を持つことが必要ではないでしょうか。
声を上げることの重要性
アイスランドでは、不平等や不満に対して声を上げることが社会の当たり前となっています。1975年には「女性の休日」と呼ばれる大規模なストライキが全国的に起こり、世論の意識を変える大きな転換点となりました。
このストライキは、女性が社会の中で重要な役割を果たしていることを示し、ジェンダー平等の意識を高める起点となる出来事でした。日本でも不平等と感じたことに対し、個人や地域単位でも積極的に声を上げていくことが、社会を変える第一歩となるでしょう。
日本でのジェンダー平等社会の実現に向けて
この記事では、アイスランドのジェンダー平等への取り組みについて解説してきました。アイスランドは、男女の賃金格差を違法とする法律や、充実した育児休暇制度、ジェンダー平等を促進する教育モデルなど、多くの先進的な取り組みを行っています。
これらの具体的な事例を参考にし、日本もジェンダー平等を実現するための法律や制度を整備し、社会全体で取り組むことが重要です。この記事で紹介したアイスランドの成功事例をヒントに、ジェンダー平等に向けた取り組みを推進していくきっかけにしていただければ幸いです。
【参考資料】
アイスランドがジェンダー・ギャップ指数連続1位の理由とは?.Vogue.2024
【北欧の教育最前線】平等の国アイスランドの私立園.教育新聞.2020
男女格差の解消が進む北欧の取り組みとは.株式会社リクルート.2023