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男性の育休取得促進義務化から考える地域経済の活性化の可能性

issuesのにしのです。
男性の育休取得促進義務化は現在国を挙げて取り組んでいるテーマですが、特に中小企業においてはまだまだ育休を取りづらい環境が残っているのが現実です。この記事では、男性育児休業取得推進の義務化の概要や、先進自治体の事例から、地域で取り組むべき男性の育児休業取得について解説していきます。ぜひ最後までお読みいただき、働きやすい地域づくりを考える際の参考としてご活用下さい。

男性育児休業制度の普及と取得推進の義務化

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近年の少子高齢化や共働き世帯の増加に伴い、男性の育児参加が社会的に求められるようになってきています。これを受け、2021年に育児・介護休業法が改正され、男性の育児休業取得が促進されました。この制度の普及と取得の推進が企業の責務になります。

まず、企業は妊娠や出産に関する申し出があった従業員に対し、育児休業制度や申請方法、給付金や社会保険料の取り扱いなどについて詳細に説明する義務が生じます。これにより、従業員が制度を理解しやすくなり、取得の障壁が低くなります。

男性の育児休業取得の現状

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男性の育児休業取得率は年々増加していますが、厚生労働省の統計によれば、女性の約80%に対して、男性は17.13%と低い水準にとどまっています。さらに、育児休業や育児目的休暇が希望通りに取得できない男性労働者は全体の約40%にも上ります。

長時間労働や男性優位の職場文化、事業主の理解の低さが、男性の育児休業を妨げている要因です。また、育児休業を取得する従業員側からも、キャリアへの影響を懸念する声があります。

日本人男性の家事・育児時間は他の先進国に比べて短い傾向にあります。社会全体での意識改革や制度の整備によって、男性が育児に参加しやすい環境を整えることが急務と言えるでしょう。

男性が育児休業を取得する事業主側のメリット

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男性の育児休業取得は、中小企業にとってはハードルが高いと感じる取り組みだと思われがちです。しかし、優秀な人材を確保・定着させるためには、仕事と育児を両立させながら働き続けられる雇用環境の整備が必要不可欠です。自治体側からも、男性が育児休業を取得する事業主側のメリットを周知させる働きかけが必要でしょう。

定着率の向上

育児休業を取得しやすい環境を整えれば、職場の定着率が向上します。性別を問わず育児休業を取得できる職場はワークライフバランスの改善が期待でき、従業員の帰属意識が高まります。男性の育児参加を推進する企業は、若手の労働者にとって永続的に働きたい企業となるでしょう。

生産性の向上

育児休業取得を促進するためには、業務の効率化や人員配置の見直しが必要です。業務の棚卸しやマニュアル化により、チーム全体の生産性向上が期待できます。育児休業取得に向けた効率的な仕組みづくりは、企業の競争力強化に直結します。

企業価値の向上

育児支援に取り組む企業は、厚生労働省の「子育てサポート企業」認定を受けられます。この認定は企業の社外評価を高め、優秀な人材の確保に繋がります。

男性の育児休業取得は、企業に多くのメリットをもたらします。性別に関係なく、育児参加を促進することは、現代の労働環境において必要不可欠な取り組みです。

先進自治体から学ぶ男性の育児休業取得の事例

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男性の育児休業取得を促進させるためには、企業側の努力だけではなく、自治体が率先して支援することが重要です。以下では2つの自治体が行う男性育児休業取得の先進事例を紹介します。自治体から男性が育児休業を取得しやすい環境づくりを推進し、地方企業の競争力強化につなげましょう。

神奈川県平塚市 ~産後パパ育休取得応援交付金~

平塚市は2024年2月、男性従業員の育児休業取得を奨励するため、10万円の支給を発表しました。これは自治体としては初の試みであり、全国的にも珍しい取り組みです。市として育休取得の促進に積極的に取り組む姿勢が現れたものと言えるでしょう。

具体的な支給条件は、出生後8週間以内に4週間以上の育休を取得し、市の母親父親教室に1回参加することです。この教室で父親に基本的な知識や技術を学んでもらうことで、自発的な育児参加を促します。

ユニークなのが、ただ単に育休を取るだけの「取るだけ育休」を防止するため、取得後の妻の評価を条件としていること。夫が育休中に担う役割を明確にする「パパ育宣言」を行い、妻が「休んだだけで育児に参加していなかった」と判断した場合、交付金は支給されません。

平塚市のこの取り組みは、男性の育児参加を促進し、家庭内の役割分担を推進する意義深い政策です。より良い育児環境の実現に向けた具体的なアクションプランとして注目されています。

栃木県 ~とちぎ男性育休推進企業奨励金~

栃木県は、少子化の深刻化に対応するため、2023年8月に「とちぎ少子化対策緊急プロジェクト」を立ち上げました。このプロジェクトでは、結婚、妊娠・出産、子育てといった各ライフステージに応じた切れ目のない支援が重視されています。

その一環として行われる取り組みが、「とちぎ男性育休推進企業奨励金」であり、初めて男性従業員に育児休業を取得させた中小企業事業主に対して、20万円の奨励金が支給される制度です。

この奨励金の対象は、県内に事業所を有する中小企業事業主であり、育休を取得しにくいと感じる職場の雰囲気を変えることが狙いです。金銭的な支援により、中小企業でも育児休業を取得しやすい環境が整い、従業員のワークライフバランスが改善されることが期待されます。

また、企業にこの制度を活用してもらうことで、社会的な責任を果たしている良いイメージを構築してもらうことも狙いのひとつです。育児休業の支援は、従業員の家庭生活を重視し多様な価値観を尊重する姿勢を示すことになり、社会からの評価が高まることが期待されます。

男性の育休取得促進で働きやすい地域づくりを

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この記事では、神奈川県平塚市や栃木県の事例を参考に、男性の育休取得促進義務化について解説してまいりました。交付内容やその条件をご参考にしていただき、ぜひお住まいの地域でも男性の育休取得を推進する際のヒントとしていただければ幸いです。

【参考資料】
https://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/kenko/page21_00262.html
https://www.pref.tochigi.lg.jp/f06/tochigidanseiikukyusuishinkigyoshoureikin.html
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/71-r04.html