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自治体間格差を解消|ICT教育に必要な学校のネットワーク環境を整備

issues(イシューズ)の米久です。
学校におけるICTを活用した教育が進む日本ですが、全国の公立小中学校・高校のうち約8割は、インターネット回線の速度が不十分であり、ネット環境の整備が追い付いていません。文科省は各自治体に対して原因の調査や十分な通信速度の確保を促しています。本記事では、学校のネット環境の現状、通信速度が不十分な原因、国が補助する自治体への費用など、詳しくご紹介します。ぜひ最後までお読みいただき、自治体間で格差が生まれないよう、学校のインターネット環境整備の参考としていただけますと幸いです。

 

全国の公立小・中・高等学校におけるネット環境の現状

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文科省は、「1人1台端末」と高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備し、多様な子供たちを誰一人取り残すことのない、公正に個別最適化された学びを全国の学校現場で持続的に実現させる構想「GIGAスクール構想」を推進しています。現在、各学校では活用が進み、効果が実感されつつあります。1人1台端末を活用するためには、十分なネットワーク速度が確保されていることが重要であるとし、文科省は令和5年11月~12月に、全ての公立小・中・高等学校(約32,000校)を対象に、通信速度を把握する等を目的とした調査を実施しました。

その結果、推奨速度を満たす学校は約2割に留まり、約8割の学校がインターネットの速度が不十分であるということが分かりました。特に学校の規模が大きくなるほど推奨速度を満たす割合が低い傾向にあります。児童生徒数60人以下の学校3,985校のうち推奨速度を満たす学校は3,258校(81.7%)に対し、児童生徒数841人以上の学校は1,382校のうち、推奨速度に達したのは僅か29校(2.1%)でした。

 

学校の通信速度が不十分な原因と課題

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学校の規模に対して契約内容が適切ではないことが、通信速度が不十分である原因として考えられます。一定の通信速度を保証するサービス「帯域確保型」の回線を契約している自治体は約3%に対し、中規模以上の学校では十分な速度が確保されない可能性の高い「ベストエフォート型」の回線(共用回線)を契約している自治体は95%に上ります。

「帯域確保型」の回線契約は、1Gbpsの速度確保で、1校あたり定価ベースで月額約50万円~150万円と高額なため、契約をしている自治体の数が極めて低い状況です。しかし、1校あたり月額数万円~20万円と安価に調達している事例もあります。

また、機器の設定位置や性能不足、老朽化、配線不備、無線APの不良など学校内での原因や、プロバイダの問題など校内の問題ではない場合もあるため、各学校及び自治体は十分な通信速度を確保できない原因を特定する必要がります。

自治体担当者が通信契約をする事業者と適切に交渉していくため、ネットについての一定レベルの専門的知識が必要ですが、職員の確保が難しいことも課題として挙がっています。そこで、文科省は自治体向けに「学校ネットワーク改善ガイドブック」を提示し、広域調達・共同調達の支援を検討することで、価格低下や自治体の交渉力向上、インターネットや学校のネットワーク等についての専門性向上を図るとしています。

●学校のネットワークの現状について

 

ICT教育関連の補助金について

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文科省は、学校のネットワークが繋がりにくいため授業が遅れるなど、課題のある学校においてネットワークアセスメントの実施が徹底されるよう、必要な財政支援を行うとしています。「令和6年度文部科学省概算要求」に記載されている内容をもとに、ICT教育関連の補助についてまとめました。お住まいの地域の方針等を計画される際にぜひご活用ください。

 

■ネットワークアセスメント実施促進事業(10億円)

都道府県、市町村等が、民間事業に委託するネットワークアセスメント実施に要する費用の一部を国が補助します。

ネットワーク環境のアセスメント(評価)とは、学校のネットワーク環境の分析・調査することで、どこに不具合が発生しているのか把握ができ、課題や改善策を提示することにより、最適な通信ネットワーク環境の実現が目的です。

文科省は自治体間格差の解消と、「1⼈1台端末」の利活⽤をさらに進めていく必要がある中で、取組の最⼤の阻害要因の⼀つはネットワークの遅延や不具合であるとしています。専門的な知識が必要となるため自己判断せずに専門の事業者に依頼が必要です。

補助割合:2分の1
補助上限:40万円/校 
※補助対象となる事業費の上限。交付される補助⾦の上限は20万円/校。

現在不具合が発生していない学校でも、今後、デジタル教科書の導入やクラウドベースでのデジタル教材の活用が本格化し、大容量の通信が発生することが想定されるため、「アセスメントを一度も実施していない自治体においては、少なくとも一度アセスメントを実施していただくことを強く推奨」するとしています。

 

■GIGAスクール運営支援センター整備事業(40億円)

学校のICT運用を広域的に支援するGIGAスクール運営支援センターの整備を支援するため、都道府県等が民間事業者へ業務委託するための費用の一部を国が補助します。自治体間格差を解消するため、令和5年~6年を集中推進機関と位置付け伴奏支援を徹底強化することとしています。

補助割合は、令和4年度から引き続き1/3と変更はありません。しかし、補助事業は令和6年度で終了となり、令和7年度は予定していないため注意が必要です。

 

■1人1台端末の更新(148億円)

故障端末の増加や、バッテリー耐用年数(4~5年)が迫り、早い自治体では令和6年度中の更新が必要になります。このため、今後3~4年程度をかけて端末の更新と、故障時等においても子供たちの学びを止めないという観点から、予備機の整備を進めます。

補助対象:①児童生徒全体の2/3台分、②予備機(①の5%以内)
補助上限:4.5万円/台(定額補助)

●令和6年度概算要求のポイント

 

Society5.0時代を生きる子供たちへ滞りなく学びを届ける

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文部科学省では、「1人1台端末と通信ネットワーク等のICT環境の整備を進め、Society5.0時代を生きる子供たちに相応しい、全ての子供たちの可能性を引き出す個別最適な学びと協働的な学びの充実」を図っています。GIGAスクール構想を進めていく中で、ネットワーク環境の整備など今まで目に見えずに隠れていた自治体間格差の解消は重要なポイントです。本記事が、今後の方針等を検討される際の参考となれば幸いです。