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第6回日本ICT教育アワード受賞自治体の取り組み|教育の最前線

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社会全体でIT化が進むなか、従来のアナログ教育以上の効果を引き出す教育方法である「ICT教育」の充実は、地方自治体にとって重要な施策の一つです。ほかの自治体の成功事例を知ることで、自身の地域でも効果的な取り組みが可能になるでしょう。

この記事では、第6回日本ICT教育アワードで受賞した茨城県水戸市、宮城県岩沼市、埼玉県久喜市、愛知県春日井市、大阪府枚方市、愛媛県四国中央市の取り組みに焦点を当て、それぞれの内容を詳しく解説していきます。

ぜひ先進自治体の成功例を参考にし、お住まいの地域でICT教育の環境構築に取り組む際のヒントやアイデアにしていただければ幸いです。

日本ICT教育アワードとは?

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日本ICT教育アワードとは、GIGAスクール構想の推進や自治体独自の教育DXを目指した取組をたたえるものであり、先進的ICT教育で成果を出した自治体を表彰する式典です。

全国ICT 教育首長協議会によって2017年から始まったこのアワードは、ICT教育の取り組みを促進させると同時に、全国のほかの自治体にも示唆を与える役割を果たしています。

2023年の第6回日本ICT教育アワードには、過去最多の84自治体が応募しました。ICT教育の重要性がますます高まる中、日本ICT教育アワードは教育の未来に向けた模範となる取り組みを示す場となっています。

文部科学大臣賞

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茨城県水戸市

■教育課題の解決に資する教育データの利活用と教育ダッシュボードの構築

水戸市によるICT教育の取り組みは、児童生徒の学習活動や学校生活から得られるデータを一元化し、個々のニーズに合った指導や心の状態の把握に役立てるものです。児童生徒の学習面でのつまずきやいじめ、不登校への早期対応が効果的であることが評価され、第6回日本ICT教育アワードで文部科学大臣賞を受賞しました。

具体的には、児童生徒の学習成果物や授業の振り返りから得られるデータを集約・評価・分析し、個々のニーズに合わせた補充指導を実施しています。また、授業内容の理解度や心理状態を把握し、教員の授業改善や早期の悩みの発見につなげる取り組みも行っています。これにより、すぐに配慮が必要な生徒や気持ちを表現しにくい生徒を把握しやすくなりました。

教育データの利活用を推進し、経験や勘だけでない「データに基づくアプローチ」を通じて教育の質を向上させるという、再現性がある働きかけが評価の対象になりました。ほかの自治体にも応用可能であり、児童生徒の実情を正確に捉え、より良い指導につなげられることが期待されています。

総務大臣賞

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宮城県岩沼市

■1人1台端末の活用と働き方改革の推進

岩沼市はICTを活用した教育実践に盛んに取り組み、学校をDX化することで校務の効率化や省力化を進めています。この取り組みが全国ICT教育首長協議会から認められ、第6回日本ICT教育アワードで総務大臣賞を受賞しました。

教員の日常業務DX化を掲げ、業務のルーティンをアップデートし、日々の業務を効率化した取り組みが評価されました。例えば、書類の完全電子化を実現し、手書きでの作業を廃止することで、子供たちに向き合う時間を増やしました。また、クラウド活用と独創的な教育DXを重視し、個別最適な学びや協働的な学びを推進。教員の働き方改革として、2学期制の導入や通信票の簡素化、宿題の見直しなどを行いました。

岩沼市は文部科学省指定のリーディングDXスクール事業や、生成AIパイロット校の実践を通して、児童生徒が自立した学び手となるように取り組んでいます。生徒に対しても一人一台端末を活用した学びを推進し、教育水準の向上に貢献しています。

経済産業大臣賞

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埼玉県久喜市

■誰一人取り残さない教育の実現へ NEXT GIGA を見据えた「久喜市版未来の教室」実現に向けて

久喜市は「久喜市版未来の教室」を打ち出し、教育の未来に向けた大胆な取り組みを行っています。そのコンセプトは、不登校生徒も含めた日常的なオンライン教育、データに基づく個別最適化された学び、地域・企業との連携したSTEAM化された学び、そして校務の効率化の4つの柱で構築されています。これに加え「学びのコーディネーター」としての教員育成を+1として位置付け、網羅的な支援体制を整えています。

例えばオンライン教育の実施に関しては、Googleの教育用アプリを活用したオンライン上の教室「久喜市共同オンライン分教室(略称「KDX」)」の設置や、個別の学習支援アプリの導入により、児童・生徒ごとに適切な学びを提供しています。不登校生徒への支援強化も含め、誰一人取り残さない教育を実現するための施策が展開されています。

また個別最適な学びの提供や、STEAM化された学びの推進においても、さまざまな学習支援アプリの導入やプログラミング教材の活用、地域や企業との連携による問題解決型学習の推進など、多角的なアプローチが取られています。

久喜市の取り組みは個々の生徒のニーズに応えるだけでなく、緊急時や将来の社会においても柔軟かつ適切に対応できる体制を整えるもの。この観点は地域社会全体の発展に貢献するものとして注目されています。

