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TikTokで接点を。若者の柔軟な考えを政策へ|宮城県議会議員 柚木貴光さん

若い世代の考えや動向を知るためには、今やSNSの活用が欠かせない存在となっています。政治家も複数のSNSツールで意見を発信することが当たり前の時代ですが、その使い方に悩んでいる方は多いかもしれません。宮城県議会議員の柚木貴光さんは、自身も31歳と若手ながら、さらに若い世代の意見と価値観に触れるために、SNSを有効活用しています。柚木さんにSNSの使い方や政策への活かし方についてお話しを伺いました。

柚木貴光さんプロフィール

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宮城県議会議員(自民党) 1期目

1992年生まれ

選挙区:宮城

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ー今日はどうぞよろしくお願いします。自己紹介からお願いします。

昨年11月に当選し、議員になって約5カ月が経ちました。それまではずっと会社員をしていたので、本当に政治家になりたてという状況でございます。

政治家になりたいと思った理由は、主に2つあります。

ひとつは、生まれ育った故郷のために働きたいと思ったからです。大学を卒業後、日本製鉄という鉄鋼メーカーで働いていましたが、コロナ禍をきっかけに一人で過ごす時間が増えて、「これからの人生をどう生きていこうかな?」と考え始めました。そこで、故郷のために働きたいという想いが生まれました。独身でもありフットワークの軽い今こそやるべきではないかと思い、会社を辞めて、政治家を目指すようになりました。

もうひとつの理由は、日本の衰退を食い止めたいと思ったからです。会社を辞めた時点で、次の選挙までまだ時間がありました。人口が減少し外需の取り込みが必須の時代において、地方議員でも国際感覚が必要だと感じたので、そういう強みを持つことができれば価値を生み出せるのでないかと思い、イギリスに移住しました。ダイハツの子会社で約1年半働きながら、様々な国を訪れ、様々な人と交流する中で、日本の衰退を鮮明に感じました。その経験を通じて、政治家としてこの状況を打開したいと一層強く思うようになりました。

―ご自身の知見を高めるために海外に行かれたのですね。具体的にはどのような気付きがあったのでしょうか?

海外から日本を見ることで、日本の衰退具合がよく分かりました。例えば、イギリスではたくさんの大学生や20代の若い日本人と出会ったのですが、イギリスに来た理由を聞くと、「日本に将来性がないから」「日本の賃金が低いから」という人が多くいました。若い世代に選ばれない国になっていることを感じました。

また、外国の方に日本の印象も聞きました。昔なら「技術力がある」「経済大国」という反応があったはずですが、今はアニメや文化を第一に挙げる方が多かったです。

こうした、若い人がたくさん海外に出て行ってしまっている状況と、海外から日本への印象が変わってきている現状に危機感を覚えました。

そうした経験を通じて、今はどのような政策に一番力を入れているのでしょうか?

人口減少対策です。全ての政策の土台に、人口の維持、増加があると思っています。

1つ具体例を挙げると、不妊治療の制度を整えることで、子どもを産み、育てることに力を入れていきたいと思っています。一部の不妊治療は2022年4月から保険適用になり、受けやすくなりつつあります。けれど、保険適用の対象外の治療もあるためそれらの治療にも補助金が出るように取り組んでいます。

また、不妊治療を受ける方の悩みとして、精神的・身体的な負担がありますそのため、県内の企業で不妊治療休暇の取得ができるように動いているところです。宮城県庁では、不妊治療休暇が整備されているので、民間企業にも広げていけたらと思っています。

ー柚木さんはSNSを活用して若い世代との交流を図っているとお伺いしました。取組みについて教えてください

若い世代、特に20代前半より下の世代との接点を持つように意識しています。僕の年代とは感覚や考え方がすごく違うと感じる世代です。

そのため、彼らが一番よく使うTikTokでの発信に力を入れています。今は6本動画を配信していて、そのうちの3本は1万再生を越えました。一般的には、1万回再生を越えるとバズるというらしいので、結構な頻度でバズっています。

―それはすごいですね。どのような動画を出しているのですか?

例えば、議員が一日どのように過ごしているのかという、ルーティーン動画を1分程にまとめて出しましたその他には、政務活動費についての動画もバズりましたね県議会議員はひと月に35万円支給されるのですが、一般の方にとって35万円はインパクトのある金額だと思います。実際にどのように使っているのかを動画で説明しました

ーどのような方が動画を見ているのでしょうか?

1万回再生を超えた動画を分析すると、6千人は宮城県の方、4千人は県外の方が見てくださっていることが分かりました。さらに6千人の内半分は20代以下のたちでした。若い世代との接点を作るために始めたので、そこは達成できています

そもそも、なぜ若い世代との接点を大事にしているのでしょうか?

若い世代の柔軟な発想力やクリエイティブ力を貸して欲しいという考えがあります。行政は様々な計画に基づいて運営されていますが、計画を作る方々は中堅以上の行政マンの方々であり、お忙しい中若い世代の声を聴いて計画に反映させるのは難しいと思います。議員が率先して若い世代の声を聴き、計画に反映させていく責務があると思いました。

同じことを続けていても、飛びぬけた成果は出ないと思っています。ただ、僕ひとりの頭で考えるには限界があります。従来の考え方や枠からはみ出た柔軟なアイディアをヒントとしてお借りすることで、独自の政策を打ち出していきたいと考えています。

ーそうなのですね。SNSでバズらせるのは簡単ではないと思います。どのような点を工夫していますか?

TikTokは、最初の1秒が勝負と言われます。僕自身はこうした知見がないので、業者に依頼してプロの力も借りています。

発信する内容としては、県議会議員は知っているけれど、多くの人が知らない情報を提供するように心がけています。そこには情報の非対称性があり、価値があると思うからです。たとえば、政治家の1日の過ごし方や、夜に誰と会ってどんな話をしているのかなど。みなさんは希少な情報を求めているので、バズるという面でも、情報の透明性という面からも、この点を意識しています。

―実際にSNSを通じて、コミュニケーションも生まれていますか?

少しずつ生まれてきています。まだ、直接は会って意見交換をしたことはないのですが、DMで小学生や20代の方から質問をいただくことはあります。「岸田総理が増税しようとしていますけど、どう思いますか?」など、意外と硬派な質問が来ます。

今の若い人たちも政治に関心がないわけではなくて、実はみんないろいろ考えているのだと思います。発信する場や、伝える政治家が身近にいないだけなのではないでしょうか。

ーこうしたやり取りを、今後どのように政策に反映していくお考えですか?

今後、政策を作っていく時には、SNSで「こういう政策をやります!どう思いますか?」と投げかけようと思っています。20代前半以下にはTikTok、20代後半、30代前半にはInstagramというように、年代によって使い分けていきます。再生回数やコメント、DMで世の中の反応を見て、政策に活かしていきたいです。

ーSNSでの発信の取組みに対してどのような反応をもらいますか?

「議員の仕事がよく分かった」「議員を身近に感じることができた」などという好意的なフィードバックを全世代からいただいています。

ー最後に、これから政治家として目指していきたいことを教えてください。

日本を成長軌道にのせたいと思っています。

県議会議員ではありますが、いつも「日本がどういう方向に行くべきなのか?」という視点で物事を考えています。衰退していく日本を食い止めて、成長軌道にのせるために、県議会議員としてできることにひとつずつ取り組んでいく考えです。