特別支援学校を新設へ。本会議を有効活用し、地元ニーズを実現!|田中徳一郎さん

全国でもトップレベルで人口が増え続けている神奈川県川崎市では、常に学校不足に悩まされています。川崎市からの要望にいち早く反応した神奈川県議会議員の田中徳一郎さんは、本会議での質問や地元住民との対話を粘り強く重ね、特別支援学校の誘致を実現させました。

今回は田中さんに、政策実現までの過程や、予算規模の大きい政策を実現させるポイント、そして議員として大切にしていることなどを伺いました。

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田中徳一郎さん(43)プロフィール

                                                  神奈川県議会議員 4期目

1981年生まれ                                                                           428923622_771334461162934_4981147944461955302_n

自民党

選挙区:川崎市幸区

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ー今日はよろしくお願いします。まずは、自己紹介をお願いします。

政治家の家(父:田中和徳・衆議院議員)に生まれましたが、実は政治家になることには興味が薄かったんです。身近だった分、自分が進む道ではないかなと。

大学を卒業してからは長谷工コーポレーションという建設会社で、営業ど真ん中のキャリアを歩んでいました。仕事も順調で、このまま続けていくのかなと思っていました。

ーそこからどのようなきっかけで政治家を志されたのですか?

地元選出の神奈川県議が、80歳を目前にご勇退されたんです。自民党が野党に下野していた時期だったこともあり、後継者探しに苦労されていたんですよね。候補者はたくさんいたのだけれど、全員お断りされて。

最後に、私に白羽の矢が立ちました。直接の面識はなかったですが、青年会議所の先輩後輩という関係です。独身だったこと、そして地域のために活動することは自分の生活の一部になっていたことから決断しました。

ー現在4期目ですが、力を入れている政策はなんでしょうか?

教育分野はライフワークのひとつです。

「かながわハイスクール議会」という取組みは、議員になった時からずっと責任者として運営しています。県内に在学もしくは在住している高校生を対象に、夏休みの3日間を使って、議員になりきってもらう体験です。参加人数も定数と同じ105人。今年で18回目の開催です。最近は人気があり、定員で締め切ってしまうこともあるんですよ。

初日には、本会議を召集して、各委員会に分かれます。2日目には、県職員幹部にも参加してもらい、委員会ごとに問題点を議論。いよいよ最終日の3日目には、黒岩祐治県知事へ質問をぶつけます。

神奈川県では、数年前に津久井やまゆり園で悲しい事件がありました。以来、県は「ともに生きる社会」を目指しています。ハイスクール議会でも「共生社会の実現」をテーマに議論してもらったこともあります。

質問のレベルはかなり高いですよ。最初は「初々しくていいね」なんて話していた黒岩知事も、最近は「事前通告をください」と言うように(笑)。神奈川県が誇れる取組みですし、他の自治体にも広まってほしいですね。

ー非常に意義深い取り組みですね。ところで、神奈川県では県立特別支援学校の新設が決まりました。どのようなきっかけから、この政策に取り組まれるようになったのでしょうか。

人口が増え続ける川崎市は、常に学校不足に悩まされています。これは特別支援学校だけでなく、普通学校の数もです。ここ最近でも、武蔵小杉に小学校が新設され、これから他の地域でも新設予定です。全国でも珍しいのではないでしょうか。そうした背景を受けて、川崎市から要望があがってきたのが最初です。

ー誘致が決定するまでにはどのくらい時間がかかりましたか?

最初に要望が出ててから、新設が決まるまで10年近くかかったのではないでしょうか。

ーそれは根気強い活動ですね。特に大変だった点はなんでしょうか?

まずは、場所の確保です。お話ししたように、人口が増え続けているので、学校を建てられる規模の土地を確保するのが大変でした。川崎市の中でも、新設の要請があったのが南部地域だったので、さらにエリアは限られました。

それと、近隣住民の方への対応ですね。最終的に決定された場所は、地元の方たちがグラウンドとして使っている場所でした。学校の新設はもちろん重要ですが、別の立場の方にとっては、自分たちの場所がなくなってしまうという側面もあります。納得していただけるように、都度お話をしてご理解いただけるように水面下で動いていました。

ー折衝など苦労された点も多かったと思います。どのような工夫をされたのでしょうか?

本会議という場を有効活用することが大切ですね。

予算が小規模の政策では、常任委員会でも十分かもしれません。しかし、今回のような予算規模も大きく、関係部署や関係者が多い政策では、皆で共有していくことが重要です。本会議で質問をすることで、県知事、県職員幹部、そして議員全員で課題を認識することができます。

とはいえ、一発ではなかなかうまくいかないので、粘り強く議会質問を続けることも大切です。

地方自治体は、国や社会の動向にかなり敏感ですよ。法令が改正された、報道で取り上げられはじめた。こうしたタイミングが生まれれば、すかさずまた質問をします。社会状況の変化に伴って、行政の回答も変わっていきますから。

近道はありませんが、こうしたアプローチで、実現の可能性を模索し続けていきます。私もこの政策について、本会議で3回ほど質問しています。状況の変化に応じて、行政側からも回答が変わっていき、実現に至ることができました。

ー開校は令和10年度とまだ先ですが、誘致が決まって住民の方からはどんな反応がありましたか?

開校される頃には、残念ながらご自身のお子様はすでに対象年齢でなくなってしまうご家族もいらっしゃいます。それでも、当事者の方たちの関心はとても高かったので、「ありがとうございました」というお声をいただきました。

ーそれは嬉しいですね。今後、田中さんが重点的に取り組んでいきたい政策について教えてください。

高校までの教育無償化を目指しています。

予算のある大阪府、東京都では教育面で様々な取組みをしています。しかし、予算の有無で政策に差が生まれてはいけないと考えています。それは教育格差ですし、住民の転出にも繋がりますよね。

それと、私は保護司の活動もしています。悲しいことに、犯罪に手を染めてしまう人の割合は、高校に行っていない人が圧倒的に高いです。国を作るのは子どもたちです。国が責任を持って、高校まで通うことを当たり前にしないといけないと考えています。

ーありがとうございます。最後に、田中さんが議員として大切にしていることを教えてください。

全ての方々に政治を身近に感じてもらいたいと思っていますね。自分は政治家の家に生まれ、ボランティアなど地域活動もしていたので地方議員の姿が日常に当たり前にあったけれど、多くの人にとってはそうではないですよね。

だからこそ、地域の方々との交流を大切にしています。地元では「とくちゃん」とか「とっくん」なんて呼んでもらっています(笑)。地元のお店にもよく行きますよ。常連さんの輪の中に入ると、いろんな話を聞けるんです。それをすぐにメモして。政策のヒントは、こうした会話から拾うことが多いですね。