全国ICT教育首長協議会会長賞

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愛知県春日井市

■1人1台端末とクラウド環境の日常的な活用による主体的な学びの実現と校務・研修DXの推進

春日井市が全国ICT教育首長協議会会長賞を受賞した背景には、積極的なICT導入と教育改革への取り組みがあります。国がGIGAスクール構想を発表する20年も前から教育現場へのICT導入を進めるなど、教育現場の整備に注力してきました。不登校対策や部活動の地域移行といった課題にも先進的なアプローチで取り組んでいます。

受賞の決め手は、「教える授業」から「自ら学ぶ授業」への転換を取り入れたこと。春日井市の教育委員会は、1人1台の情報端末の導入やICTを活用した教育のデジタル化を推進しました。その結果、子どもたちのコミュニケーションが増加し、アウトプットの質と量が向上しました。

授業では、Google ClassroomやGoogleスプレッドシート、Google Chatなどを活用して、生徒が自主的に学びを進める環境が整えられました。教室内での情報共有が容易になり、今ではどの教科でも1人1アウトプットが当たり前になっているといいます。

この取り組みは全国的に高い評価を受けており、1,000人以上の視察を受け入れるなど多方面で注目を集めています。春日井市の教育改革が、全国の教育現場に新たな指針を提供している証と言えるでしょう。

大阪府枚方市

■企業・大学と共に「夢や可能性」の機会を創出!教育で盛り上げる枚方の未来!

枚方市では、「枚方版ICT教育モデル」を策定し、次世代の資質能力を伸ばす教育を模索しています。このモデルでは、チャレンジ、コミュニケーション、コラボレーション、クリエイティビティ、クリティカルシンキングの5つの要素を重視しています。行政職員と指導主事が連携し、ICTの活用から情報発信まで、多岐にわたる取り組みを行っています。

その一環として、ポータルサイト「GIGAスク! ひらかた」が開設され、各校のICT活用事例や操作ガイド、トラブル対応などが公開されています。市内の全小中学校の教員で構成された評議会では、ICTの活用事例を共有し、定期的な情報交換を行っています。

この取り組みは、枚方市の教育委員会によって推進されています。市内全校が参加するICTに関するワーキンググループの活動も評価され、市が一丸となってICT教育導入へ邁進していることが強みとして評価されました。

また、いつでもどこでもつながるLTEモデルのiPadを導入するなど、ハード面の拡充によってもICT教育の推進を支えています。枚方市はICTを活用した質の高い授業を実現し、子どもたちの夢や可能性を育む大きな原動力を生み出しています。

愛媛県四国中央市

■つながる・ひろがる、新しい学び 未来への挑戦!全教員が学びの本質を探究し続けるGIGAしこちゅ~PJ

四国中央市の取り組みである「GIGAしこちゅ~プロジェクト」は、地域教育におけるICT推進の先駆けとして注目されています。このプロジェクトは、市長部局や教育委員会、学校が協力して、教職員のICTスキル向上に革新的な取り組みを行っています。

その主要な取り組みの一つが「教職員研修プログラム」です。このプログラムでは、授業改善を目指した「StuDX Style」や、リーダー研修、授業デザイン研修など、幅広い研修が提供されています。これにより、教職員一人ひとりが自己成長し、ICTを積極的に活用した授業を実践できるようになりました。

また「チャレンジプログラム」も重要な柱の一つです。このプログラムでは、プログラミング大会への参加や事例共有などが行われ、教職員のモチベーションを高めるとともに、地域との連携を促進しています。

取り組みの成果は顕著で、同市から全国最多である117人もの「ロイロ認定ティーチャー」が輩出されました。また全国で初めて「ロイロ認定自治体」に認定されるなど、その功績が注目されています。

四国中央市は、これからも「GIGAしこちゅ~プロジェクト」を軸に、デジタル・シティズンシップ教育による「デジタル社会での自立」を推進していくほか、運営支援センターの体制強化などを通じて、より一層の発展を目指しています。

受賞事例を参考にICT教育の環境構築を

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この記事では、茨城県水戸市、宮城県岩沼市、埼玉県久喜市、愛知県春日井市、大阪府枚方市、愛媛県四国中央市の第6回日本ICT教育アワード受賞事例に焦点を当て、それぞれの取り組みを詳しく解説しました。

ICT教育は、未来ある子どもたちの情報活用能力を養い、IT社会やグローバル社会で活躍できるよう育成することを目標としています。自治体として適切な教育環境を整えるためにも、これらのモデルケースから学びを得て、教育の質向上を目指していきましょう。

【参考資料】
https://www.ictmayors.jp/award23.html
https://www.magokoro.ed.jp/
https://www.city.iwanuma.miyagi.jp/pickup/ICT_kyouikuaward.html
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/194501/08_kukisikyouikuiinnkai.pdf
https://leadingdxschool.mext.go.jp/feature/891/
https://www.city.hirakata.osaka.jp/cmsfiles/contents/0000047/47743/221118.pdf
https://www.city.shikokuchuo.ehime.jp/soshiki/63/29484.html